パーティーでMCを務めたアレキサンダー・ワン(Alexander Wang)
9月9〜17日まで開催された2016年春夏シーズンのニューヨーク・ファッション・ウイークは、イベントやパーティーが連日続く華やかなものだった。中でも「アレキサンダー ワン(ALEXANDER WANG)」と「スリーワン フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)」はブランド設立10周年を迎え、それぞれの節目を祝った。「アレキサンダー ワン」のパーティーでは、ワン自らがMCを務め、ライブパフォーマンスするアーティストたちを紹介し会場を盛り上げた。彼はまだ31歳。細身の体からは想像がつかないほど、エネルギーに満ち溢れている。
スタッフやゲストに囲まれウェン・ゾウ(Wen Zhou)CEOとハグするフィリップ・リム(Phillip Lim)
一方、フィリップ・リム(Phillip Lim)とウェン・ゾウ(Wen Zhou)最高経営責任者(CEO)が31歳の時に立ち上げた「スリーワン フィリップ リム」は、ブルックリン・ブリッジの夜景が一望できる特別に用意された川沿いのテラスで、ごく限られた人たちに向けたパーティーを開催した。そこで挨拶したゾウCEOが、「ある日、段ボールが送られてきて、その箱を開け入っていた服を見た瞬間、『これを作った人に会いたい』と思った」とリムとの出会いを語っていたのが印象的だった。当時リムは、ロサンゼルスで「ディベロップメント」を設立し、オーナー兼デザイナーとして活躍していたが、ゾウと出会ってすぐにニューヨーク行きを決めたという。中国出身のゾウCEOは13歳の時に家族でニューヨークに渡り、高校を卒業後、F.I.T.(ファッション工科大学)に在学中、ガーメント工場で働いて自分で学費を稼ぎ、その後、21歳で起業。31歳で約7000万円を出資して、リムと一緒に会社を設立したという。
多くのブランドが消え、淘汰されていく中で、生き残るブランドとそうでないブランドの違いは何なのか。もちろんデザイナーの才能は言うまでもないが「アレキサンダー ワン」は兄や姉をはじめとする家族が、「スリーワン フィリップ リム」はゾウCEOが経営面を支えており、これまでどの傘下にも属さずに独立した企業としてやってきた。以前のインタビューで「どこの投資や資本も入っていないから、いつでも私たちだけで決断できる。インディペンデントでいることは、とても重要なこと」とゾウCEOが語っていた。盤石な経営基盤とクリエイティブの両輪がうまく回っていないと、競争の激しいニューヨークではすぐにつぶれてしまう。バッカーを見つけてブランドをスタートしたものの、経営方針や意見の食い違いでバッカーが離れ、ブランドの商標も奪われて終わってしまうブランドは数多くある。
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電飾で夜空に浮かび上がったリカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)のメッセージ
今回のニューヨークで自分の夢を叶えたのは、リカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)だ。クリエイティブ・ディレクター就任10周年を迎えた「ジバンシィ バイ リカルドティッシ(GIVENCHY BY RICCARDO TISCI)」は、マディソン街747番地に旗艦店をオープンしたのを記念してショーを開催した。学生の頃から抱いていた「いつか学生でもショーを見られる機会を作りたい」という思いを実現すべく、ショーではファッションスクールの学生や近所の住民、抽選で当選した人を含む、約1200人の一般客を招待した。街中では、タイムズスクエアを含む数カ所のパブリックビューイングでショーをライブ中継した。もともと両親や自身がニューヨーク好きだったこともあり、ニューヨークへの恩返しの気持ちがあったという。愛と家族がテーマだったショーは、アメリカ国民にとって忘れることのできない9月11日に開催。ワールドトレードセンター跡地に建てられた超高層ビル、ワンワールドトレードセンターを一望することができるハドソン川沿いの桟橋に野外ランウエイを設置した。次第に日が暮れ、ワンワールドトレードセンターがライトアップされ、ブルーの閃光が天まで昇る頃、そこには厳かな雰囲気さえ漂っていた。ショーの中では、6つの異なるカルチャーや宗教のジャンルから選ばれた歌、生演奏が披露された。差別なしに人々がひとつになるパワーを持つ願いを込めたという。ショーが終わりパーティー会場に向かうと、入り口に大きく「I BELIEVE IN THE POWER OF LOVE」と掲げられた電飾文字が目に入ってきた。今回のニューヨーク・ファッション・ウイークでは、それぞれのブランドにおけるエモーショナルな瞬間を垣間見た。彼らの10周年イベントを見ていると、まだまだニューヨークは、夢を実現できる舞台であると思わせてくれる。ライジングスターが生まれにくい時代だが、次世代のパワフルなデザイナーが台頭することを期待したい。
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※文中の肩書き・事実関係などは2015年10月5日当時のものです