ヘラルボニーは、アート展「ヘラルボニー・アート・プライズ 2025プレゼンティッド バイ 東京建物 ブリリア(HERALBONY Art Prize 2025 Presented by 東京建物|Brillia)」を東京・大手町の三井住友銀行東館1階アース・ガーデンで6月14日まで開催中だ。
「作家のキャリアを応援できるアワードにしたい」
「ヘラルボニー・アート・プライズ」は世界中の障害がある表現者を対象に、その才能を評価してさらなる活躍の機会を生み出すことを目的として24年に始まった。本展では25年度のグランプリおよび各賞受賞作家と最終審査進出作家、総勢61人による全65作品を展示している。
5月29日に開催した先行内覧会で、ヘラルボニーの松田崇弥代表は本アワードについて「受賞作家に光を当てるだけでなく、“出口のあるアワード“を意識している」と説明した。初開催となった昨年の受賞作品は国内外で展示したほか、各スポンサー企業とのコラボレーションやヘラルボニーとの作家契約によって商品化。松田代表はトヨタとのアートラリーカーやJALとの機内コップ製作の事例を挙げながら、「作家のキャリアや生き方まで応援できるアワードでありたい」と意気込む。
今年のアワードには、昨年の倍近くとなる65の国と地域から総勢1320人のアーティストが参加した。応募総数2650点のアート作品の中からグランプリを受賞したのは、フランス在住作家のエヴリン・ポスティック氏の作品「La Reine Charlotte(シャーロット王妃)」。古地図上にインクで描かれたさまざまな生物やモチーフと複雑なラインが交差することで、モアレ模様のような視覚効果を生みだしており、独創的な表現の美しさと完成度の高さが評価された。
「現代アートの転換期である今こそ観に行くべき」
先行内覧会では、3人の審査員がクロストークを行った。金沢21世紀美術館チーフ・キュレーターでありヘラルボニーCAO(Chief Art Officer)でもある黒澤浩美氏、欧州の芸術賞ユーワード(EUWARD)アーカイブおよびアトリエ・アウグスティヌム(アウグスティヌム財団)ディレクター兼キュレーターのクラウス・メッヘライン氏、米サンフランシスコを拠点に障害のあるアーティストにスポットを当てる非営利団体「Creativity Explored」のアート・パートナシップ担当ディレクターを務めるハリエット・サーモン氏が登壇した。
2650作品という膨大な数の中から審査する苦労を明かすとともに、グランプリ作品について「地図に描いているアプローチからフィニッシュにいたるまで、フランス文化のエスプリを感じた」と黒澤氏は評価した。クラウス氏は「自然と人の相互作用を描きながら、現代の地球環境への気づきにつながる。時代性にも合っており、それらをあくまでアーティスティックに表現している」と語り、ハリエット氏は「線の描き込み方が絶妙。表現力にあふれている」と技術力を評価した。
本展の見どころについては「今、現代アートは転換期を迎えている。“現代アートとは、そもそも何なのか?“と見つめ直す分岐点に立っているこのタイミングでの開催は素晴らしいこと。現代アートは、観客が自由に作品を観られる環境で議論を深めることが重要」とハリエット氏。
黒澤氏は「現代アートの価値が今、あまりにもコンセプトや説明に頼りがち。分かりやすさへの偏りから、もう少し人間的な感覚を表現する作家に目を向けようという揺り戻しが起きている」と現代美術の転換期について補足したうえで、「こうした表現力豊かな作家や作品が、これからの新しい道を羅針盤として示す可能性は十分にありえること」と述べた。クラウス氏は同意しながらも「(本アワードは)アートと社会を切り離さず、展覧会や商品化を通じて日常に溶け込ませている取り組みがすごい。アートと一緒に生きていくあり方を提案していることに意義を感じる」と語った。
イベント概要
■「HERALBONY Art Prize 2025 Exhibition Presented by 東京建物|Brillia」
会期 : 2025 年 5 月 31〜 6 月 14 日
会場 : 三井住友銀行東館 1F アース・ガーデン
営業時間:10~18時
料金 : 入場無料