スキンケアやサプリメント、バスソルト、フェムケアに至るまで、さまざまな製品にキー成分として配合されるCBD。2019年頃から注目を集め、コロナ禍で「癒やし」や「ウェルビーイング」へのニーズの高まりとともに、CBDを取り入れたセルフケア・ビューティ製品がメディアでも頻繁に取り上げられ、ブームが加速。セレクトショップや一部百貨店でもCBDブランドが取り扱われるようになった。しかし、24年12月12日に改正大麻取締法が施工され、CBD製品に含まれる化合物THC(テトラヒドロカンナビノール)の残留値に関する新たな基準値が定められた。CBD製品を扱っていたのはインディペンデントブランドが多かったこともあり、改正に伴い約8割のメーカーがCBD市場から撤退したともいわれている。
そんな中、スピック(SPIC)のサプリメントブランド「リポ・カプセル」は6月に、リポソーム型CBDサプリメント“Lypo-C CBD”(27包入、8964円)を医療機関向けに先行発売。ほかにも、エリクシノール(ELIXINOL)、「ラウン(ROUN)」「ポーインク(POWINK)」「オーガニックサイエンス(ORGANIC SCIENCE)」などもCBD製品の販売を継続する。今、信頼に足るCBDとは何か?主要メーカーにスター製品やチェック体制、今後の展望について、専門家にはCBDのこれからについて聞いた。
「リポ・カプセル」
冨田人嗣「リポ・カプセル」ブランドマネージャーは、「日本の法令に基づき、違法成分THCなどが基準値以下を示すデータの取得を徹底している。検査証明書は公開しており、顧客は詳細を確認できる。“Lypo-C CBD”の開発においては、リトアニアで高品質の産業用ヘンプを有機栽培するバイオシード(BIOSYYD.)の原料を採用した。現地を視察した際に設備や技術の確かさが確認できたことに加えて、トレーサビリティーの確立や医療用製品の取り扱いもある点などが理由だ。昨年の法改正で明確な基準ができたことでメーカーが参入しやすくなり、ドリンクやゼリーなど、より日常に取り入れやすいCBD製品が増え、市場の健全化が進むと期待している。また市場規模に比例し、製品の安全性や信頼性はこれまで以上に重視されるようになるだろう。業界団体の全国大麻商工業協議会(NHIC)でも、自主的なガイドラインを制定した。CBDが“怪しいもの”ではなく、“安心して使えるウェルネスツール”として受け入れられるよう、業界全体で健全なイメージの確立を目指す動きが活発になっている」と明らかにする。
エリクシノール
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CBDオイル製品にフォーカスした米国発エリクシノール(ELIXINOL)の那奈なつみ・プレスは、「インナーケアでは、“エリクシノール CBDカプセル 1200”(23.1g、9504円)が最も売れている。CBD原料の調達については、日本法人を創業した16年当初から培ってきた品質基準やネットワークから、信頼できるサプライヤーを選定。厳格な基準を持つ機関と提携し、客観的で信頼性の高いデータを取得している。さらに、自社でも分析結果を取得するフローを設けている。近年では経営者やクリエイターなど、セルフマネジメント意識が高い層からの支持も厚く、日々のコンディションを整えるためのルーティンアイテムとして愛用されている。今後はストレスケアや睡眠サポート、スポーツ後のリカバリーなど、目的に応じたCBD製品のラインアップが強化されると考えている」と話す。
「ラウン」
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ウェルネスCBDブランド「ラウン」を展開する鶴田大貴リープ代表取締役は、「“CBDスポーツバーム”(15g、2980円/70g、5980円)は特にトレイルランニングや、サーフィン、スノースポーツなどアウトドアスポーツをする顧客の支持を得ている。信頼できる原料メーカーと契約し、原料の輸入前後・製品製造後の最低3段階で検査を実施し、基準値を満たしているかを確認している。参入企業が徐々に増え始めているが、今後もこの傾向は続くだろう。それに伴い、成分に関するエビデンスの蓄積も進み、CBDへの理解や認知が広がっていくはずだ」と語る。
