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エッセー集からデザイン書まで 2019年7月出版のファッション関連書籍

 2019年7月に出版されたファッション関連書籍の新刊情報を紹介する。7月出版のファッション関連書籍の中から、国内のファッション業界の現状を解説した書籍やファッションを含むさまざまな分野の先端事例を紹介したデザイン書など5冊を紹介する。それぞれの書籍ごとに関連するニュースやコラムを添えてあるので、紹介した書籍とあわせて読んでいただきたい。

「アパレルは死んだのか」
(たかぎこういち、総合法令出版)

 ファッション業界に危機感を訴える書籍は止まらない。東京モード学園ファッションビジネス学科で教鞭を執る著者が、アマゾン(AMAZON)、ZOZO、ユニクロ(UNIQLO)、ギャップ(GAP)などの事例とともに業界の現状を解説。古い商習慣にとらわれたままの国内企業を辛らつな筆致で批判しながらも、日本のモノ作りは世界に通用すると評価する。ほかにもトレンドワードでもあるサブスクリプションやキャッシュレスに言及するほか、業界を俯瞰した記述も多いため、近年出版されたアパレルビジネス書とあわせて読めばより理解が進むかもしれない。

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「おしゃれ嫌い 私たちがユニクロを選ぶ本当の理由」
(米澤泉、幻冬舎新書)

 “おしゃれ”に疲れた人々がたどり着いたのは「ユニクロ(UNIQLO)」だった。なぜ「ユニクロ」が選ばれるようになったのか?その消費者心理の変化を鋭い時代考察と雑誌分析などを通して読み解いていく。筆者は現代を豊かなライフスタイルを志向する「『くらし』の時代」だと言う。“ライフウエア”というコンセプトを掲げた「ユニクロ」はまさに時代の象徴といえるのだろう。今や日本に住んでいて「ユニクロ」を着たことがないという人は少ないかもしれない。「ユニクロ」を見れば現代の日本が見えてくるはず。

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「言葉の服 おしゃれと気づきの
哲学」
(堀畑裕之、トランスビュー)

 “日本の美意識が通底する新しい服の創造”をコンセプトとするブランド「マトフ(MATOHU)」。そのデザイナーの1人である堀畑裕之が日々の気づきからつづったエッセー集で、ひとつの言葉から、歴史の中の日本人から、伝統の工芸から、日本の美を丁寧に見出していく。詩的な文章からは言葉に対する、そして日本の美に対する敬意が感じられる。終章では、日本におけるファッション論の立役者である哲学者の鷲田清一との対談を掲載。哲学博士を志したこともある筆者と鷲田による哲学談義は、日常から思索することの楽しみを読者に気づかせてくれるはず。「日々を哲学することから始めたい。それは終わりのない始まりであり、日々たどり着けるゴールなのだから」(P.171)。

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「AFFECTUS vol.5」
(新井茂晃、AFFECTUS)

 デザイナーの新井茂晃がファッションの言語化を目指してオンライン上で連載している「AFFECTUS(アフェクトゥス)」の書籍版最新号。書き下ろしの1編をあわせて再編した全9編からなるファッションエッセー集で、2000年代の「コム デ ギャルソン(COMME DES GARGONS)」などについて独自の視点からエモーショナルにつづっていく。「モード」を「世界を前進させるための装置」(P.46)と論じた最終編など、ファッションへの考察は興味深い内容になっている。全49ページと文章量も多くはないので読み進めやすい。興味を持った人はぜひオンライン連載版も読んでみてほしい。

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「SPECULATIONS 人間中心主義のデザインをこえて」
(川崎和也 監修・編著、BNN新社)

 AI(人口知能)を活用したパターンメーキングシステム「アルゴリズミック・クチュール(ALGORITHMIC COUTURE)」を開発したシンフラックス(SYNFLUX)の川崎和也が代表編著者を務めたデザイン書。本書では複雑化する世界に現れた未知数の問題を9つのテーマに分け、それらに対応する「デザインリサーチ」の実例を紹介する。さまざまな視座から書かれた論考をあわせて、領域横断的な研究と実践が交錯する「デザインリサーチ」という分野への議論を開き、未来のデザインの可能性を探る。ファッション関連でいえば、アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)のDNAから再現した皮膚を用いたレザーアイテムコレクション“ピュア ヒューマン(PURE HUMAN)”など刺激的な事例がいくつか掲載されている。周辺領域の先端事例も数多く掲載されているため、次代のファッションの着想を得られるかもしれない。

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秋吉成紀(あきよしなるき):1994年生まれ。2018年1月から「WWDジャパン」でアルバイト中。