バーニーズ ジャパンは、バーニーズ ニューヨーク銀座本店3階の「チェルシー ヴィンテージ ルーム(CHELSEA VINTAGE ROOM)」でニューヨークを拠点に活躍するスタイリスト、ティナ・チャイ(Tina Chai)を迎えた特別イベントを9月17、18日に開催した。17日には、「フィガロ ジャポン」とのコラボレートイベントを、18日にはティナによるスタイリングイベントを実施。ビンテージアイテムを自分のスタイルに取り入れる方法やコーディネートの組み立て方、私物ビンテージアイテムとのコーディネート提案などを行った。
ティナ・チャイは米コロンビア大学卒業後、米「ヴォーグ(VOGUE)」でグレース・コディントン(Grace Coddington)のアシスタントとして経験を積み、「ハーパーズ バザー(Harper's BAZAAR)」でファッションエディターを務めた後、スタイリストとして独立。ショーや広告のほか、コンサルティング、セレブリティのスタイリングも行っている。来日する際によく行くお店は、ジャンティークやブラミンク、ドゥロワー、アーツ&サイエンス、45Rなどだ。
今回日本に持ってきたものは、長年にわたり大切にしてきた1990年代から2000年代を中心とする「プラダ(PRADA)」や「サンローラン(SAINT LAURENT)」「マルニ(MARNI)」といったブランドのコートやドレス、バッグなど。「チェルシー ヴィンテージ ルーム」で約1カ月販売する。
龍淵絵美ファッション・ディレクターがイベントをプロデュース
今回のイベントをプロデュースしたのは、ティナ・チャイと長らくの友人であり、コラムニストとしても活躍している龍淵絵美ファッション・ディレクターだ。「ビンテージって、いろいろなレイヤーのものがあると思いますが、彼女の経歴からも分かるように、トップスタイリストが選んだビンテージは、クオリティーが高く、そして一貫した彼女らしいテイストがある。自分はずっと海外のエディターに憧れてずっとこの仕事をしてきましたが、彼女のアーカイブの存在を知った時、プロのモノを選ぶポイント、服の良さとかクオリティーの確かさ、洋服自体を楽しむことを後世に伝えるいい機会だと思いました。しかも彼女はスリムな体型なので、日本人のサイズにもテイストにも合うと思った」と話す。
店内にはフラワーモチーフやドット柄のブラウスやワンピース、コート、バッグ、シューズなど、ブランドのアイコニックなコレクションや、少しフェミニンでキャッチーでありながらもタイムレスなワードローブが並ぶ。ティナ・チャイは「これらのワードローブは、1年中着用できるもの。薄手のワンピースでもタイツやタートルネック、コートを合わせてコーディネートしている。実はニューヨークのバーニーズで購入したアイテムもあり、それが巡り巡って日本のバーニーズで販売しているって、良いサーキュレーションね。以前は週に1回はバーニーズに行き、お茶をしたりブランチをしたり、新しい情報を得るために足を運んでいたの。そして最終的にはいろいろショッピングをして帰るというルーティーンだった。それがとても楽しかった」と話す。
ビンテージは、より自分らしさを出せるもの
ビンテージアイテムをスタイリングするポイントとして、「ビンテージを自分のワードローブに取り入れることで、他と被らないスタイルになる。スタイリングする際、常に時代に合わせて“何かを作ろう”と心掛けることは、いつだって大切。頭からつま先まで古いものでは“オールド・レディー”になってしまう(笑)。たとえばマチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)の「シャネル(CHANEL)」の何か新しいアイテムとか、「セリーヌ(CELINE)」のスニーカーにビンテージを合わせて、それにホワイトのTシャツとかデニムジーンズとかベーシックなものを取り入れるとリアルで今っぽくなると思う」。
