ハイダー・アッカーマン(Haider Ackermann)による「トム フォード(TOM FORD)」は、ブランド元来のセックスアピールを「誘惑」と捉え、フェティッシュで官能的なスタイルを打ち出してきた。だが昨シーズンあたりから「誘惑」は「挑発」へと変わり、ある種の“危うさ”を孕むようになっている。モデルたちの視線は常に交差し、その姿は互いに挑発しながら誘惑し合っているかのよう。肌は極限まで露出して自分をさらけ出しながらも、最後の最後までは差し出さない。そんな人たちの物語を描く。ハイダーは「『トム フォード』という環境に馴染んできた」と語り、「これまでやったことのない、もう少し危険な香りを取り入れたかった。ある種の風変わりで退廃的な美しさ、そして自由を求めた。肌の露出は多いが、それは単に扇情的なものではなく、自由な感覚やリスクを恐れない姿勢の表れ」という。
ガラス越しに相手を誘惑し、
鏡に反射した視線で自信さえ挑発
ショー会場には、ガラスと鏡の壁を設けた。モデルの視線は、ガラスをすり抜けて向こう側のモデルを挑発し、鏡に反射して自分自身の挑発的な姿をさらけ出す。モデルたちはブラック&ホワイトを基調にベビーブルーやオリーブのシャープなテーラードスーツやジャケット、「TF」ロゴをパンチングしたレザーを身にまとう。スーツスタイルは、自信満々のピークドラペルにシガレットパンツ。4つ並ぶカフスボタンは、一番手に近い一つだけを外している。創業デザイナーのトム・フォードがこだわったスタイルコードだ。胸元の黒い蘭の花も、ブランドが最初に発売した香水にちなんでいる。レザーブルゾンには、ラペルやポケットフラップを表現したエンボス加工をあしらった。ハイダーが「イリュージョン」と呼ぶトロンプルイユ(だまし絵)的なテクニックは、相手の視線を自分に惹きつけることに一役買う。インナーは、第4ボタンまで開けたシャツ、どこよりも深いスクープドネックのタンクトップなど。タンクトップは、ハイダーが好んで選び、インナーとして多用している。口紅のように赤いイブニングドレスは、肩を落として着こなし、サテンのブラトップが覗く。
「喜びを大切にして、
もっとリスクを冒す」
終盤は、ハイダー初となる大胆なスイムウエアとイヴニングが交差した。水着は、男性モデルではカシミヤニットやレザーとミックス。女性モデルは深いVネックのセーターやスティレットとコーディネートして、周囲の好奇の目など恐れないかのように堂々と歩いた。
ハイダーが設けた今シーズンのテーマは「自由」と「大胆さ」、そして「気負わないアティチュード」だったという。彼は、新しい自由な感覚、肌を大胆に露出する極小の水着やゆったりとしたシルエット、そして両者の融合などを「大いに気に入っている」と語った。「こうしたアプローチを続けていきたい。喜びを大切にして、もっとリスクを冒していこうと。そうすることで、私たちは心地よさを感じ、生きているという実感を味わえるのだから」と締めくくった。