
欧州エコデザイン規則(ESPR)に基づく繊維向け規制の適用が迫る中、繊維産業の情報基盤づくりが具体論に入った。経済産業省の「サーキュラーエコノミーに関する産官学のパートナーシップ(サーキュラーパートナーズ)」での議論を経て、東レ・領域別CE情報流通PF要件定義事務局は要件定義書をこのほど発表した。認証・規制対応から環境配慮設計、リユース・リサイクルまでをデータでつなぐ、テキスタイル向け情報基盤の全体像を示している。
今回の構想は、産官学のパートナーシップ「サーキュラーパートナーズ(CPs)」の枠組みで採択された、テキスタイル・建設・事務機器の3領域における情報流通プラットフォーム(PF)構築に向けたもの。説明主体を同事務局が務め、アドバイザーとして信州大学も関与している。
産業のOS「ウラノス・エコシステム」との連携
本構想の技術的柱となるのが、経済産業省が推進するデータ連携基盤構想「ウラノス・エコシステム(Ouranos Ecosystem)」の下での開発だ。これは、企業や業界、さらには国境を越えたデータ共有を安全に行うための「産業の共通OS」とも言える取り組みである。
テキスタイル情報流通PFがこのエコシステムの下開発されることで、機密性の高いサプライチェーン情報を各社が自ら管理(データ主権を担保)しながら、必要な情報だけを安全に連携することが可能になる。すでに蓄電池のトレーサビリティ管理などで先行実績があり、その汎用的な仕組みを繊維産業に横展開することで、国内外の複雑な規制への効率的な対応を目指す狙いだ。
3つの優先ユースケース
背景にあるのは、日本の繊維産業が抱える課題だ。欧州でサステナビリティ対応が加速する一方、国内では年間約73万トンの衣料品が手放され、リユース・リサイクル率は約35%にとどまっている。この状況を打破するため、要件定義書では以下の3領域を優先的に定めた。
1.認証・規制対応支援:欧州規制ESPRやDPP(デジタル製品パスポート)対応、さらにはGRS等の国際認証に必要なSC(範囲証明書)・TC(取引証明書)管理の省力化。
2.環境配慮設計推進:素材の特性や製造工程の「ブランドストーリー」を可視化し、消費者の環境配慮行動を促す付加価値の提供。
3.リユース・リサイクル支援:自治体や回収事業者が製品組成を瞬時に把握し、最適な分別と再資源化を実現する仕組み。
2040年の完全移行を見据えて
システムは、まず日本版の認証デジタル化アプリから立ち上げ、その後DPP対応やリサイクル支援へと機能を拡張していく。ウラノス・エコシステムを介して他業界のデータ基盤ともつながることで、情報の二重入力といった業務負荷を大幅に削減し、一気通貫のデータ利活用が可能になる。
アパレル企業にとって、この構想は単なる「規制対応コスト」ではなく、製品の耐久性や修繕情報を伝達し、産業競争力を高めるための「攻めの基盤」と言えるだろう。
