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「ジル・サンダー」19-20年秋冬は60年代のベトナムが着想源 ヒット中のバッグで新型登場

 ルーシー・メイヤー(Lucie Meier)とルーク・メイヤー(Luke Meier)夫妻が2017年にクリエイティブ・ディレクターに就き、かつての先進的なイメージを取り戻しつつある「ジル・サンダー(JIL SANDER)」。バッグで“タングル”などのヒット商品も生まれ、徐々にエンジンがかかってきた。 “ポスト・フィービー”市場の担い手として、上質で少しひねりの効いた大人の日常着を求める層からの期待も高い。19-20年秋冬はモダンなアプローチに磨きがかかり、リアリティーと挑戦性のバランスが取れたスタイルがそろった。

 着想源は1960年代のベトナム・サイゴン(現ホーチミン)。アオザイや足袋風シューズといった要素を取り入れつつ、直球のアジアンテイストではなくクリーンに落とし込んでいる。大きな変化はシルエットだ。これまで、縦に長いボックスシルエットを押してきたが、今季はウエストから腰の丸みを拾うようにカーブしたドレスやジャケットが充実。ジャケットは地厚なフェルトウールで仕立てることで、シルエットを強調する。ワークウエアのイメージが強いだけに、深く開いた胸元、足の根本まで入ったスリットといったディテールも新鮮だ。

 2人は素材オタクで、特にルークは18年秋の来日時のインタビューでも素材へのこだわりや日本製素材の奥深さについて語っていた。今季も「一体これはどうなっているの?」と興味を駆り立てる生地が盛りだくさん。アオザイ風ドレスに仕立てたフェザーのようなカットジャカードに、ちりめんタッチのワイドパンツ、羽二重の布団のようなパッファジャケットなど、非常にユニークだ。

 雑貨は、ヒットバッグ“タングル”の進化版といえる、レザーのシンプルな横長バッグが豊富にそろう。“タングル”はビッグサイズも登場した。聞けば、現在日本ではバッグの売り上げ比率が全体の約3割にまで高まっており、ブランド躍進の原動力になっているという。

 さえたクリエイションに、雑貨も含めたMD戦略。好条件がそろったが、あと気になる点といえば価格。百貨店に18-19年秋冬の同ブランドの売れ行きを取材した際、「興味を示す客は増えているが、価格が高い」という声があがった。「デザイナーズブランドのコートのエントリー価格といえる30万円前後の商品がない」と、ある百貨店のバイヤー。19-20年秋冬の価格設定は未定な部分も多いが、展示会で話を聞く限り、引き続き高めの線が濃いよう。“ポスト・フィービー”市場の有力プレイヤーとなれるかどうかは、そんなところも影響してきそうだ。

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