ビューティ

「シャネル」のアンバサダー起用や広告キャンペーンの責任者が語る、新作“チャンス”の裏側

シャネル(CHANEL)」は、4月15日に発売した新作フレグランス“チャンス オー スプランディド オードゥ パルファム”(50mL、1万7600円/100mL、2万4200円)の広告キャンペーンのアンバサダーにベルギー出身のシンガーソングライター、アンジェル(ANGELE)を起用した。キャンペーンビジュアルやフィルムの製作の指揮を執るトマ・デュ・プレ・ドゥ・サン・モー(Thomas du Pre de Saint Maur)=フレグランス&ビューティ グローバル クリエイティブ リソース ディレクターが発売に際して来日。「シャネル」における役割や、アンジェルを起用した理由について聞いた。

才能を発掘し、クリエイションを実現

PROFILE: トマ・デュ・プレ・ドゥ・サン・モー/「シャネル」フレグランス&ビューティ グローバル クリエイティブ リソース ディレクター

トマ・デュ・プレ・ドゥ・サン・モー/「シャネル」フレグランス&ビューティ グローバル クリエイティブ リソース ディレクター
PROFILE: フランスのエセック経済商科大学院大学(ESSEC)卒業後、名だたるフレグランスメゾンやファッションブランドで研鑽を積む。2008年にフレグランス&ビューティのマーケティング ディレクターとしてシャネルに入社。14年から現職 PHOTO : SHUHEI SHINE
WWD:フレグランス&ビューティ グローバル クリエイティブ リソース ディレクターの役割と主な業務は?

トマ・デュ・プレ・ドゥ・サン・モー=フレグランス&ビューティ グローバル クリエイティブ リソース ディレクター(以下、デュ・プレ・ドゥ・サン・モー):クリエイションが私の使命だ。「シャネル」でクリエイションをするということは、フェミニティーやラグジュアリー、美、達成などに対するビジョンを持ち、それを体験や表現に落とし込むこと。製品のデザインや広告、イベント、店舗、本、キャンペーンなど形は多岐にわたる。「ストーリーを語る」とは今や各社が言っているが、私は「想像上の世界を作り上げる」と捉え、あらゆる側面で体験に落とし込んでいる。協業する才能を発掘することも私の役割だ。

WWD:なぜ「シャネル」は、クリエイティブ・ディレクターなどではなく、グローバル クリエイティブ リソース ディレクターと呼称するのか?この肩書きを設けることで、目指すものは?

デュ・プレ・ドゥ・サン・モー:私自身、この肩書きについてよく考える。「シャネル」ではあらゆるリソースにあたれる可能性があることを表現しているのだと思う。私はオーケストラの指揮者のような存在だ。あらゆる可能性を追求し、あらゆる形のクリエイションを実現することを任されている。クリエイションのリソースは非常に多様だ。それを「シャネル」でどのように生かすかを見極めるには、まずブランドについて正確に知り、どういう存在なのか、何を語るべきなのかを把握することが重要となる。

WWD:アンバサダーの人選で一番意識することは?

デュ・プレ・ドゥ・サン・モー:まずは、その人やその人の仕事が好きで、その人と一緒に働きたいというシンプルな欲求がある。一方で、「シャネル」が語りたいことにマッチするかどうかを熟慮することも重要だ。あえて“ブランド”ではなく“メゾン”と呼ぶが、長い期間にわたり存続しているため、その歴史や物語の一部にふさわしいかも意識する。例えば“シャネル N゜5”といったときに、マリリン・モンロー(Marilyn Monroe)やキャロル・ブーケ(Carole Bouquet)、カトリーヌ・ドヌーヴ(Catherine Deneuve)、ニコール・キッドマン(Nicole Kidman)を忘れることはできないだろう。自分自身よりももっと大きな歴史を表現するという感覚も重要だ。

WWD:時にまだ無名のアップカミングな人を起用することもあると思うが、アンテナはどのように張り巡らせているのか?

デュ・プレ・ドゥ・サン・モー:逆にアンテナを張り過ぎず、自然体でいるようにしている。皆と同じようにドラマや映画を見たり、記事を読んだり、インスタグラムを見たり、イベントに出かけたりする。特別な手法はないが、独断で決めつけず、先入観を持たずいろいろなものを受け入れる。

WWD:“チャンス”でのアンバサダー起用は初めてだ。今回アンジェルを起用した理由は?

デュ・プレ・ドゥ・サン・モー:アンジェルは作詞や作曲など、素晴らしいものを作っている。才能溢れる人なので、以前から一緒に仕事をしてみたかった。フレッシュかつ自然体で、奥深さもあり、「シャネル」と親和性があると思う。

時にはどのプロジェクトでコラボレーションするかを決める前に、誰とやりたいかを決める場合がある。“チャンス オー スプランディド オードゥ パルファム”の新キャンペーンでは、モデルよりも存在感のある人が必要だった。音楽の世界で常にチャンスをものにしてきたアンジェルが適任だと思い、起用した。

WWD:前回の“チャンス”のキャンペーンから10年たつが、伝えたいメッセージは?

デュ・プレ・ドゥ・サン・モー:“チャンス オー フレッシュ”や“チャンス オー タンドゥル”などバリエーションは違えど、“チャンス”を通して伝えたいメッセージはいつも一つだ。「自分自身を信じること。人生で訪れるチャンスを自分でつかんで、人生を歩んでいく。受け身でいるのではなく、積極的に人生を切り開いていく」。

アンジェルが新キャンペーンのために書き下ろした楽曲「A Little More」の歌詞「J’y crois encore(私はまだ信じている)」にもあるように、「今の時代にも人生を、チャンスを味方につけられると信じること」が今回特に重要なメッセージだ。チャンスをつかみ、運を味方につけ、人生を輝かせてほしい。キャンペーンフィルムでは軽やかで楽しく、喜びに溢れる世界観を表現した。

アンジェルについて

アンジェルは1995年生まれ、ベルギー出身のシンガーソングライター。これまで2作のアルバムをリリースし、世界各国でコンサートを開催。歌手のデュア・リパ(Dua Lipa)やラッパーのダムソ(Damso)ら、現代の音楽シーンを代表するアーティストたちともコラボレーションしてきた。2024年パリオリンピックの閉会式では、フランスのロックバンドであるフェニックス(Phoenix)とパフォーマンスした。20年には、「シャネル」のビューティ&ファッション アンバサダーに就任。カンヌ国際映画祭やメットガラ、22年に行った自身の「ノナント サンク(NONANTE CINQ)」ツアーなど大きなイベントでは「シャネル」を身にまとっている。

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