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メモすら忘れた、感動の「ディオール」初の女性デザイナーがクチュールお披露目

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 「ディオール(DIOR)」の真髄はオートクチュールです。それが、1947年に誕生して今年70周年を迎えるこのメゾンの原点だからです。そして、マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)は「ディオール」史上、初の女性デザイナーです。

 昨日は初の女性デザイナーによる「ディオール」オートクチュールのお披露目のショーとパーティーが、ロダン美術館で開かれたわけですが、これはもう一言で言えばVIVA!ヴィヴァ!!ヴィヴァ!!!素晴らしかったです。ショーが始まり1体目が登場した時、胸がドクンとなって、お腹の下の方に何かがズシンと響きました。それからショーが終わるまで、胸とお腹がドクン&ズシンと交互に響き続け、本当のことを言うとメモはほとんどとれませんでした。素晴らしいショーの時はいつもですが。

 マリア・グラツィア。あなたは歴史ある「ディオール」の扉をひとつ開くと同時に、これからの仕事を通じて私たちが今忘れそうになっているファッションにおける大切な何かを呼び覚まし、心の拘束を解いてくれそうです。

 ロダン美術館の中庭に建てられたテントは緑で覆われ、扉までは緑の迷路を抜けて歩きました。シークレットガーデンという呼び方がぴったりの会場内も緑で覆われ、足元からは湿っぽい土と緑の匂いが立ち上がり、中央の大きな木にはジュエリーとガラクタがごちゃまぜになって飾られています。それは、女性が胸の奥に秘める少女性の象徴のように見えました。少女ってキラキラしたきれいなものが好きで、可愛くて、時に怖い存在です。誰でも少女の頃、言葉に出せない残酷な妄想をしたことがあるのではないでしょうか?(私はあります)。

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 何と言っても印象的だったのが、ファーストルックです。メゾンを象徴する“バージャケット”に黒い頭巾を合わせて頭をすっぽり覆いました。フードというより頭巾。『赤ずきん』ちゃんの頭巾のブラック版です。「“バー”ジャケットをこう料理してきましたか!」と、観客の多くは思ったハズです。

 これは、まぎれもなく“バー”ジャケット。バーの高いスツールに腰掛けた時、360度どこから見ても女性の体が美しく見えるようにとムッシュ・ディオールが第2次世界大戦直後に“発明”したジャケットの形を引き継ぎ、崩すことなく、アップデートすることに成功しています。現代のファッションアイテムの象徴であるフードを上手に使い、カジュアル時代の「ディオール」を作り上げました。

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 そして、そのミステリアスな世界観をさらに深めたのが同日夜遅くから開かれたパーティーでした。ドレスコードは、ブラックタイにマスクとフォーマル。こう聞くとなんだか気後れしますよね。私も到着するまではそんな気持ちでした。だけど、会場に到着し、ユニコーンに扮した大きな馬たちに迎えられ、満月(フェイクです)に照らされた建物を見た瞬間、ファンタジーの世界にダイブして、気後れなど飛びました。

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 マスクの効力はすごい。時差ボケによる目の下のクマも黒いレースのマスクが隠してくれるから気が大きくなり、足元の土の柔らかさに癒され、“ラッキーチャーム”という名前のカクテルに心が軽やかに解放されてゆくのがわかります。多分多くのセレブリティーが来ていたハズですが、マスクをしているからわかりません(笑)。彼らも同じように楽しんでいたのではないでしょうか?

 解放。これはマリア・グラツィアによる「ディオール」を語る時の重要なキーワードになると思います。現代女性が胸の内とお腹の奥底に秘した願望や自己規制、他人からの目線、固定観念からの解放です。

 ファッションにファンタジーは不要な時代?ファッションはオワコン?マリア・グラツィアに尋ねたら、きっと一笑して優しく否定するでしょう。

 マリア・グラツィアによる「ディオール」は、昨年の10月のプレタポルテでのデビューショーの時もVIVA!と思い、そう書いたつもりですが、同僚から“書き方が小難しいからイマイチ伝わってこなかった”と指摘を受けたので、今回はなるべく感情が伝わるように書きました。伝わると幸いです。