PROFILE: 田村純一/社長

ジェイドジャパンが主にヘアサロンで展開するヘアオイル「ロア ザ オイル」は2023年5月の発売以来、1年半で約81万本を売り上げた大ヒット製品だ。香りにとことんこだわる独創性のある製品で新たなカテゴリーを切り開き、サロンの価値向上を目指す。
サロンで香りを提供する
新しい文化を創造
WWD:「ロア ザ オイル」の快進撃が続いている。
田村純一社長(以下、田村):「ロア ザ オイル」と「ロア ザ オイル ケア」それぞれ6つの香りがあり、ありがたいことに10月に発売した“ネロリスモークティー”はすでに品切れし、“ミスティックウッド”も同様の勢いだ。20年間サロンビジネスに携わる中で、忙しい店は技術を提供しながら物販もやらなければならず、時間がない中でどう売っていくかが課題だった。説明しなくても、お客さまから「これ何ですか?」と聞かれる製品は何かと考えたとき、五感の中で直感的に感じる嗅覚だと思った。そこでフレグランスとしても通用するレベルの香りを目指して作ったのが「ロア ザ オイル」だ。3アイテムでローンチし、それぞれ香りは異なるが成分や質感は全て同じ。なぜなら、香りをレイヤードすることを前提としているからだ。美容師は造形(カット、パーマ)と色彩(カラーリング)を提供しているが、さらに香りを提供することで、サロンの奥行きと可能性を広げたいと思っている。
WWD:機能軸ではなく香りを打ち出す製品は新鮮だ。
田村:香りには、特定の香りを嗅ぐとそれに関連する記憶が呼び起こされるプルースト効果がある。「ロア ザ オイル」を購入してプライベートで使うと、サロンやスタイリングが思い出され、それが既存客の定着にもつながるのではないか。コロナ禍で香りに興味を持つ人が増え、フレグランス市場がそれ以降伸びている。そんな時代の流れにマッチしたプロダクトというのも後押ししている。
WWD:サロン専売品の中でも高価格帯だ。
田村:ヘアオイルの低価格から中価格帯はレッドオーシャン。競合の少ない高価格帯にして、それに相応しい価値ある製品にすることに注力している。香りはフランス、イタリア、日本の調香師と作り、オードパルファムレベルの6時間持続する。その香りのこだわりと持続性がなければ、既存製品との差別化は難しい。もう一つこだわったのはビジュアルで、アパレルブランドよりのイメージにした。一般的なヘアオイルは成分や効能ばかり書いてあるが、「ロア ザ オイル」は成分などの説明は必要最小限。もちろんクオリティーが高いのは大前提だが、ビジュアルとパッケージとパフュームのような上質な香り、その3つがそろって完成度が高ければ、まず興味を持っていただける。その効果もあり、公式インスタグラムは、1万7000人のフォロワー、293万回の閲覧回数(24年12月現在)となっている。
WWD:高価格帯にこだわる理由は?
田村:オイルは5500円、バームは4950円と確かに高価格だ。ただ、2000〜3000円の製品を売っても美容室の利益は数百円。それをいい方向に崩したい。弊社のように小さな会社の製品が売れれば、大手メーカーも「このくらいの価格帯でいける」となるだろうし、美容師やサロンの自信につながる。われわれはそのきっかけを作りたい。価値ある物販製品を適正な価格で販売して客単価を上げ、サロンの価値も高めるのが狙いだ。
WWD:海外ビジネスの進捗は?
田村:フィリピンは三越と富裕層をターゲットにしたサロンでの販売がスタートしている。現地では8000円程度で販売しているが、10本まとめて購入されるなどのケースもある。韓国と台湾はすでにサロンで導入されており、オファーが絶えない状況だ。今年はさらに中国とイタリアへの進出を予定している。イタリアはミラノ・ファッション・ウイークのバックステージで使用してもらったことがきっかけで、モデルが「この香りは何?」となり、ビジネスへとつながった。海外で商談していると、詳しく製品説明をしなくても香りを嗅いだだけで気に入ってもらい取り引きが決まることが多い。これが香りの強さだと実感した。
WWD:25年の新製品発売予定は?
田村:1月23日に全6種類の香りのトラベル用を発売し、3月には新たな3つの香り、5月には髪にも肌にも使えるUVスプレー、6月には昨年も好評だった夏限定の香り“ビーチクラブ”を発売予定だ。また、ビンの廃棄を減らすため、長く使う価値を感じてもらえるようなアーティストやブランドのコラボ限定ボトルやレフィルの販売にも取り掛かる。さらに秋にはハンドソープ、ディフューザー、香水など、より香りにフォーカスしたプロダクトの発売を予定している。サロンで売るものは、シャンプーやコンディショナー、スタイリング剤など髪に関わるものに限られているが、美容のプロから買うライフスタイルビューティとしてそれ以外の製品もあっていいと思っている。日本のギフト市場は10兆円と言われており、その一部をサロン業界に持ってきたら経営的にも潤うという発想だ。そのため、ギフトに選ばれるようパッケージにも徹底してこだわる。香り、クリエイティブ、ビジュアルに特化したプロダクトを通し、サロンで香りを提供するという新しい文化を創造したい。
実現の可能性はゼロじゃない私の夢
旅行が好きなので、今まで行ったことのない国、できれば10カ国を訪れたい。聞くのと体験するのでは大違いで、実際にその地に立ってインスピレーションを得たい。どこに行っても香りを感じたり考えたりするので、結局は仕事になってしまうが(笑)。
2022年4月設立。サロンやショールームに設置するディフューザーの販売からスタートし、サロン製品などを手掛ける。23年5月に髪だけでなく全身に使用できる「ロア ザ オイル」が誕生。こだわったパフュームレベルの香りや香りのレイヤードの提案、スタイリッシュなパッケージなどが話題を集め、大ヒット製品に。「WWDBEAUTY」の24年ヘアサロン版ベストコスメでは2部門同時入賞した。24年3月に「ロア ザ オイル ケア」、同年12月に「ロア ザ バーム」を発売し、サロンにおける香り文化の創造にまい進する
ジェイドジャパン
03-6804-2743