米化粧品大手のエスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES以下、ELC)と、スペインのビューティ&ファッション大手プーチ(PUIG)は事業統合に向けて協議を行っていたが、両社は21日(現地時間)、協議を打ち切ったと発表した。プーチ傘下のブランド「シャーロット ティルブリー(CHARLOTTE TILBURY)」の存在が大きな障害になったようだ。また既報の通り3月に合併協議に関する情報が漏洩したことが交渉をさらに難しいものにしていたようだ。
エスティ ローダーとプーチが合併協議 香水とスキンケアで補完関係
情報筋によると、「シャーロット ティルブリー」を創業したメイクアップアーティストのシャーロット・ティルブリーは、世界有数の国際的な金融財閥ロスチャイルド(Rothschild)をアドバイザーに迎えてプーチと再契約に関する交渉を開始。ティルブリーはプーチとの契約をより有利に進めるべく、自身が創業した会社を退任する可能性もチラつかせているようだ。プーチは2020年、「シャーロット ティルブリー」を売上高の5倍に相当する推定12億ポンド(約2550億円)で買収。プーチは株式の78.5%を保有し、ティルブリーが残りの21.5%を保有している。またプーチは「シャーロット ティルブリー」の業績に連動したオプションに基づき、31年までに全株式を取得する権利を有している。
報道によると、ティルブリーが残りの株式を売却する場合、プーチは「エスティ ローダーが負担できない数億ユーロを支払わなければならない」(スペインの新聞)。この金額が交渉決裂の要因になったようだ。
エスティ ローダーとプーチは、
「話し合いに感謝している」と声明
エスティ ローダー カンパニーズのステファン・ド・ラ・ファヴリー(Stephane de La Faverie)社長兼最高経営責任者(CEO)は21日、「プーチとの話し合いに感謝している」と交渉が終了したことを認めた。そして「エスティ ローダーは、卓越したブランド力と優秀なチーム、そして独立企業としての強固な基盤に自信を持っている。新しい経営戦略ビューティー・リイマジンドを通じて、長期的に大きな価値を創造できるという確信はかつてないほど高まっている。世界でも有数の強力なプレステージ・ビューティ・ブランドのポートフォリオを有しており、カテゴリーや地域、顧客層を問わず、卓越したブランド価値に支えられている」とのコメントを発表した。関係者によると、エスティ ローダーが買収交渉から撤退したもう一つの要因は、財務状況の改善という。2026年度第3四半期の売上高は前年同期比で2%増加し、フレグランス部門は同10%増。同社は業績見通しを早期に発表し、さらなる成長を見込んでいる。
交渉決裂の確認を受け、エスティ ローダーの株価は時間外取引で10%以上急騰し、終値は前日比0.9%高の78.91ドル(約1万2400円)となった。一方、プーチの株価は同0.23%安の17.64ユーロ(約3200円)で取引を終えた。
プーチのホセ・マヌエル・アルベサ(Jose Manuel Albesa)CEOは声明の中で、「エスティ ローダーとの有意義な協議に感謝する。プーチには成長の実績があり、プレミアムビューティー市場において優れた業績を上げてきた。今後も戦略の実行、収益性の高い成長とステークホルダーの利益に優先的に注力する。今回の決定は、当社の戦略を変更するものではない」との声明を発表した。だが関係筋によると、今回の交渉決裂により、プーチが新たなパートナーを見つけることは難しくなった。
ELCはスキンケアとメイクアップを主軸とし、「エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)」「クリニーク(CLINIQUE)」「オーディナリー(THE ORDINARY)」「ボビイ ブラウン(BOBBI BROWN)」「トム フォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)」などを擁する。2025年6月期の売上高は前期比8.2%減の143億ドル(約2兆2594億円)だった。
一方、プーチはフレグランスに強みを持ち、「ラバンヌ(RABANNE)」「キャロリーナ ヘレラ(CAROLINA HERRERA)」「ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)」「ニナ リッチ(NINA RICCI)」「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」「シャーロット ティルブリー」に加え、「バイレード(BYREDO)」「ペンハリガン(PENHALIGON'S)」「ラルチザン パフューマー(L'ARTISAN PARFUMEUR)」などのニッチフレグランスや、ダーマコスメを展開する。25年12月期の売上高は、同5.2%増の50億ユーロ(約9150億円)だった。