植松琢磨によるレザーのハリネズミ
エルメスは10月4日から11日まで、京都で限定展“プティ アッシュ”を開催する。様々な分野で活躍する世界のアーティストやデザイナーと共働した、独創的で遊び心溢れるクリエーションが魅力。“発想の実験室”と呼ぶ多彩なコレクションの展示販売を行う。
4月から5月にかけて開催したエルメス銀座店に続き、今回は京都・東本願寺の庭園として知られる渉成園内の閬風亭(ろうふうてい)を会場に選んだ。ブティック以外での開催は初の試みで、京都高島屋が共催する。京都ならではの歴史的な建物と、ユーモア溢れるオブジェたちが不思議と調和する、モダンな空間を生み出した。会場のディレクションを手掛けたのは、グラフィックデザイナーの服部一成。方眼紙に着想した格子柄を手書きで描いたオリジナルの什器を用意した。それらの高さを低く設定したことで、外に広がる美しい庭園と作品を一緒に楽しめるアイデアも盛り込んでいる。
茶室に着想した“カバナ”
展示販売している作品は、今回の京都展に合わせて制作した作品を含む約300種類のバリエーションをそろえる。京都で200年以上の歴史を持つ扇子屋の坂田文助商店とコラボレーションした扇子は、親骨部分を革で包んだもの。建築家の板坂諭と共同制作した金継ぎ(割れた皿を修復する日本の伝統技術)や、植松琢磨によるカラフルなレザーを丁寧に合わせたハリネズミのオブジェなど、日本人アーティストの作品も多い。茶室に着想し、オーク材に栗の木の枝を貼り合わせて柄を描いた“カバナ”のように、独特の感性と職人の手仕事が光る作品にも注目だ。同展に合わせ、“プティ アッシュ”アーティスティック・ディレクターのパスカル・ミュサールが来日した。
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パスカル・ミュサール=“プティ アッシュ”アーティスティック・ディレクター
パスカル・ミュサール=“プティ アッシュ”アーティスティック・ディレクターは、「京都のような伝統と歴史がある街で開催することは、私たちにとって大変勇気のいることでした。でも、この地で行うことによって多くの刺激を受け、さらなる高みを目指せると思ったのです」と語る。
“プティ アッシュ”は、エルメス家第6世代のパスカルによって2010年に誕生したコレクションだ。パリ郊外に構えるアトリエには、エルメス社の全部門を横断して職人と素材が集まっている。高度な技術を持つ職人と、異なる分野で活躍する作家やデザイナーとを結び付け、自由な発想で素材やデザインの新しい可能性を探る取り組みを行う。パリのセーヴル店では常設展示を行っている。「エルメスは常に最高級の素材を追求しています。しかしこの先、それらの素材はどんどん手に入れづらくなってゆくでしょう。エルメスには革やシルク、ジュエリー、フレグランスなど、色々なアイテムがあります。そこで、アイデアを結集し想像力を駆使しながら、既存の考え方にとらわれない素材の新たな活かし方やモノ作りができないかと考えました」。
「エルメス」のスカーフをアレンジしたコレクション
パスカルは、工芸品や職人の手仕事、伝統への敬意をキーワードに掲げた。「過去に敬意を払いながら制作しています。前の世代が残してくれた大切な価値観を、次世代に伝えることも私たちの使命。モノ作りにおいて一番大切なのは、憧れや夢。新しい感性を加えることによって私たちが夢を見ると同時に、多くの人に憧れや夢を抱いてもらえるものを生み出したいです」。だからこそ、伝統と歴史が詰まった京都での開催は「勇気のいること」だったという。そんなパスカル自身も、大の京都好きを自負する。「京都は伝統工芸やお寺はもちろん、街の風景のディテール一つを見ても美しい。私にとっては誘惑がたくさん潜む街です(笑)。今回の会場となった渉成園は、自由を感じさせてくれる空間。今、世の中は混とんとしています。大変な時代の中だからこそ、このような静寂の場は自分自身を見出すために必要です。私たちにとっての究極のラグジュアリーがここにはあるのです」と語った。