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出品料収益1年で1.8倍に ⼤丸東京店「明⽇⾒世」⾒えてきた成功パターン

出品料収益1年で1.8倍に ⼤丸東京店「明⽇⾒世」⾒えてきた成功パターン

2020年前後、小売業界をにわかに賑わせたショールーミングストア。モノを売るのではなく「展示」し、店舗在庫を持たず主にECで販売するという運営スタイルが注目を集めたが、その多くが姿を消しつつある。そんな中、確かな存在価値を発揮し続けているのが大丸東京店の「明日見世(あすみせ)」だ。21年にスタートした同売り場の累計出品ブランドは340超に達した。24年9月に4階から9階へ移設・増床すると出品料収益は移設前から2.5倍となり、現在はそこからさらに1.8倍に伸長している。

ECやSNSの発達によりブランドのスモールスタートがしやすくなった昨今だが、一方でリアルの接点や人的リソースの不足がビジネススケールのボトルネックとなっているブランドも多い。明日見世はそういったブランドに対して、設営・展示から集客、店頭接客、フィードバックレポートまで一貫して提供。百貨店ならではの強みを生かした伴走型のサービス設計が、出品ブランドの確かなメリット実感につながり、新規に加え、再出品の依頼も絶えず舞い込んでいる。

展示、接客、館内誘客もかなう
百貨店アセットを活⽤するプランが⼈気

「明日見世」はファッションやビューティ、雑貨などジャンルレスにブランドを編集・展示し、店頭に立つ大丸松坂屋のスタッフである「アンバサダー」が魅力をプレゼンする。ブランドの負担は基本的に出品料のみで、常設展開やポップアップストアよりも低コストで出品できる。資金や人材に限りがある小規模なブランドにとって、百貨店に出品できる貴重な選択肢となってきた。

移転後は面積を4倍に広げる一方、展開ブランド数はほぼ据え置きとすることで動線にゆとりを持たせ、ブランドブースに十分なスペースを確保した。現在はほとんどの商品が店頭購入も可能となり、体験とユーザビリティーの両面を強化した。

ブランドのステージやニーズに応じ、複数の出品プランを用意している。商品の展示・運営、接客、フィードバックレポートまでをパッケージした「スタンダード」、展示区画2倍で大型商材にも適した「スタンダードプラス」が基本プラン。加えて昨秋には新プランを3つスタートさせたが、中でもニーズが高いのが「ブランディング」プランだ。スタンダードプランのサービスに加え、百貨店館内での特別ブース展開やレシートクーポンによる明日見世への誘客を行う。「館内のさまざまな場所でタッチポイントを作ることができる。百貨店をいわばリテールメディアのように使えるという点が魅力として伝わっています」と和田房恵・明日見世プロジェクトマネージャー。

「イオンドクター」は25周年のPR起点に
「私たちと同じ熱量で伝えてくれた」

11種類の天然鉱物パウダーを中わたに特殊加工した、締めつけないウオーマーシリーズを展開するジェイ・エスの「イオンドクター(IONDOCTOR)」は、まずスタンダードプランで明日見世の価値を実感し、2回目の出品でブランディングプランにアップグレードしたモデルケースだ。

「私たちには創業当時から広告を出さないというポリシーがあり、口コミで広げてきました。お客さまが実際に使って、使い心地のよさを『体感』して頂けることを何より重視しています。そのためには信頼できる小売チャネルが必要だと感じていました」と藤村香菜ブランドマネージャー。「とはいえ少人数体制なので、常設出店は人的リソースの面で難しかったというのが実情でした。これまでに実施した自社運営のポップアップでは、来客への対応に人手が追いつかない場面もありました。その点、明日見世は比較的コストを抑えてテストマーケティング的に活用できるし、百貨店クオリティーの手厚い接客までサポート頂ける点に魅力を感じ、出品を決めました」。

「明日見世」への出品を通じてもっとも価値を感じたのは、「やはりアンバサダーの存在だった」という。「私たちと変わらぬ愛と熱量でお客さまに商品を勧めていただけたという実感があります」。出品期間前にはアンバサダーへの勉強会も実施した。「アンバサダーの皆さんが自ら商品を使い、自分の体験をもとにお客さまに商品の良さを伝えてくれた。だからこその説得力があったはずです」。