「ビンテージの最大の魅力の1つは、その服を着ると、それが本当に唯一無二で特別で、自分だけのものになるということ。それは他の人と自分を差別化する方法。そして、そのアイテムを自分らしくアレンジして、自分だけのスタイルを特別なものにすることにもなるの。もちろん最新コレクションを見るのは大好きだけど、今の服はとても高いから全身最新コレクションというわけにもいかないしね。ビンテージを身につけるということは、単にランウエイやインスタグラムで見かけるものに流されるのではなく、自分なりのスタイルやビジョンに基づいて、自ら選んで着ているということ。そして、それはビンテージが提供できるものであり、他のものにはない魅力。だからこそ、今ビンテージはこれほど特別なものになっているのだと思う」。
トップスタイリストとして、ビンテージを選ぶ基準や、それらをスタイリングしていくための審美眼はどのように養ってきたのだろうか?ティナ・チャイは、「誰かや何かのスタイリングをするってことは、結局のところ、世の中で何が起きているかを見つめていることにつながっている。そして、今起きていることに対する自分なりの解釈を表現できる何かを見つけようとしているんです。だから何より好奇心を持つことが大切。もし、スタイリストを目指すなら、一生懸命働く覚悟をしておいて。そして、諦めないで。もしそれがやりたいことならね。多くの人がこんなふうに見ている気がするけど、実はこっちを見るべきなんだとか、常に目を光らせておくこと。つまり、常に何が起きているかを見極めること」。
自分の目で見て直接感じたものを表現していく

スタイリストとして長く活躍している彼女にとって、これまでのキャリアを通して見えてきたものは何だろうか。「本当に思うのは、仕事の多くは結局のところ努力なんです。そしてかなりの部分は運でもあります。さらに大事なのは自分の審美眼を評価してくれる『正しい人たち』と『正しい場所』を見つけること。というのも、今の世界には本当にさまざまな形の『美しさ』が存在しているから。だから人が本当に必要としているのは、自分と同じような見方で世界を見ている人たちを見つけることなんです」。
「私自身が何を美しいと感じるかは、アメリカで育った経験や、ニューヨークで学んだこと、そして韓国人としてのアイデンティティーに影響されています。それに、私は昔からいろいろなことへの好奇心が強かったんです。ヨーロッパやアジアが舞台の映画や、違う時代を描いた映画が好きでした。そうしたもののおかげで夢を見ることができたし、想像力もとても豊かになりました。だからスタイリングにおいても重要なのは、自分のビジョンや声が届く場所を見つけることなんです。そしてそこで認められ、支えられることです。それが実は難しいことでもある」。
スタイリストを目指す人に向けて

これからスタイリストを目指す人たちに向けては、「まず自分が本当に好きなものを見つけるのが一番簡単な入り口でしょう。例えば、スケートが大好きな人がいきなりハイファッションの世界に入ろうとするのは、かなり大きな飛躍かもしれません。でも、その人がスケートに夢中で、その流れで「パレス(PALACE SKATEBOARDS)」や「シュプリーム(SUPREME)」のようなブランドで働くようになれば、それはもっと自然で簡単な移行になります。だから結局のところ、自分がどこを目指したいのか、そして自分の美意識や感性にとって何が自然で理にかなっているのかを考えることが大切なんです」。
多くの人が情報収集においてSNSを活用しているが、彼女はほとんど見ないという。「その理由は、おそらく私がスタイリングやキュレーションを好む理由でもあるのですが、インスタグラムやその他のソーシャルメディアを利用していないのは、自分が何を探すかを自分でコントロールできるからだと思います。観る映画や読む本、興味を持つ人々など、自分が望むものを自分で選んで取り入れることができます。無理やり押し付けられることもありません。完全にコントロールできているわけではありませんが、ある程度の“自分らしさ”を保てるのが好きなんだと思います。それらに反対しているわけではなく、ただ、自分には合わないだけで、友人たちがSNSで得た良い情報を教えてくれることもあるし、ラッキーだと思っている(笑)。自分の目で見て直接感じたものを表現していきたい。そうすれば、人生で望むものに向かって進んでいけるから」。
PHOTOS:SHUHEI SHINE