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サステナビリティって何? 専門家が答えます。番外編 世界が注目の環境保護団体エクスティンクション・レベリオンが訴える もう新品の服はいらない

 サステナビリティに取り組まない企業は存続できない――といわれる一方で、具体的に何をどうしたらいいのか分からないという声も聞く。そこで「WWDジャパン」11月25日号では、特集「サステナビリティ推進か、ビジネスを失うか」を企画し、経営者やデザイナー、学者に話を聞きその解決策を探る。今回は番外編として、今世界で注目を浴びている英国発の環境保護団体エクスティンクション・レベリオン(Extinction Rebellion以下、XR)のスポークスパーソン、サラ・アーノルド(Sara Arnold)とローラ・クラルプ・フランセン(Laura Krarup Frandsen)に話を聞いた。

72カ国に拡大するXRとは?

 2019年9月のロンドン・ファッション・ウイーク期間中、ロンドン中心部で「ロンドン・ファッション・ウィーク:安らかに眠れ」と書かれたプラカードを掲げた集団による大規模デモが行われた。この集団を率いたのがXRだ。同団体は18年4月に発足し、環境問題の危機を訴える集団デモを各地で行なっている。交通機関を麻痺させて逮捕者が出るなど過激な行動が賛否を呼んでいるが、現在72カ国で485の支部が存在し、その影響力は拡大中だ。

 XRにはファッション産業や音楽産業といった特定の文化産業をターゲットにした部門が存在する。ファッション部門のXRボイコットファッション(XR BOYCOTT FASHION)は、1年間新品の服を買わない#BOYCOTT FASHIONキャンペーンを行い、現在2526人が参加している。メンバーには、ファッションの専門学生やファッション業界に携わる人々も多い。

WWD:まず、あなた自身について教えて欲しい。

サラ・アーノルド(以下、アーノルド):現在33歳で、主な仕事はファッション・レンタルサービスのハイアースタジオ(HIGHER STUDIO)の運営だ。18年にXRが設立されてから、ファッション部門のコーディネーターとして関わっている。学生時代は、セント・マーチン美術大学(Central Saint Martins)でファッションデザインとマーケティングを勉強していた。当時は今ほど社会のサステナビリティへの関心は高まっていなかったが、在学中からファッション産業が環境にかける負荷に関心があった。自分のファッションブランドを持つことが夢だったが、サステナブルなやり方が見つからず、大学卒業後さらにインペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)でビジネスを勉強した。そこで循環型経済に興味を持ち、ファッションのレンタルサービスに行き着いた。

ローラ・クラルプ・フランセン(以下、フランセン):私は今年の7月にロンドン芸術大学(University of the Arts London)を卒業し、ウィメンズウエア科の修士号を取ったところだ。今はXRのコーディネーターとして活動している。

WWD:環境問題に関心を持ったきっかけは?

アーノルド:正直、何か大きなきっかけがあったわけではない。思いつくのは、小さい頃宇宙飛行士になりたかったこと。いつも地球を一つの星として捉えていて、地球の大気が特別なものだと気がついていた。インドネシアで生まれて、海の近くで育ったことも影響しているかもしれない。小さい頃から学校では地球温暖化について教えられていて、私にとってはいつも大きな関心事だった。

WWD:今のファッション産業の問題は何だと考える?

アーノルド:まず、大量生産。企業は広告を使って、必要のないものをいると思わせている。今持っているものを捨てて新しいものを買わせるトレンドのシステムにも関係している。もう一つの問題は、服の生産におけるコストの問題だ。労働もそうだが、海に流れ出るマイクロプラスチックや汚染水など、環境にさまざまなかたちで負担をかけている。経済や社会のシステムも関係している。私たちの生活はこのシステムの上に成り立っているために、カタストロフィーを引き起こしているのにもかかわらず、なかなか抜け出せなくなってしまった。

XRが提示する3つの要求

WWD:XRのゴールは何か?

アーノルド:私たちには3つの要求がある。1つ目は、政府が”気候と生態系の危機”を宣言すること。2つ目は25年までに温室効果ガスの排出量ゼロを達成すること。30年にデッドラインを設定している国もあるが、イギリスは歴史的に見て今の環境問題を引き起こした国でもあるので、この動きをリードする責任がある。3つ目は気候と生態系に関する市民会議を発足させること。

WWD:XRボイコットファッションのゴールは?

アーノルド:ファッションの分野からこれら3つの要求を達成する手助けをすること。XRでは、政府への働きかけだけでなく、ファッションやアートなどのカルチャーにおけるアプローチも重要だと考えている。

WWD:XRのメンバーは何人?

フランセン:これはムーブメントなので明確な数字は分からない。もしXRの活動に賛同しているのであればXRのメンバーと言ってよいと思う。ただ、プロテストを行うたびにその規模は拡大している。

WWD:#BOYCOTT FASHIONキャンペーンを始めた理由は?

