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サステナビリティって何? 専門家が答えます。連載Vol.12 循環型社会へのシフト、カギは「正しいを楽しく」 日本環境設計・岩元会長

 サステナビリティに取り組まない企業は存続できない――といわれる一方で具体的に何をどうしたらいいのか分からないという声も聞く。そこで「WWDジャパン」11月25日号では、特集「サステナビリティ推進か、ビジネスを失うか」を企画し、経営者やデザイナー、学者に話を聞きその解決策を探る。今回は、ケミカルリサイクル技術をコアとしながら、伊藤忠商事や三菱商事、豊島などの商社からも資金を集め、循環する仕組み作りに邁進する日本環境設計の岩元美智彦取締役会長に聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):アパレル産業が循環型社会にシフトするカギとは?

岩元美智彦取締役会長(以下、岩元):日本では年100万トンとも言われる大量の衣類ゴミが出ている。これはアパレル製品なんかよりずっと重い工業製品である冷蔵庫や洗濯機などの家電ゴミのを合計した量よりもずっと多い。でも服なんて、ポリエステルなんかは技術的にはケミカルリサイクル(編集部注:廃棄物から原料段階まで溶かして再生すること。石油から作るものとほぼ同等のポリエステルが再生できる)技術がほぼ確立されているから、本当はもう石油を使う必要なんてないんですよ。だけど難しいのは、回収する仕組み作りなんです。

WWD:技術があっても、回収ができないと?

岩元:集める仕組みって難しいんですよ。売るのだって難しいけど、回収するのはそれ以上です。環境のために協力してくれる人ももちろんいます。でもそういった人たちっていろんな所にばらばらと薄く広がっていて、回収を呼びかけても非常に効率が悪い。例えば「環境のためにみんな協力してよ」って言っても、まとまった量を集めるのがとても難しいんですよ。だからポイントは「正しいを楽しく」。例えば「デロリアン動かすのに要らない服を持ってきてください、持ってくると乗れて写真が撮れますよ」なんて呼びかけると、1時間とか2時間待ちになるくらい人が集まる。

WWD:1時間、2時間待ってもらうときに環境問題について説明すれば、問題への理解も深まりますね。

岩元:その通りです。参加すればリサイクルへの意識が高くなるし、自分たちの持ってきた廃棄物の一部が原材料になって素敵な商品になったら、参加者はそれを買いたくなるし、楽しい気持ちにもなる。そうなると好循環ですよね。

WWD:仕組みづくりが大事だと。

岩元:それもありますが、ハブになる存在が必要なんです。循環するための設計をまずつくって、立ち上げて、回す。小さくてもいい。ケミカルリサイクルの技術もそうですが、一個一個はできるんだけども、結局回らない。糸から服、そして物流まで、アパレルのサプライチェーンって非常に長いので、どこか一つでも欠けるとうまく回らない。だから誰かがハブになって業界とかいろんなところを調整をして、条件を整えて、一回ぐるっと回す。でも一回ぐるっと回せば、次には速く大きく高く回る。うまく回りだすと経済、つまりお金にもなってくる。

WWD:日本環境設計には、出資者には伊藤忠商事と三菱商事、豊島などの本来はライバルであるはずの企業が並んでいる。

岩元:僕たちがハブになるためには、いろんな接点が必要になる。そのため商社の持つサプライチェーンは非常に重要です。商社が参加することで、取り組みの幅は確実に広がっています。

WWD:岩元会長から見て、サステナビリティの実現のカギになる技術は?

岩元:ケミカルリサイクル技術だと思います。作った製品を回収して、それを原材料にしてまた製品にするのが、僕は本流だと思います。ペットボトルは、ペットメーカーが売って回収してペットボトルにしていかないとバランスが崩れるじゃないですか。アパレルに関して言えば、ポリエステルをベースに循環するのが一番理想に近い。ある意味でアパレル素材の中で完全循環のできる原材料はポリエステルが一番効率がいいし、実際にポリエステルのケミカルリサイクルはCO2の排出量も低い。ポリエステルは加工しやすく、いろんな機能を付加もできる。

WWD:循環型社会が実現すると、何が変わるのでしょう?

岩元:最終的には戦争やテロをなくすことができる。戦争の本質的な原因って、石油などの地下資源の争いですからね。僕らは廃棄物を地上資源と呼んでいる。廃棄物を資源として循環する仕組みをつくれば、子どもたちに笑顔を取り戻せるんですよ。