全国の理美容師、ヘアメイクアップアーティストを対象に、モデルを起用したヘアデザイン作品を募集し、グランプリを決定する「WWDBEAUTY ヘアデザイナーズコンテスト」。8回目の開催となる今回は、“2024~25年のコレクション(ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリ)におけるファッションやビューティのトレンドを意識した作品”というテーマで募集中だ。
毎回ポイントとなるのが、テーマとなっているコレクショントレンドの解釈。トレンドキーワードをそのまま反映させる必要はないが、コレクションの空気感やムード、流れくらいは把握しておいた方がベターだろう。ここでは「WWDBEAUTY ヘアデザイナーズコンテスト」の審査員も務める村上要「WWDJAPAN」編集長に、2024~25年のコレクションの“気分”を聞いた。
「WWDBEAUTY ヘアデザイナーズコンテスト」担当者(以下、WWD):コレクショントレンドはどのような流れで来ている?
村上要「WWDJAPAN」編集長(以下、村上):多様性をファッションでどう表現していくか、そこを試行錯誤する流れはすごく強くなっていると思う。ここ数年のトレンド“クワイエット・ラグジュアリー”も、多様性の表現方法の1つ。例えばラグジュアリーストリートのように、派手で服に目が行ってしまうようなファッションは、結局は人が主役ではなくて服が主役。そうではなく、人の個性が引き立つような、むしろ服は黒子に徹した“クワイエット・ラグジュアリー”のようなスタイルが良いのではないか。それが2024-25年秋冬くらいまでの流れになっている。
WWD:25年春夏は?
村上:より多様性を意識する流れの中で、「別に服が全部黒子でなくてもいいのでは」「派手な服を選びたい人だっているよね」といったムードが出てきて、また装飾のある服が登場してきた。そうした派手な服と地味な服、ドレッシーな服とスポーティーな服など、いかように組み合わせても良いのでは。そういった考えに基づいた“ミックス&マッチ”のトレンドが、 25年春夏はすごく花開いている。
WWD:スタイリングで遊ぶということ?
村上:それが大事。例えばバレエコアのチュチュやカラータイツに、ハードエッジなレザーのブルゾンを合わせるスタイルなど。ヘアでいえば、まずは相反するものを、一度組み合わせてみることから始めるのもあり。例えばかわいいと思われるピンク系のヘアカラーに、エッジィと思われるヘアスタイルを合わせる。そういう感覚を、もっと自由に突き詰めていけばいいと思う。
WWD:“相反するもの”の選定が意外と難しそう。
村上:昨年末、ヘアコンテストの審査員を務めた際にこの話をしたところ、質問コーナーで「私の作品、相反するものを組み合わせられていますか?」という質問が複数あった。作品を見てみると、確かにどちらかと言うと同じグループのアイテム同士を組み合わせているケースが多く……。そこで提案したのが“アイテムを形容詞に置き換えてみる”という方法。例えばバレエコアのチュチュならば、「ガーリー」「かわいらしい」といった言葉で表現できる。その反対は「マニッシュ」なのか、「かわいらしい」の反対ならば「パンク」や「ロック」なのか、などと考えてみる。そして、それを象徴するようなアイテムを組み合わせてみる、というアプローチだ。ヘアでも同じで、ピンクを「かわいい」と捉えるならば、ピンクを使って「かわいい」の真逆を表現できる髪型を創作する。そういう感覚でやると、ミックス&マッチのコントラストが効いてくると思う。
WWD:ミックス&マッチで参考になるブランドは?
村上:25年春夏コレクションでいえば、「プラダ(PRADA)」「アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)」「バーバリー(BURBERRY)」など。ドレスに重ためのモッズコートを合わせるスタイリング、繊細で儚げなレースにストリートなダメージデニムを合わせるスタイリングなど、分かりやすくコントラスを感じられると思う。ヘアならば、例えばツルッとしたスリークな質感のスタイルに、ゴワついたヘッドアクセを合わせるなど、分かりやすくミックス&マッチを表現できそう。
WWD:今回のコンテストに期待することは?
村上:SNSが広がり、画像や動画を見て瞬時にその良し悪しが判断されてしまう今の時代、小難しいものに興味を持ってもらうことが難しくなっている。パッと見て面白い違和感を感じられる、興味を持ってもらえる作品が共感を得られる傾向があり、その意味で面白さの伝わりやすいミックス&マッチは合っていると思う。とは言え必ずしもミックス&マッチを取り入れる必要はなく、例えば日本のカルチャーを取り入れた作品も面白いと思う。海外のファッションデザイナーと話していると、いかに日本のカルチャーをリスペクトしてくれているかが伝わってくる。そうした日本のカルチャーを、自分なりの感性で混ぜ込んだ作品も見てみたい。もちろん、ヘッドアクセにかんざしを使ってほしい、とか言っているわけではないが(笑)。