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名古屋で話題の「バーミキュラ ビレッジ」 おしゃれ鍋ブランドが手掛ける最旬施設をマーケティング目線でパトロール!

 年末年始に地元の愛知に帰省した際、家族から「今名古屋で話題になっているよ」と教えてもらった場所があります。2019年12月に開業した、「バーミキュラ ビレッジ(VERMICULAR VILLAGE)」です。「バーミキュラ」とは愛知ドビーが作っている鍋のブランド。「……なんだ、鍋か」とおっしゃることなかれ。この鍋、「ザ・コンランショップ(THE CONRAN SHOP)」などのおしゃれインテリア店でも扱っており、“丁寧に暮らす系”ライフスタイルの方々から強く支持されています。それゆえ一時期は入荷待ち状態が続いていました。そんなおしゃれ鍋ブランドが、「最高のバーミキュラ体験」や「バーミキュラの聖地」を打ち出しているのがこのビレッジ。早速パトロールしてきたんですが、「マーケティング的になんて今っぽい施設なんだ!」と唸らずにはいられなかったので、ご紹介します。

 「バーミキュラ ビレッジ」があるのは、ジェイアール名古屋タカシマヤなどが林立する名駅(めいえき)エリアから少し南に下ったあたり。名古屋市が再開発を進める中川運河沿いです。だだっ広い物流倉庫や古い町工場が立ち並ぶ中に、突然シャレた感じの建物が現れます。それが「バーミキュラ ビレッジ」です。なぜここに!?と思いますが、もともと同エリアが愛知ドビーの創業の地なんだとか。

 ちなみに愛知ドビー、今でこそフランス発の「ル・クルーゼ(LE CREUSET)」や「ストウブ(STAUB)」に並ぶおしゃれ鍋のメーカーですが、実はわれわれファッション業界とも縁が深いのです。同社の祖業はその名の通り、ドビー織機のメーカーだそう(愛知は繊維産業で栄えた街。一宮市は今も世界的ウール産地として有名です)。しかし、繊維産業の衰退と共に愛知ドビーも工業機械用の鋳物部品生産に業容を転換。更にそれも下降線となり、これまで培ってきた鋳物技術を注ぎ込み、起死回生として開発したのが「バーミキュラ」だったんだとか。このあたりのストーリー、経済番組などでもよく取り上げられています。「バーミキュラ」はフタと本体がビチっと閉まる気密性の高さが売り(それゆえ、食材そのものの水分だけでの調理=無水調理が可能)なのですが、その気密性こそ、まさに同社が鋳物製造で培ってきた技術の粋の部分だそうです。

「ライフスタイルを売る」ってまさにこういうこと

 で、肝心の「バーミキュラ ビレッジ」ですが、「バーミキュラ」で調理した料理を味わえるレストラン&ベーカリーと、物販&料理教室などのスタジオの2つのエリアで構成されています。私が同所を訪れたのは1月4日。朝11時過ぎにレストラン前に到着したところ、既にレストランの前には大行列が!ランチは予約を取っていないのですが、その時点で既にランチ時間中(14時まで)の入店は不可能だという話だったので、悔しいですがベーカリーの行列に加わりました。

 暖冬とはいえそれなりに寒いお正月、しかも運河沿いです。何度かくじけそうになりながらも、「ここまで来たからには何かしら食べずには帰れない!」とひたすら待ちました。周りはオシャレ系ファミリーや女性グループが多いですが、普通のおじさま、おばさまも多数です。あとは若い男性4人組とかもいました。いやー、幅広い層を集めていますね。そんなふうに待っている間に、人気のカレーパンやビーフシチューが売り切れたという案内が次々と出て焦りましたが、1時間超ほど待ったところでようやく私のターン!1階のベーカリーでパンとポトフのセットを購入し、2階のカフェスペースでいただきました。

