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サステナビリティって何? 専門家が答えます。 連載Vol.1 ステラ・マッカートニーに聞くファッションショーの是非

 サステナビリティに取り組まない企業は存続できない――とはいうものの、具体的に何をどうしたらいいのか分からないという声も聞く。そこで「WWDジャパン」11月25日号では、特集「サステナビリティ推進か、ビジネスを失うか」を企画し、経営者やデザイナー、学者に話を聞きその解決策を探る。今回はステラ・マッカートニー(Stella McCartney)にファッションショーの是非を聞く。

WWD:ショーは必要だと思う?1回限りのショーのために大がかりなセットを作り、そのために多くの人が飛行機に乗ってやってくる。環境負荷が高いとして反対運動も起こっている。またスウェーデン・ファッション・カウンシルは「未来のために(due to the future)」としてファション・ウイークをキャンセルした。

ステラ・マッカートニー(以下、ステラ):まさにそれを自問自答しているわ。ショーには目的があるから必要性はあると思う。直接見るという経験はすばらしいことだし、ファッションには夢があってショーの演出は絵になるから。

WWD:サステナビリティの視点からもそう思う?

ステラ:サステナビリティという観点から見れば、必ずしも必要だとは思わない。でもショーのやり方はいろいろあるし、経験としては楽しめる場所だと思うの。20年春夏の「ステラ マッカートニー」のショーはサステナビリティを全面に打ち出したのだけど、ショーは私にとってメッセージを発信することができる場でもあり、多くの人に直接伝えられるからショーは重要なの。

WWD:ではファッションサイクルが早くなっていることについてどう思う?かつては年2回のコレクションだったのが今は4回になり、加えてカプセルコレクションまである。

ステラ:モノが多過ぎるし、人もモノも溢れている。みんな不安を抱えているし、ストレスもプレッシャーも増えているのに木が足りなくなっているし、地球を守ろうとしている人はいるけれど、それに対して政府の政策が十分ではない。多くの動物が殺されて、いろいろなものが“エクストリーム(極度)”になっているわよね。

でも今、子どもたちがこの危機に対して声を上げている。彼らの声に対して、「ステラ マッカートニー」ブランドとしての回答をコレクションを通して伝えたていきたい。それと同時にサステナブルな価値観を共有したいと思っているわ。私たちは動物を使ったモノを作っていないし、木も倒していない。それは「ステラ マッカートニー」を通して、サステイナブルな答えを出しているということ。

WWD:もちろん「ステラ マッカートニー」の製品自体はすごくサステナブルになっている。でも今のファッション業界の仕組みがサステナブルとは思えないのだけど。

ステラ:確かにファッションの構造は変わっていないわね。素材が製品になるまでに1年半から2年くらいかかるのでそんなに急には変わらない。さまざまな人がやっとそのことに気づき始めているけれど、実践している人は少ない。ファッションはさまざまな産業の中でも特に地球に害を与えている産業だから、願わくはそういう結果が出ないように私たちは努力をしなければいけないけど、“本物”を実践している人は少ないわね。

WWD:LVMHモエ・ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)と組むことになったが、現状と今後の目標は?

ステラ:とても可能性があると思うし、ファッション業界に対してさまざまなシステムを提案できると思う。LVMHはやっと(サステナビリティに関して)可能性のあるブランド(「ステラ マッカートニー」)を見つけてくれた。LVMHにもそういう時代が来たんだと思った。

私は同社のアドバイザーも務めるから、これまでの経験を通して社内のコンディションを整え、さまざまなことを変えていければと思っているわ。

【エディターズ・チェック】
ショーはその派手さゆえ、今やり玉に挙がり始めているが、それが動物愛護団体の“反毛皮”アピールと重なる。象徴的だが絶対的必要性が低く、畜産全体での割合も小さいからだ。2年前に岡田千尋・認定NPO法人アニマルライツセンター代表理事に取材したときに「毛皮の運動が象徴的に扱われているが、実は、畜産に多くの時間を費やしている。毛皮は必要ないと考える人も増えてきたが、肉はというと難しい。そのため、畜産において動物福祉を目指している」と話していた。衣類の消費者に届くまでの環境負荷を数値化した場合、約9割がサプライチェーンが占め、ブランドが行うファッションショーや店舗運営、輸送などは全体の1割程度。だが、ファッション業界自体の変革が求められている今、その象徴であるファッション・ウイークやショーの在り方は今後さらに問われることになるのではないか。