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バーバリーが古着EC企業と手を組んだ背景 鈴木敏仁のUSリポート

 アメリカ在住30年の鈴木敏仁氏が現地のファッション&ビューティの最新ニュースを解説する連載の第3回目は、バーバリーと提携した古着ECのザ・リアルリアルとの提携。消費者のサステナビリティの高まりを背景に、かつては考えられなかった合従連衡が進んでいる。

 高級中古ファッション商品のEC企業、ザ・リアルリアル(THE REALREAL)が英バーバリー(BURBERRY)と提携した。バーバリーで購入した商品をザ・リアルリアルで売ることをお客に勧め、その見返りとしてバーバリーが店舗でパーソナルなサービスをお客に提供するとしている。

 バーバリーは昨年、売れ残った2860万ポンド(約40億円)相当の商品を焼却処分していたことがメディアに報じられて大きな批判を浴びた。バッシングの後、今後処分はしないと発表したもののブランドイメージが悪化しており、ザ・リアルリアルとの提携はイメージ回復を狙ったものと推測できる。見返りとしてのパーソナルなサービスがいったいどれだけお客にアピールするかは分からないが、循環型経済に参加するという意思表明はしたといったところだろう。

百貨店との関係深める古着D2C

 このザ・リアルリアルは6月に上場している。本稿執筆時点における市場総額は18億ドル(約1962億円)で、アバクロンビー&フィッチ(ABERCROMBIE & FITCH)の10億ドル(約1090億円)を超えてしまっている。証券取引所に提出された資料によると、昨年度の総取扱額は7億1100万ドル(約774億円)、売上高は2億700万ドル(約225億円)で、売上高に比して市場総額が大きく、ウォール街からの期待がいかに大きいかが分かる。

 ネットオンリーのD2C企業なのだが、商品鑑定をするオフィスを9カ所オープンさせていて、そのうちの3カ所は商品を並べて売る店舗も兼ねている。私はニューヨークのソーホー店舗を9月に訪問した。店内はお客でごった返していて、中古市場の勢いというものを肌で感じることができた。有名ブランドの衣料品、ハンドバッグ、アクセサリー、宝石などの商品が並び、一見すると高級ブティック的なおもむきだ。しかし商品を子細に見ると、とりわけバッグ類は中古感を醸し出していて、普通とは違うのだなということに気づく、そんな店である。

 ザ・リアルリアルだけではない。スレッドアップ(THREDUP)、ポッシュマ(POSHMARK)、ファッションファイル(FASHION PHILE)など有名ブランドの中古を取り扱うEC企業は数多く生まれ、存在感を増している。

 このうちスレッドアップは百貨店のメイシーズ(MACY'S)とJ.Cペニー(J.C. PENNY)の2社と提携し、専用の売場を確保することを発表している。ファッションファイルに投資したのが高級百貨店のニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)で、年末までに売場を導入するとしている。

 アメリカの百貨店はどこも業績が長らく低迷しており、売り場をどう活性化するかは悩みの種でとうとう中古にまで手を出したといったところなのだが、主要大企業が来店客数アップに利用するほど中古EC企業がメジャーになりつつあるのだ。

若年層のエコ意識が地殻変動に

 アメリカにはガレージセールという習慣があり、また寄付が税控除となることから不必要なものを寄付する人が多い。その寄付を再販売するサルベーションアーミー(THE SALVATION ARMY)やグッドウィル(GOODWILL)という団体が各地にたくさん店を展開していて、古いものが市場で流通する循環型経済がもともと存在している。また個人間売買のプラットフォームとしてイーベイ(E BAY)という大きな存在もある。

 中古品の売買が普通の生活に溶け込んでいることが中古EC市場のここ数年の急速な伸長の土台となっていそうなのだが、一般的には若年層の強いエコ意識が市場の成長を支えていると説明されている。

 例えばフォーエバー21(FOREVER21)の破綻の理由について、創業一族による閉鎖的な経営方式や急速なグローバル展開にマネジメントが追いつかなかったことだけでなく、サステナビリティに対する取り組みに鈍感だったことで若年層が離れたことも一因と説明するアナリストがいて目を引いた。こういう論調が出るほどアメリカの若年層の意識はエコに向いていて、新興のD2C企業のほとんどが何らかのサステナブルな取り組みを企業活動に取り込んでいるといっても過言ではないほどだ。

 大量生産と大量消費で、ガソリンをばらまいて走る大型車を乗り回す、これがアメリカ人のライフスタイルの昔のステロタイプだった。しかし、この10年ほどで大きく様変わりしたと私は思っている。アメリカで生まれ育った私の若い娘たちの言動を客観的に観察している私は、それを目のあたりにしている。サステナビリティやクリーンといった言葉が彼らに刺さるのである。

 調査企業によると中古品流通市場は2023年までに510億ドル(約5兆5590億円)規模になるだろうと予測されている。そのうちの中古衣料市場に関しては10年以内にファストファッションを超えるだろうという予測もある。裏方のような存在ではもはやなくなりつつあるのがアメリカの中古品市場なのだ。

鈴木敏仁(すずき・としひと):東京都北区生まれ、早大法学部卒、西武百貨店を経て渡米、在米年数は30年以上。業界メディアへの執筆、流通企業やメーカーによる米国視察の企画、セミナー講演が主要業務。年間のべ店舗訪問数は600店舗超、製配販にわたる幅広い業界知識と現場の事実に基づいた分析による情報提供がモットー