「ポーインク」
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スキンケアブランド「ポーインク」を展開する畠山浩行ポーラボ代表は、「昨年11月に発売した2層式美容液“ダブルチャージ”(28mL、5500円)は、潤いに満ちた弾力肌がかなうと人気だ。原料は、ヨーロッパの厳格な審査機関『ECOGEA』認定のオーガニックヘンプを採用。栽培から製造までを一括生産体制で行う供給会社から仕入れている。分析証明書は、第三者機関2社を選定し行っている。規制の明確化により、“安心して使えるCBD”だけが市場に残る健全なステージへ移行していくと考えている」と予想する。
オーガニックサイエンス
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鎌田貴俊オーガニックサイエンス代表取締役は、「“MG CREAM+CBD”(60g、7810円)は、リポソーム化マグネシウムとCBDを配合したスキンケアクリーム。顔を含む全身に使用できる。臨床CBDオイル研究会代表である飯塚浩先生の協力を得て開発した。天然麻からCBDのみを抽出するアイソレート原料を使用しており、分析証明書(COA: Certificate of Analysis)を毎ロット取得することで、安全基準の明確化・透明化を厳守している」とコメント。
臨床CBDオイル研究会
PROFILE: 飯塚浩/臨床CBDオイル研究会 代表、メディカルストレスケア飯塚クリニック 院長、 日本オーソモレキュラー医学会 理事、精神科専門医、医学博士

昨年の法改正に伴い、医療機関でのカンナビノイドに関する相談や導入が可能になった。現在、日本でカンナビノイド医療を提供する医療機関は200件以上に広がっている。CBDはせん妄や認知症、更年期障害にも効果があるとされる。飯塚浩医師・臨床CBDオイル研究会代表が医療現場での活用状況を語った。
ーーCBDは医療現場でも使われる。
飯塚浩医師・臨床CBDオイル研究会代表(以下、飯塚):CBDの使用を相談できる医療機関は全都道府県にある。医療現場では、CBDを含むカンナビノイド製剤が認知症高齢者のせん妄や易怒、片頭痛などのさまざまなケースに用いられている。
ーーマインドケアにも効果的だ。
飯塚:CBDは“体の神経や免疫が暴走しそうな時に、ブレーキをかける調整役”として働く。本来であれば神経伝達物質が過剰に分泌された場合、受け手の細胞から内因性カンナビノイドが放出され、それが放出側の抑制スイッチであるカンナビノイド受容体に結合する。しかし、この調節能力はストレスや老化によって低下する。CBDは内因性カンナビノイドの働きを向上させ、調節能力を復活させる。セロトニン受容体などには直接結合し、不安を和らげたり、睡眠の質を高めたりする効果もある。
ーーCBDは化粧品としても効果を発揮する。
飯塚:CBDは、外用でも十分に臨床的な効果が期待できる。皮膚表面に「CB1/CB2」といったカンナビノイド受容体をはじめ「TRPチャネル」(温度や化学刺激を検出するセンサー)といった多彩なターゲットが存在し、CBDはこれらに働きかける。これによって皮膚のバリア機能の強化や炎症の抑制、皮脂分泌の調整、創傷治癒の促進、かゆみの軽減など、局所的な皮膚症状に対して幅広く効果を発揮する。複数の受容体を同時に調整できる点が、CBDの特異性であり大きな臨床的魅力だ。
ーー今後のCBD市場はどう捉えているのか?
飯塚:“どうなるか”ではなく、“どうしていくべきか”が重要だと考えている。CBDは、神経系や免疫系といった人間の根幹に関わるシステムのバランスを整える、非常にユニークな調整ツールだ。カンナビノイド受容体、TRPチャネル、セロトニン、GABAなど多彩な受容体に作用し、神経や免疫の過活動を整える方向に働きかける。正しい理解と評価が広がれば、ストレスや加齢で機能低下が起きやすい現代社会において、CBDは今後ますます重要な位置を占めるはずだ。