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最重要キーマンが語る「ZOZO流ファッションテックのこれから」

 ZOZOは3月4日、「ゾゾタウン」内に靴の専門モール「ゾゾシューズ(ZOZOSHOES)」をオープンした。無料配布する“ゾゾマット(ZOZOMAT)”で正確な足の3Dデータを計測、そのデータを基にAIがユーザーに似合うサイズのシューズをリコメンドする。現時点ではごく一部のアイテムにしか対応していないが、いずれは「ゾゾタウン」で扱う全シューズアイテムに広げる考えだ。また「ゾゾシューズ」はシンプルさとみやすさが売りの「ゾゾタウン」とは一線を画し、UI/UXを変え、スタイリングや商品ストーリーなどのコンテンツなどを組み込んだ“ストーリー型モール”になっている。その狙いは何か。「ゾゾシューズ」の担当役員で、PB「ZOZO」などの開発を手がけてきた伊藤正裕取締役COOに直撃した。

WWDジャパン(以下、WWD):「ゾゾシューズ」オープンの狙いは?

伊藤正裕取締役COO(以下、伊藤):ゾゾタウンで1年間(1〜12月)に販売しているシューズの売上高は約400億円。日本のシューズの市場規模は1兆4000億円なのでまだまだ伸びしろがある。シューズに限った話ではないが、ネット通販で最大のネックが試着ができないこと。これを解消すれば大きな商機になる。

WWD:昨年6月の「ゾゾマット」発表時には、ローンチは19年秋頃と語っていたがずれ込んだ。その理由は?

伊藤:足の計測のための「ゾゾマット」技術自体は早い段階から完成していた。課題はシューズの内寸をどう計測し、ユーザーにぴったりサイズのシューズをマッチングできるようにするかだった。6月の段階では実際に内寸を測ることも考えていたが、最終的にはAI(人工知能)を使ってマッチングさせるやり方になった。AI(のプログラム)自体も自社開発で、かなり技術的には難易度が高い。そのシステム開発に時間がかかった。PB「ZOZO」では体型測定の「ゾゾスーツ」で配布遅延と作り直しを余儀なくされ、実際のアイテムでも一部で不良品を作ってしまった。ゾゾマットでは信頼を失うことだけは避けたかった。技術検証は6万回、時間にして延べ5000時間と、時間も手間もかなりかけたことも遅れた原因だ。

「ゾゾマット」はすでに71万件の予約を受けており、2月27日から順次配送し、今朝の時点で8万4000件以上の計測数を得ている。かなり上々の滑り出しだ。6月の時点では無料ダウンロードなども考えたが、3Dデータの計測の精度が落ちる可能性を考慮して無料配布に切り替えた。データを出力するだけなので製作コストは低いし、難しいものではない。順次配送しているが現在予約を受けている分は3月下旬ごろには配布できそうだ。

WWD:「ゾゾシューズ」の取り扱いアイテムは100点。ちょっと少ないようにも感じるが。

伊藤:対象アイテムは今後、可能な限り早いスピードで増やしていく。技術的な詳細は非公開だが、仕組みとしては3Dデータをいったんバラバラに分解し、シューズの内寸とAIで突き合わせてぴったりサイズを導き出す。先ほども言ったがシューズの内寸は実際には計測しておらず、そのシューズの過去の購入者データなどと照らし合わせている。そのため、「ゾゾマット」のユーザーの利用者と「ゾゾタウン」でのシューズの購入者が増えれば増えるほど、AIの精度も高まるし、取り扱いアイテムも加速度的に拡大できる。

WWD:このタイミングでなぜシューズを?

伊藤:シューズカテゴリーの強化は、ずっと課題だった。実際には「ゾゾスーツ」より前に足の計測のための「ゾゾソックス」を開発し、同様のプロジェクトは考えていた。この数年間はPBなどいろんなことにリソースが割かれていたが、経営体制も変わり、技術的なブレイクスルーもあった。実は「ゾゾタウン」には年間購入者が800万人もいるが、その半数以上がシューズを買っていない。それほど伸びしろがある。

WWD:2019年10〜12月の業績低迷は一部のアナリストから手厳しい評価を受けた。21年3月期はどう盛り返す?

伊藤:新体制になって、もう一度“ファッション”という原点に立ち返った上で、戦略を見直している最中で、それらは改めて思いっきりアクセルを踏み込むための準備。21年3月期からは再び成長軌道に戻す。「ゾゾマット」に続く大型プロジェクトも水面下で進めているし、「ゾゾタウン」を進化させる準備も整ってきた。

WWD:ゾゾタウンの進化とは?

伊藤:「ゾゾタウン」は決して売り上げの良い月とは言えない2月でも1日で340万人が訪れる。これをリアルに落とし込むと、圧倒的世界トップの乗降客数を誇る新宿駅とほぼ同じ数になる。その膨大なトラフィックを、ようやく統計学的な分析データとして活用できるような準備が整ってきた。社内では新商品がどのくらいで売り切れるかだったり、このユーザーがラグジュアリーブランドを購入する確率などを当てるプログラムなどを開発している。それとは別に数年前から継ぎ足してきたようなシステムを根本から見直し、いわゆる“マイクロサービス”化するプロジェクトも進めており、ようやくそれを実行に移す段階にも来ている。

WWD:というと?

伊藤:これまでの「ゾゾタウン」はチラシのようなものだった。人気ブランドのランキングや売れ筋は統一的な指標に基づいており、そうなると自然に価格や規模が優先されがちになる。これからは購買履歴などをベースにしたユーザー一人ひとりに向き合ったパーソナライズが可能になり、ようやく本当にお客さまの利便性を向上できるようになる。

WWD:プライベートブランド「ゾゾ」事業は実質終了に向かっている。これまで蓄積してきたアパレルの設計と生産に関わる技術はどう生かす?

伊藤:実際には現在もパターンもグレーディングの研究も続けているし、アップデートもしている。テナントであるブランドと共同で膨大なサイズを展開するMSP(マルチサイズプラットフォーム)のアイテムは、一部を除き、PB事業で使っていた工場やシステムを、ブランドや商社に提供している。実際にそうでないと短期間で膨大なサイズを生産することは難しい。これまであえて公表はしてこなかったが、実は一瞬で寸法を計測できる超高性能の検寸機などを自社開発して使っている。これはごく一例に過ぎない。アパレル生産に関わるこうした自社開発のプラットフォームや技術は、実際にはZOZOの非常に大きな強みになっている。MSP事業も来期にはかなりアップデートした展開を考えている。