2回目のブランディングプランでの出品は、創業25周年の限定商品にフォーカスし、外でも使えるスポーツ向けラインなど展示アイテムの幅を拡大。VMDも作り込んだ。スポーツ向け商品は人工芝を棚に敷いて演出し、コットン商品には室内イメージのパネルを添えるなど、「私たちではできないクオリティーのブースを実現いただけた」と話す。25周年限定の足首ウオーマーとレッグウオーマーは早期に完売し、シルク素材のみの限定カラー「ショコラ」も欠品が続いた。

2回の出品を通じたフィードバックレポートは、今後の価格設定やサイズ感の見直し、商品企画に生かしていく。「私たちの商品とお客さまの”出会いの場”として明日見世は理想的。ブランドの着実な成長を後押ししてくれる。機会があれば明日見世とのコラボ限定商品も作れたら」(藤村氏)と前向きだ。

リピーター獲得に手応え
三省製薬の好例が呼び水に

「明日見世」プロジェクトマネージャーの和田房恵氏は、「明日見世」の強みを次のように言語化する。「大丸松坂屋がもともと持っている、百貨店らしい人の力をとことん生かすこと。私たちが組みたいのは、一見しただけでは魅力が伝わりづらいかもしれないけれど、確固たる背景や深いストーリー性があるブランド。アンバサダーが魅力をときほぐしてじっくり説明することで、確実にブランドの魅力が伝わる」。

スキンケアブランド「イロイク(IROIKU)」「デルメッド(DERMED)」を展開する三省製薬も、明日見世に出品するメリットを実感し、24年9月の移設当初から継続出品している。1960年創業の同社は、コウジ酸を日本で初めて開発した美容成分メーカーとしての顔を持ち、世界のデパートコスメブランドへの成分卸を手がける。そのノウハウを注ぎ込んだ「デルメッド」は、シミやシワなど大人の肌悩みにトータルで応える本格エイジングケアブランド。「イロイク」は2022年に誕生し、スキンケア効果とトーンアップ効果を一本に凝縮した「色づき美容液」を主力に、性別・年齢を問わず使えるジェンダーフリーなコスメとして展開している。

「三省製薬さんはマーケティング・プロモーションを実施するうえで リアル店舗、なかでも関東のお客様のタッチポイントを探しており、会社、ブランドの認知を広げていきたいとの考えをもっていました。すばらしい開発⼒、歴史、商品をお持ちですが、そこにアンバサダーの接客⼒という仕組みで応えられるのが私たちの強み」と和田氏。同社の出品事例が呼び水となり、他のアップカミングなビューティーブランドとの取引につながる好循環も生まれつつある。

5年目を迎え次なる進化へ
実践的なフィードバックを強化

今後は、ブランドが出品するメリットをさらに高めるべく、場と人員の提供にとどまらず、ブランディングやマーケティング戦略のコンサルティングまでできる売り場へと役割を深めていく。アンバサダーの接客回数とフィードバック取得数は移設直後から1.3〜1.7倍に伸長しており、接客からフィードバック取得に至るコンバージョンレートは約8割に達する。「個々の接客で得た情報を属人化せず、チームとして共有・資産化することで、より質の高い提案ができるようになってきている」と手応えを話す。

「ECと店頭の両方のデータを掛け合わせて、今後の戦略を一緒に考えられる。そんなブランドの“伴走者”でありたいと思っています」。今秋にはフィードバックレポートの大幅なバージョンアップも予定している。「売り場の中身の濃いデータを、出品者がより実践的な形で活用できるよう、質・量・頻度・スピードを意識して改善していく」。

5年目という節目を迎え、着実に進化を続ける「明日見世」だが、将来像をどのように描くのか。「大丸東京店で業態としての価値をブラッシュアップしながら、ブランドを育てる“土壌”を作ることができたらと思っています」。

PHOTO:AI OKUBO
問い合わせ先
大丸東京店「明日見世」
050-1782-8547