数週間前から就任はウワサされていたが、10月6日の正式発表を受け、この意外な選任にファッション業界に驚きが広がった。究極にフェミニンでロマンチックなコレクションが得意なクチュリエとして知られるガリアーノが、「脱構築(ディコンストラクション)」などのキーワードを打ち出してきたアバンギャルドな「マルジェラ」にどうアプローチするかが注目される。
「マルジェラ」の親会社オンリー・ザ・ブレイブ(OTB)のレンツォ・ロッソ=プレジデントは、「『マルジェラ』に新たなカリスマを迎える準備は整った。ガリアーノは唯一無二の才能を持つクチュリエだ。彼にしか実現できないクリエイションの世界を、再び目の当たりにできることを楽しみにしている」とコメントした。ガリアーノ本人と「マルジェラ」創立者のマルタン・マルジェラはまだコメントを発表していない。「アントワープ6」の一人として一世を風靡したマルジェラは現在、絵画などの芸術活動に情熱を注いでいるという。

ここ数年、「マルジェラ」のセカンドライン「MM6 メゾンマルタン マルジェラ」に注力してきたOTBによるガリアーノ抜擢の背景には、メーンラインの注目を取り戻す狙いがある。
マルジェラが退任し、匿名のデザイン・チームにクリエイションを託した2009年以降、デザイナーを公表しないことで知られる同ブランドだが、ラフ・シモンズやハイダー・アッカーマンなどにアプローチするなど、水面下で新たなクリエイティブ・ディレクターとなる人材探しを進めてきたようだ。最近では、「セリーヌ(CELINE)」の元デザイナー、イヴァナ・オマジックが同ブランドでクリエイションに携わっており、マリオス・シュワブを非公表でブランド・アドバイザーとして迎えていた。他にもメンズ・ウエア担当のクリストファー・ブースや、10月1日にブランドを去ったマシュー・ブレイジーがデザイン・チームの中心人物だったことが明らかになった。OTBは02年のマルジェラ社買収と共に、イタリアを代表するファッション・コングロマリットへの道を歩み始めた。現在では「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR&ROLF)」や「マルニ(MARNI)」を傘下に収め、昨年には20億ドル(約2180億円)の売上高を計上した。08年、OTB傘下のブレイブ キッド社と「ジョン ガリアーノ(JOHN GALLIANO)」の子供服のライセンス契約をきっかけに、ロッソ・プレジデントとガリアーノの間に友情が芽生えたという。騒動後もガリアーノのリハビリを応援し、サポートしていたようだ。
「クリスチャン ディオール(CHRISTIAN DIOR)」「ディオール(DIOR)」コレクションを15年手掛けたガリアーノは、11年にパリのカフェで人種差別的な暴言を吐いたとして、同ブランドと自身のブランド「ジョン ガリアーノ」から解雇された。以降、ファッション業界から遠ざかりリハビリに専念していたが、昨年「オスカー・デ・ラ・レンタ(OSCAR DE LA RENTA)」で3週間限定のデザイナーを務めたことが話題を呼んだ。長期的な提携を前提に話し合いを進めるも、ガリアーノが自身のデザイン・スタッフを選びたいと主張したため実現しなかったという。ガリアーノは今年5月、ロシアの香水専門店レトワールのクリエイティブ・ディレクターに就任した。