ファッション

「シャネル」2020-21年メティエダール・コレクション 16世紀の女性城主たちとココ・シャネルへのオマージュを解説

 「シャネル(CHANEL)」は12月3日19時(フランス現地時刻)、2020-21年メティエダール・コレクションをオンラインで発表した。12月1日にフランスのロワール渓谷に位置するシュノンソー城のボールルームで行われたショーの動画撮影には総勢300人のキャストとクルーが参加し、女優のクリステン・スチュワート(Kristen Stewart)がただ一人ショーの観客となった。クリステンはユルゲン・テラー(Juergen Teller)が撮り下ろした同コレクションのキャンペーンにも起用されている。

 パリ以外でのショー開催はクリエイティブディレクターのヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)にとって初めての試みでもあり、当初は200人のゲストを招待することが予定されていた。しかし、新型コロナウイルスの影響で2度目のロックダウン措置が取られたことで、オンライン形式の発表となった。 

 コレクション発表の舞台となったシュノンソー城は、かつて6人の女性たちが城主の座に君臨したことから“貴婦人たちの城”としても知られており、こうしたパワフルな女性像はガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)にも影響を与えてきたという。

 城内を歩いてみると、元フランス女王のカトリーヌ・ド・メディシス(Catherine de Medici)のイニシャルであるCの文字が至るところに見られるが、「シャネル」のロゴを彷彿とさせる。

 今回のコレクションでは、テラーが撮影したシュノンソー城の写真をまとめた豪華な本や、城の歴史を解説したオーディオクリップなど、招待を受けた人だけがアクセスできるコンテンツも制作された。なお、英語版のオーディオクリップではキーラ・ナイトレイ(Keira Knightley)、スペイン語版はペネロペ・クルス(Penelope Cruz)、フランス語版はアナ・ムグラリス(Anna Mouglalis)がそれぞれナレーションを担当している。
 
 故カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)氏の右腕として30年来活躍してきたヴィアールは、「壮大な森と庭園に囲まれた、シェール川にまたがるシュノンソー城が醸し出すおとぎ話のようなオーラからもインスピレーションを受けた。アニメ映画と、子どもの頃に見ていたキッチュなB級映画の間のような感じがする。そうした映画に登場する女性は常にとてもセクシーだった。ボールルームのチェス盤のような床やカトリーヌ・ド・メディシス、ココ・シャネルからはかなりインスピレーションを受けた。あらゆるものがミックスされたコレクションとなっており、多くを直感で決めた」とコメントした。

 ヴィアールは襟元にフリルをあしらった黒の細身のコートやジャケット、そしてルネッサンス期の王子のような袖に膨らみのあるデザインのキルティングのレザージャケットやベストを制作するなど、積極的なアプローチを行った。

 毛足の長いハンティングベストやサイドに切り込みの入ったツイードのジャケットを素肌に直接羽織るスタイルは、花柄のタペストリーがプリントされたダークカラーのデニムといった大きめのシルエットのスカートと程よいバランスが取れている。
 
 また、クリーム色のツイードにゴールドの刺しゅうを施したボディースーツに裾の広がった黒いコートを合わせたスタイルにも注目が集まった。一方で素足をあらわにして単体で着用された黒いツイードのボディースーツは、印象的な囲み目メイクと黒髪のウェーブスタイルによってインパクトのあるルックに仕上げられた。

 さらに、刺しゅうのモンテックス(MONTEX)とタッグを組んでカラフルなラインストーンを用いた幾何学的なお城のモチーフを制作し、ハンドバッグやカマーバンド風のベルトに装飾を施した。フリル付きの白いシャツにベールが付いた黒の円錐形の帽子を合わせ、黒のサテンのスカートの上からカマーバンドベルトを締めたスタイルは、子どもたちのプリンセス風のコスチュームのようにも感じられる。

 また主に単色でまとめられたデザインは、シャネル自身のミニマルなスタイルだけでなく、シュノンソー城のかつての城主たちからも着想を得ている。アンリ2世(King Henri II)の愛人で、その美貌と狩猟好きで知られるディアーヌ・ド・ポワチエ(Diane de Poitiers)は、黒と白の衣服のみを着用していた。またアンリ2世を政治面でもサポートしていた妻のメディシスは、常に黒い衣服を着用しており、白いフリルの襟をつけることもあった。

 ヴィアールはこうしたスタイルがシャネルのお気に入りであったことを踏まえて、裾がアシンメトリーに広がった細身の黒いコートに白い襟を付けることでポワチエとメディシスの両者にもオマージュを捧げたという。

 また、「シャネル」が子会社を通じて管理している刺しゅうのメゾン ルサージュ(MAISON LESAGE)のアーカイブからは袖に葉っぱの刺しゅうが施された半透明の白いコートを取り入れ、同じくメゾン ルサージュが手がけた胴体部分のボディスに赤の刺しゅうが施された黒いシフォンのケープに包まれたドレスもステージに登場した。そしてニットメーカーのバリー(BARRIE)は、城や花のモチーフをインターシャ編みで表現したセーターを手がけた。

 小さなパールが散りばめられたオフショルダーのツイードのドレスやCの文字を組み合わせた模様のアイボリーのキルティングのスカートスーツなど、ディテールに富んだ威厳すら感じられるデザインは深く感動するものであった。

 VIPゲストのクリステンは、「今回のコレクションに向けて、スコットランド女王のメアリー・スチュアート(Mary Stuart)の生涯をフィクション化したCWのドラマ『REIGN/クイーン・メアリー(REIGN)』のエピソードを一気に見て予習した。ドラマの舞台であるシュノンソー城にどんな人がどんな思いで住んでいたのかを学んだ。かつてこの城に住んでいた女性たちは芸術を愛しており、インスピレーションを受けることも、他者にインスピレーションを与えることも好きだった。私たちのキャラクターが誰なのかを、ドラマを見ながら想像していた」とコメントした。

 またブルーノ・パブロフスキー(Bruno Pavlovsky)=ファッション部門プレジデントは、「当初の計画と違うのはゲストがいないことだけだ。リアルショーでなくとも結果は同じになるように全てを詰め込んだ。コレクションは商業的にも成功した。新型コロナのパンデミックでいまだ旅行は難しい状況にあるが、人びとの心に届くコレクションになったのではないか。非常に特別かつユニークなシュノンソー城の装飾が起点となっている素晴らしいコレクションだ」とコメントした。

 新型コロナウイルスの世界的な流行が続く中で今回のコレクションを担当したサウンドデザイナーのミシェル・ゴベール(Michel Gaubert)は、ショーのフィナーレで“They Told Us It Was Hard, but They Were Wrong.(大変だったというのは嘘だった)”というアップテンポな曲を選曲した。

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