ラグジュアリーブランド経験者によるパリの急成長3ブランド バイヤーが支持する理由とは?

コラム

2018/4/7 (SAT) 09:00

 美術大学などを卒業して間もない20代前半のデザイナーにスポットが当たるロンドンとは対照的に、パリの若手デザイナーはラグジュアリーブランドで経験を積んだ者が多い。比較的保守的な考えが残るフランスでは、前衛的なクリエーションとともに、ビジネス面のバックグラウンドも要求されるようだ。緻密なマーケティングに基づいたブランディングや有力な生産ルートの確保など、経験によって培われた実績がバイヤーの評価に結びついている。デビュー間もなく世界の主要なショップ、ドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)やバーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEWYORK)などから声が掛かり、ジワジワとファンを増し続けている3ブランドを紹介する。

MELT

 フランス出身の女性デザイナーデュオ、エマ・ガルサン(Emma Garcin)とジャンヌ・ビーン(Jeanne Biehn)が手掛けるストールブランド「メルト(MELT)」。ともに「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」「エルメス(HERMES)」でテキスタイルエンジニアとして経験を積んだ実力者だ。「メルト」が使用するのは天然素材に限定し、エシカルをコンセプトに掲げる。ヒマラヤ産のヤクやチベット産のカシミア、自然で採取される染料など希少な素材を使用したストールは、ラグジュアリーブランドにも引けを取らないほど高品質だ。培った人脈によって獲得できたという生産ルートは、ネパールの伝統的な製法を継承する職人の手によって、糸から織り、仕上げまで全て手作業で作られる。日本では伊勢丹や高島屋、ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)など約20店舗で取り扱われている。「ネパールの伝統に、グラデーションカラーや大胆なフリンジなどフランス流のツイストしたデザインを加え、毎シーズン進化できるよう挑戦の連続だ。日本のバイヤーは私たちの挑戦に賛同し、比較的デザイン性の高いアイテムを支持する傾向にある」とジャンヌは語った。

ECOLE DE CURIOSITES

 フランス在住の日本人デザイナー、HANS ITOが手掛ける「エコール ド キュリオジテ(ECOLE DE CURIOSITES)」はシーズン毎に着実に販路を広げ、勢いを増す。パリの名門サンディカ校を次席で卒業し、マルタン・マルジェラ(Martin Margiela)自身が在籍した「メゾン マルタン マルジェラ(MAISON MARTIN MARGIELA)」でインターンを経験した後、「アーツ アンド サイエンス(ARTS&SCIENCE)」に勤めた。2017年春夏のデビューコレクションからドーバー ストリート マーケット ロンドンから声が掛かったという。北陸で7店舗を構えるメイクス(MAKES)のセレクトショップ、アイボリー(IVORY)の市村バイヤーは「初めてルックブックを見たとき、その世界観に強烈に惹かれた。服が持つ質感や色から、フランスのエスプリが香り立つようだった。今のムードを捉えているけれど、どこか懐かしささえ感じる不思議な感覚だ。実際に服に触れると、買い付けの指針にしている“洋服を愛する丁寧なものづくり”が感じられ、バイイングすることを決めた」と買い付けのきっかけとブランドの魅力について語った。「エコール ド キュリオジテ」生産はフランスにこだわり、数量に制限のあるビンテージ生地なども多用するためロットは少ない。いくつものショップから取引の提案があるため、今後は世界観とクオリティーを守りながら生産を増やしていくことが課題のようだ。

MONOGRAPHIE

 2017春夏コレクションでデビューした「モノグラフィ(MONOGRAPHIE)」は、シャツに特化したコンテンポラリーブランド。フランス出身のデザイナー、オード・カステージャ(Aude Casteja)はロンドンのプレスオフィスで働いた後「セリーヌ(CELINE)」のマーケティング部門に勤めたが、本格的に服作りを学ぶため、エスモードへの入学を決意した。オードはシャツを“ワードローブに欠かせない普遍的なアイテム”と定義し、毎シーズンデザインを手掛けるごとに「シャツに無限の可能性を感じている」と語る。ファースト・シーズンからロンドンのセルフリッジ(SELFRIDGES)やニューヨークのバーニーズ ニューヨークでの取り扱いが始まり、現在日本ではトゥモローランド(TOMORROWLAND)やリステア(RESTIR)が取り扱い、世界中で約35店舗まで販路を広げている。「多くのバイヤーからドレープの美しさと生地の良さを高く評価されている。生地は私のこだわりでもあり、イタリア製のコットンポプリン、生産はポルトガルの工場で、厚手のしっかりとした生地を採用している」という。今後については「シャツ以外にバリエーションを増やす予定はなく、シャツのエキスパートとして可能性を押し上げていきたい。『セリーヌ』では“チームとして機能することの重要さ”を学び、今に生かされている」と締めくくった。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける。

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