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「ディネ・アン・ブラン」に見るビジネスチャンス

 10月3日の土曜日夜に日本で初開催された「ディネ・アン・ブラン(DINER EN BLANC)」に参加した。仏語で“真っ白なディナー”の意味を持つこのイベントは1988年、パリでフランソワ・パスキエ(Francois Pasquier)創始者が友人と始めたのがきっかけで、現在では世界21カ国・60都市で開催される“世界一のシークレット・ディナー・パーティー”に育っている。

厳格に守られるドレスコード

 その魅力はいくつもある。まず、白というドレスコードをはじめ、最近のイベントではまれに見る厳格なルールを守りながら、クリエイティブに個性を発揮するかという点にある。洋服はもちろん、アクセサリーや靴、バッグ、テーブルや椅子、お皿に至るまで、白一色で統一しなければならない。しかも、服は単に白を着るだけでなく、ドレスアップが求められ、スタイリッシュな大人モード系やティアードドレス、中にはヘッドドレスまで盛ってエレガントなスタイルを競い合っていた。LEDライトや生花など、テーブルコーディネートに凝る人々も多く、次回の構想や、日常の生活をワンランクアップさせるヒントまで得られる。

会場は直前まで明かされないシークレット性

 会場を直前まで明かさない秘匿性も高揚感を生む要因の一つだ。今回の会場は外苑前の聖徳絵画館前だったが、パリではセーヌ河にかかる7つの橋をジャックしたり、エッフェル塔やルーブル美術館、ヴァンドーム広場、ヴェルサイユ宮殿、ノートルダム大聖堂前など、ニューヨークではブライアントパークやバッテリーパーク、シンガポールではセントーサ島など、歴史的な建物や世界のアイコン的な場所で、何千人もが真っ白な装いで工夫を凝らしたオシャレをし、屋外でディナーを楽しむ姿は壮観で、SNSウケは間違いない。日本に誘致した石原来美ディネ・アン・ブラン東京実行委員長は銀行員出身で、ヨガイベントなどを主催してきた人物。開催風景の動画に感動してパリの事務局に接触。年間600件近いライセンスのオファーがある中で日本開催権を獲得した。

 倍率の高さからくる特権意識もエッセンスの一つだ。1万人のウエイティング・リストの中から、今回参加できたのは800組・1600人。ちなみにニューヨークでのウエイティング・リストは3万人以上だ。海外の開催に刺激された人々に加え、前哨戦として昨秋東京湾で行った船上パーティーに柴咲コウや沢尻エリカら多くのセレブリティーやファッション業界人たちを集めてプロモーションをしたことも、認知度向上や参加意欲向上、そしてブランディングに大きく寄与したといえる。

参加者は飲食をはじめテーブルや椅子までも用意

 参加費用は登録料や手数料など込みで2人で1万2000円。その上、食べ物(前菜、メイン、デザートのフルコース)、飲み物(シャンパン、ワイン、日本酒、水のみ)、テーブルや椅子、プラスチック製や紙製でないカトラリーや皿などを自分で用意しなければならない。会場での販売は一切なく、「失敗できない」という緊張感は高い。事前申し込みでレンタルもできるが、テーブルセット(テーブルと椅子2脚)が1万円、カトラリーセット(ナイフ、フォーク、シャンパングラス、ワイングラス、皿、布ナフキン、テーブルクロス)が2000円、料理も「ノブ」「ヨネムラ」「マリオ」の1人6000円のコースと、なかなかの「大人の粋な遊び」といえる。

 手間・ひま・金のかかるイベントだが、ハードルが高いほど挑戦心や自尊心に火がつけられ、やり遂げた際の達成感や満足感は高くなる。非日常の感覚や、多くの人々と時間や価値を共有している感覚も心地良いものだった。隣席と会話が弾み、新しい友人ができたのも収穫だ。

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