 「バーミキュラ」で煮込まれたポトフは、大きめサイズのニンジンやジャガイモ、豚バラ肉が超やわらか!そして具材のうまみが溶け込んだスープは滋味あふれるおいしさ!パンも1個1個を小さな「バーミキュラ」鍋に入れて焼いているそうで、ポトフと相性ばっちりです。普段、時短のために煮込み料理は圧力鍋一択な私ですが、「こんなふうにじっくりコトコト煮込むライフスタイルっていいわね~」「こんなゆとりのある暮らしって憧れるわ~」と思うことしきり。きっとみんな、こういう気持ちで「バーミキュラ」の鍋買うんですね。業界でよく使われる用語「ライフスタイルを売る」って、まさにこういうことを指すんですね。

ライブラリーやラボまで併設 旬な要素がテンコ盛り

 さて、お腹もいっぱいになったところで、今回は入れなかったレストランの詳細をチェック。1階は普通のレストランのようでしたが、2階はオープンキッチンをカウンター席が囲むスペシャルな空間になっていて、イベント時のみ開放するそう。どうやら話題のシェフを招いて、お客さまに「バーミキュラ」で調理した特別メニューを楽しんでもらうといった食のイベントを想定しているようです。こういった、ゲストシェフが特別メニューをふるまうタイプの食イベントって、最近増えていますよね(クレジットカード会社がVIP客向けに、海外の3ツ星シェフを呼んで行う食イベントなどをチラホラ耳にします)。特定のレストランに属さず、そのようなイベントの場を主戦場にしているシェフの方も最近増えている印象があります。

 この時点で既に、「行列のできるパン屋」「ゲストシェフが特別料理を振る舞うイベント空間」という、旬な要素を2つも備えている「バーミキュラ ビレッジ」ですが、物販&料理教室エリアにも旬な要素がテンコ盛りでした。そもそも、物販エリアに料理教室スペースを備えているという点で既に旬だと思うのですが、それに加えて鍋のプライベートオーダーに対応したり、ワークショップを行ったりするための“ラボ”も併設。そこには鋳物加工やホーロー加工に使うであろう古くて重厚な機械類が置いてあって、「『バーミキュラ』はポッと出のブランドじゃありません!」というストーリーをビシバシ感じさせます。さらには、物販エリアにはライブラリーまでありました。世界中の食文化に関する本やレシピ本、地元名古屋や中川運河などについての本がズラリと並んでいて、そのラインアップを見るだけで楽しい。

“餅は餅屋”の協業によってブランドの魅力が最大に

 ここまでパトロールしてきて、「なんて今っぽい施設なんだ……!」と感嘆することしきりだったんですが、こちらの施設のクリエイティブディレクションを担当しているのがトランジットジェネラルオフィスだと知って、非常に納得しました。同社はパンケーキの「ビルズ(BILLS)」を始め、イケてる飲食店のプロデュースやラグジュアリーブランドが手掛けるカフェの運営などを請け負っている会社です。それ以外にも、オフィスやシェアハウスのプロデュースなどもされていて、ファッション業界ではおなじみな企業。ちなみに、同社の中村貞裕社長が元伊勢丹のバイヤーということも有名です。

 トランジットがプロデュースをしていると知ってあらためて感じたのは、「何かのプロジェクトを行う際に、その道のプロに協力を仰ぐことってやはり大事だな」ということ。なんでもかんでも自前でやろうとすると、マイナーな匂いが漂ってきてしまって突き抜けられないですよね。昔から“餅は餅屋”と言いますが、その世界の王道のプロ(この場合はトランジット)と組むことで、「バーミキュラ」が元々持っていた魅力が何倍にも拡大されて、非常に旬な感じの施設に仕上がっているな~と感心しました。地方でモノ作りをしているメーカーなどにとって、とても参考になる事例ではないでしょうか(今治タオル×佐藤可士和さんなど、これまでにも同様の事例は多いですが)。ちなみに、同ビレッジのロゴ&グラフィックデザインは長嶋りかこさん、物販部分のプロデュースはクラスカ ギャラリー&ショップ“DO”が担当しているそう。トランジット以外も、間違いないメンバーが脇を固めています。

 長々と書いてきましたが、「バーミキュラ ビレッジ」は、そんじょそこらのファッションの店よりもよほどファッションを感じる施設でした。というわけで、皆さんも名古屋を訪れる際はチェックをお忘れなく!ベーカリーは、そのうち百貨店がやっている全国の人気パン屋の催事などに出店するんじゃないだろうかと勝手に予想しています。