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「365日中300日は飲む」ヴーヴ・クリコCEOが指南する、“カジュアルに嗜む”シャンパンのススメ

PROFILE: ジャン=マルク・ギャロ/ヴーヴ・クリコ社長兼CEO

ジャン=マルク・ギャロ/ヴーヴ・クリコ社長兼CEO
PROFILE: ルーアンビジネススクールを卒業後、「カルティエ」や「クリストフル」「フェラガモ」などで上級管理職を歴任する。2003年にルイ・ヴィトン ノースアメリカの最高経営責任者としてLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトンに入社。06年にルイ・ヴィトン ヨーロッパの社長に就任。14年から現職
イエローカラーのラベルや、太陽にちなんだイベントの数々――シャンパンメゾン「ヴーヴ・クリコ(VEUVE CLICQUOT)」は、「ソレール(Solaire、仏語で太陽の意味)のように輝くメゾン」だ。創業から250年以上にわたり、日の出のような「夢」や「希望」「喜び」に満ちたライフタイルを提案してきた。

そんなヴーヴ・クリコのジャン=マルク・ギャロ(Jean-Marc Gallot)CEOが来日した。太陽のような笑顔で、メゾンの立役者であるマダム・クリコへの思いやお気に入りの飲み方などを語った。

敬愛するマダム・クリコ

WWD:これまで数々のラグジュアリーブランドを渡り歩いてきたとか。

ジャン=マルク・ギャロ ヴーヴ・クリコCEO(以下、ギャロ):これまで「カルティエ(CARTIER)」や「フェラガモ(FERRAGAMO)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」などで要職を歴任してきた。この間に学んだことは、予期もしない夢を与えることが“ラグジュアリー”であること。そして、その夢を形作るのが、クラフツマンシップとサヴォアフェールであることだった。この考えは今も変わっていない。

WWD:「ヴーヴ・クリコ」のクラフツマンシップとサヴォアフェールとは?

ギャロ:私たちは徹底的にピノ・ノワールにこだわる。なぜなら、メゾンの礎を築いたマダム・クリコがこよなく愛したブドウだから。規定を満たすピノ・ノワールが収穫できた年のみ製造している“ラ・グランダム”を飲んでもらえば、「ヴーヴ・クリコ」のクラフツマンシップとサヴォアフェールを体感してもらえるだろう。ちなみに、商品名である“ラ・グランダム”は、仏語で“シャンパーニュ地方の偉大なる女性”を意味する。つまり、マダム・クリコのことだ。

WWD:ギャロCEOにとってマダム・クリコとは?

ギャロ:夫に先立たれ、1805年に「ヴーヴ・クリコ」を引き継いだ。女性の経営者が認められていなかった時代に「未亡人が家業を引き継ぐ」という例外としてスタートした。弱冠27歳の彼女に、家族や友人は「あなたが背負う必要はない」と言っていたらしい。

マダム・クリコは、発明家と呼ぶにふさわしい。例えば、単一年のぶどうから作るビンテージ・シャンパン、赤ぶどうと白ぶどうのブレンドで作るロゼ・シャンパン、これらを澄んだ液体にするための動瓶台など、今ではあたり前となっていることも彼女の発明だった。

ある日、ベルナール・アルノーLVMH会長兼CEOから「そろそろアイコンとなるセレブリティーを起用してみては」と話を持ちかけられた。彼は、「ディオール(DIOR)のリアーナ(Rihanna)やジェニファー・ローレンス(Jennifer Lawrence)のような」と例を示した。しかし、私は「アイコンはすでにいる。マダム・クリコだ。これまでもこれからも、『ヴーヴ・クリコ』のアイコンは彼女しかいない」と答えた。世界中を見渡しても女性の名前を冠したブランドは数が限られている。ワイン&スピリッツのカテゴリーだったら「ヴーヴ・クリコ」くらいだろう。私たちは、それを心から誇りに思っている。

WWD:そんなマダム・クリコの意思を継ぎ、何かアクションは起こしているのか?

ギャロ:確かに起業する女性は増えている。問題はそのあとだ。起業した際、女性は男性より多くの障壁に当たることが分かっている。例えば、ハイテク業界を見渡したとき、女性が起こした会社の約3%しか融資を受けられていない。まだまだ道半ばというのが本音だ。

そんな女性起業家を支援すべく、私たちは「ボールド ウーマン アワード(旧ヴーヴ・クリコ ビジネス ウーマン アワード)」を開催している。1972年の創設以降、これまでに27カ国400人の女性に授与してきた。

シャンパンは日常をきらめかせてこそ

WWD:ビールやワイン、ウイスキーなど、酒類は世界にはさまざまある。その中で、シャンパンだけが持つ魅力とは?

ギャロ:シャンパンはお祝いのシーンはもちろん、何気ない1日にもぴったりのアルコールだ。たとえ何も予定がない1日でも、シャンパンを開ければ特別な1日に生まれ変わる。これはシャンパンだけが使える魔法だ。

「シャンパンをカジュアルなシーンで飲んでほしい」。私たちはそう強く願っている。今年は5月21、22日の2日間にわたり、富士山の麓でピクニックを開催した。このイベントは、日本での開催を皮切りに今後世界の主要都市で開催していく。

WWD:2022年開催の企画展「ヴーヴ・クリコ ソレール カルチャー〜太陽のように輝く250年の軌跡〜(以下、ソレール カルチャー展)」も、日本をキックオフの地に選んだ。

ギャロ:実は、現在の国別の売り上げは、日本と米国がツートップ。私がジョインした頃は、日本は3番手、あるいは4番手だったと記憶している。しかし、この11年間で売り上げは倍増した。これは、アルノー会長の言葉を借りるなら、「デザイアビリティ(Desirability、魅力的であること)」を追求した結果だろう。いずれは「ルイ・ヴィトン」くらいの売り上げも夢じゃない。

加えて、“ソレーユ カルチャー”を持つ「ヴーヴ・クリコ」と“日出ずる国”の別名を持つ日本は、太陽を通してつながっている。このような根源的な共通点があるため、イベントを企画するときも自然にアイデアが浮かんでくる。

WWD:他の国では、どのようなイベントを実施してきた?

ギャロ:昨年、フランス・ランスとオーストリア・ウィーン間を移動する夜行列車・オリエント急行で行ったイベントは、「ヴーヴ・クリコ」ならではの内容だった。列車に乗り、朝5時に起床。パジャマを着たまま下車し、みんなで日の出を見た。その後、同様のイベントを、シンガポールやマレーシア、ペルーでも開催した。ペルーのチチカカ湖で見た日の出は見事だったな。

WWD:最後に、一番美味しいシャンパンの飲み方は?

ギャロ:理由もなく飲むこと。ありふれた1日が特別な日になる。365日中300日はシャンパンを飲む私が言うんだから間違いない。

WWD:ということは、自宅の冷蔵庫には常にシャンパンボトルが?

ギャロ:もちろん。どんなときも2〜3本は冷やしているよ。

WWD:フードは何を合わせるのがおすすめ?

ギャロ:何でも合う。そういえば、米雑誌「ザ・ニューヨーカー(THE NEW YORKER)」に、ハンバーガーとシャンパンボトルを並べ、「アフター・ザ・オペラ」と文言を添えた広告を載せたこともあったな。「オペラを鑑賞した後、ハンバーガーを片手に日常に戻る。その日常に『ヴーヴ・クリコ』がきらめきを添える」。まさにメゾンが伝えたいメッセージだ。

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