アーノルド:地球温暖化の現状の深刻さを理解する必要があると思ったからだ。地球の平均気温は上昇していて、この先予想されている1.5度から2度上昇してしまえば悲劇的な現実が待っている。これ以上二酸化炭素の排出量を増やすことはできない限界にきている。そこで私たちがすべきことは、環境を再生し、温暖化の速度をできるだけ遅らせることだ。一部の国では、温暖化の影響で十分な食べ物を作るための土地がなくなっているのにもかかわらず、その貴重な土地を洋服の生産に使っている。このキャンペーンは、ファッション業界にもう限界がきていることを知らせるためのものだ。また、私たちは膨大な数の服を生産していて、もう十分に持っているということを人々に気がついてほしかった。すでに生産をしたものを循環させれば、もう私たちに新しい服はいらないはずだ。

求められているのは新品の服ではなく、緊急処置

WWD:あなたたち2人は、ファッションを勉強していたというのだからファッションを愛していると思う。以前はどれくらい新品の服を買っていた?

フランセン:もちろん、ファッションは大好き。確かにもうすでにたくさん服は持っているけど、ここ3年半以上は新しい服を買っていない。このボイコットキャンペーンに参加する前から、同じことをやっていたことになる。服を買うとしたらチャリティーショップや古着店だけ。

アーノルド:私も服を持ちすぎている自覚はある。ワードローブを見直したら、冬のコートはこの先一生買わなくてもいいくらい持っている。私にとって最も特別なのは「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」で、買いたくても1年に2〜3着くらいしか買えなかった。10代の頃はファストファッションをよく買っていたけれど、18歳になった頃から買い方を変えた。ドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)で働いていたこともあって、本当に好きだと思えるものだけを買うようになった。今は服を着たいとは思うけど、所有したいとは思わなくなった。だから、自分でファッションレンタルサービスを始めた。

WWD:いらなくなった服はどう処分している?

アーノルド:適切に処分するのは本当に難しい。個人的には、友だちへの寄付が一番多い。イギリスではチャリティーショップに寄付するのが一般的だけど、実際はチャリティーショップに寄付された古着のうち12%しか売られていない。残りはアフリカなど他の国に送られて、現地のテキスタイル産業を脅かしている。例えばエチオピアはコットンの産地で、コットンをイギリスに輸出している。イギリスは服を作り、いらなくなった服をまたエチオピアに送り返している。おかしな話だ。私たちが服を処分するときには、最終的にそれらがどこに行くのかをよく考えなければいけないと思う。

フランセン:私は極力処分をしない。私のワードローブは決まっていて黒しか着ない。スタイルが決まっているから、破れたりしない限りは処分しない。チャリティーショップでも買うけれど、あまり寄付はしないようにしている。

WWD:トレンドは全く気にしない?

フランセン:トレンドは最も避けるべきこと。

アーノルド:私が「コム デ ギャルソン」を好きな理由は、トレンドに左右されないから。デザイナーの川久保玲はファッションそのものや身体にアプローチしているから、彼女のアイテムを着るとトレンドなんか気にするなと教えられている気になる。

WWD:「コム デ ギャルソン」も毎シーズン新しいコレクションを発表している。新作が欲しくなることはない?

アーノルド:私もこれまでは、徐々にファッション業界が変わってくれればそれでよいと思っていた。けれどIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の「1.5度特別報告書」が発表されて、本当に緊急事態なのだと気がついた。緩やかな変化ではなく緊急処置が必要なのだ。例えばあなたの家が火事になったら、窓ガラスを割って逃げ出すことをまず考えるだろう。ファッション業界は、これまでのルールを破ることも犠牲を伴うこともためらってはいけない。「コム デ ギャルソン」のショーを初めて見たとき、感動のあまり涙したことを覚えている。しかし、これは緊急事態なのだ。私たちが今必要なのはラグジュアリーファッションではない。

ファッションをコミュニケーションのツールとして使ってほしい

WWD:ロンドン・ファッション・ウイーク中に行ったデモの反響は?

フランセン:私たちは「ファッション・ウイークを中止せよ」と呼びかけた。ネガティブとは言わないまでも、ショックを受けた人は多かったようだ。ファッション業界の人たちからは行きすぎた主張だと思われた。けれど、確実に議論を巻き起こしたと思う。

アーノルド:抜本的な改革を求めたから確かに批判はあった。でもその後メディアはファッション・ウイークに代わるものは何か、どうやったらシステムを変えられるのかについて取材を始めて、みんなが考え始めた。ファッション・ウイークの中止自体に賛成してくれなくてもよい。一度立ち止まって考えてくれさえすれば。

WWD:最近では、ファストファッション企業もサステナビリティへの取り組みを始めている。それについてはどう思うか?

アーノルド:サステナビリティをどう定義するかによると思う。ファストファッションブランドがオーガニックコットンを使用したからといってサステナブルではないと思う。XRとしては、地球上の生き物を維持することが大事だと考えている。サステナビリティとは、いかに地球を次世代に残すかということ。今ファストファッションブランドは、私たちに地球を残す手助けをしているのか?その逆だろう。サステナビリティとはどんな素材を使うかだけではない。持っている影響力そのものを、いかに地球を守るために使うかだ。

WWD:一部ではXRの活動が過激すぎるとの批判もあるが、それについてはどう思うか?

アーノルド:過激な手段で訴えるしかないほど事態は切迫している。この30年間、意味のある取り組みを行ってこなかったつけが回ってきている。このままでは自分や自分の子どもが生きている間に悲劇は起こる。

WWD:ファッション業界に何を期待する?

アーノルド:今あるもので間に合わせること。ファッションをコミュニケーションのツールとして使うこと。緊急事態なのだというメッセージをファッション通じて多くの人に伝えてほしい。