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香取慎吾が語る2020年東京オリパラユニホーム選考 白熱の舞台裏

 2020年東京オリンピック・パラリンピック組織委員会が7月19日に開いたフィールドキャスト(大会スタッフ)とシティキャスト(都市ボランティア)のユニホーム発表会見に、香取慎吾が登壇した。選考委員の一人である香取はファッション通としても有名で、委員にはほかにも座長を務めるファッションジャーナリストの生駒芳子やデザイナーのコシノヒロコら業界の“大物”も名を連ねる。選考は昨年の11月にキックオフし、白熱しながら何度も話し合いを重ねたという。いつになくファッション濃度高めで行われた選考の裏側を香取に聞いた。

WWD:今回発表されたユニホームの感想をあらためて教えてください。

香取慎吾(以下、香取):着心地よし、暑さ対策よし、デザインもよしという感じです。しかし、発表の時に僕が着てステージに上がることになるとは思いませんでした(笑)。

WWD:似合ってます!デザインのどんなところに日本らしさを感じますか?

香取:グラデーションもそうですけど、清涼感のあるこの藍色でしょうか。こういった選考会に参加させてもらうのは初めてだったので、数型から「アナタはどれがいい?」ぐらいなのかなと思っていたんですが、もう全然違っていて。半年以上かけてとんでもない数から選んでいきました。

WWD:オリンピックとパラリンピックをファッションで盛り上げるには何が必要でしょう?

香取:このユニホームも、暑さ対策や着心地はもちろん、“かっこいい”や“かわいい”、“おしゃれ”といった見た目の部分まで細かく話し合って、ファッション好きの僕としてはうれしかったですね。過去にボランティアに参加したことがある方々のお話を聞くと、「大会後にボランティアのユニホームをもらえることになっても、これはべつに要らないかなと思うことも正直ある」とか、「最初にカッコ悪いなと思うと、人前で誘導したりするのも心が引けちゃう」という意見を聞いて、欲しいと思ってもらえることも重要だったり、会場や街中でこのユニホームを着るわけですから、その時に胸を張れる誇らしさも大切なんだと。経験者からそういう気持ちもあると言ってもらえたことで、会議の意識も高まりました。

WWD:みんなの意見は分かれませんでしたか?“かっこいい”や“かわいい”の基準がそれぞれだったり……。それとも、ある程度同じ方向が見えたのでしょうか?

香取:そこは座長の生駒さんとコシノさんがズバッと(笑)。話がうまくまとまらない日はもうやめにしようということもあったり。でも日程的に困る人もいるじゃないですか。それでも今度は、会議の日程が合わないからという理由で決めていいものなのか、という話し合いをしたり。そういうこだわりが僕は好きでした。

WWD:ファッションは自分の個性を表現するというところがありますが、ユニホームはみんなが同じモノを着ます。年代も性別も体格も違うみんなが同じモノを着るという目線と、誰かをイメージしてその人に似合うモノという目線――。ファッションが好きな香取さんとしてはどう意識しました?

香取:そう言われてみると、いろんな人が同じモノを着るという目線で選んだかも知れないですね。今、「ヤンチェ_オンテンバール(JANTJE_ONTEMBAAR)」(スタイリストの祐真朋樹と共にディレクターを務めるショップ)をやっていますが、そっちは自分の好きな形や色、アートなどを落とし込んで、それを買ってくれる人がいたらいいなという目線だけど、今回に関しては11万人が着ると決まっているので、みんなが同じモノを着るという目線をすごく意識したと思います。

WWD:11万人が着るという汎用性を突き詰めていくと、凡庸なモノになっていくというか、かっこいいモノにしづらいなと思うことはなかったですか?

香取:それがこの委員会にはなかったんです。すごいですよ。だから本当はもっと早い日程で決まるはずだったのに、決まらなかったんだと思います。

WWD:妥協できなかったと。

香取:かなりファッション性を重視したと思います。グラデーションの位置で透け感も変わってくるだとか、柄に用いたエンブレムの位置でスタイルの見え方も変わってくるだとか――かなり細かいところまで話し合って、本当にみんなで洋服のデザインをしている感じでした。ボランティアの方に対しての暑さ対策だけで話が進んでしまいそうですが、そうじゃなくて色もデザインも、体のラインの見え方も。その部分の方が時間を割いたかも知れません。

WWD:“今っぽさ”も大事ですか?

香取:うーん……。当然それは必要だと思うんですけど、例えば、実際にボランティア活動をしてもらう上で、この人がシティキャスト(都市ボランティア)でこの人がフィールドキャスト(大会スタッフ)ということが分かんなきゃいけないんですね。応援のためのユニホームを着てきている人もいるので、公共の場でスタジアムの場所を聞こうとしたときにどの人がシティキャストなのかが分かる――、そういう役割のことも気にしなきゃいけない。最後は(今回決まった)どちらのデザインがフィールドキャスト、シティキャストに適しているのかという議論にもなりました。もし逆だと、スタジアムの客席からスタンドエリアを見た時に競技と絡み過ぎるだとか、街なかで埋もれてしまうだとか。

WWD:すごい。まずは機能面でのクレームが来ないように、というのが第一になりそうなイメージですが。

香取:機能と見た目、両方同じスタートで同じように進んでいったと思います。仮に機能の方に偏るとファッション的には違うんじゃないかとか。

WWD:ちなみに香取さん自身が興味のある競技は?

香取:そうだな……。オリンピックだとサッカーですかね。ワールドカップで日本代表を応援させてもらっていたりもしたので。パラリンピックだと卓球でしょうか。いろんな選手とお話させてもらったり(香取は日本財団パラリンピックサポートセンターのスペシャルサポーターも務める)、実際に競技を体験させてもらう機会もあったりします。僕はスポーツをほとんどしないで育ったんですけど、卓球はなんとなくやったことがあるからすごさが分かる。特にパラリンピックとなると知らない競技もあったりするんですね。その中で卓球はほとんど変わらず、ルールも分かりやすいんです。

WWD:香取さんといえばアートにも積極的に取り組んでいますが、アートとスポーツの共通点はなんだと思いますか?

香取:僕は日本財団パラリンピックサポートセンターに壁画を描かせてもらっているのですが、それがパラリンピックとの出合いなんです。そのときに「ロンドンのパラリンピックは盛り上がったけど、国によってはパラリンピックになると客席が埋まらないところもある。だから東京大会ではオリンピックと変わらないようにパラリンピックも盛り上げたい」と。そういう話を聞いた上で壁画を描き始めたんです。その思いを壁画に込めているし、パラリンピックのいろいろな活動を少しでもたくさんの人に知ってもらいたいと思っています。質問の答えとは少し違うかも知れませんが、個人的にはそういう思いがあります。

WWD:過去のインタビューで「SNSでパラリンピックの魅力をどんどん発信していく」と言われていましたが、大会を盛り上げるために香取さんなりに考えていることは?

香取:直近だとパラリンピックのチケット販売ですね。オリンピックのチケットは僕も応募しましたけど、全部外れました(笑)。あれだけチケットが完売しているニュースを見たので、パラリンピックのチケットも同じように話題になってほしいなと思います。自分の何かを宣伝するとき以上の勢いで、SNSを活用して応援しますよ。