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「建築は今後、もっと洋服に近づく」 隈研吾が自身の展覧会を解説

 東京ステーションギャラリーで3月3日、建築家・隈研吾にフォーカスした展覧会「くまのもの 隈研吾とささやく物質、かたる物質」がスタートした。隈の30年間にわたるプロジェクトを素材ごとに分類して展示する珍しい展覧会で、会期は5月6日まで。先に行われた内覧会には隈本人が登場し、展示についての解説を行った。

 会場には竹から始まって木や紙、石、金属など10の素材ごとにセクションを作り、過去の作品模型や写真、実物の一部素材などを展示している。隈は「工業化社会の象徴とも言えるコンクリート建築の時代に対抗して、気付けばいろいろな素材と格闘してきたんだな」と振り返る。「材料は五感全部に訴えてくる」と隈が強調するように、会場には素材の匂いが満ちている。エントランスの竹と木の匂いは非常に印象的だ。会場では体験できないが、1番目に展示してある「光州デザインビエンナーレ」の竹の作品も、本来その上を歩けるようになっており、歩くと竹独特の音が鳴るのだそう。

 そんな内覧会の中で一番気になったのが、“膜・繊維”というカテゴリーだ。会場の解説では「十二単というファッションが存在したように、日本では薄い繊維のレイヤーを重んじる文化があった」と“膜・繊維”における建築とファッションの類似性を示しており、隈本人も「編む行為がもっとも純粋な形で行われると、布が誕生する。布のようなやわらかくてふわふわした建築に今一番興味がある」という。内覧会の最後には「建築は今後、もっと洋服に近づくだろう」と話していたが、彼の中にはどんな構想があるのだろうか。

 こうしたアプローチからもわかるように、彼は建築家であり、ある意味、素材の研究家でもある。運べる建築を求めてできた紙の茶室や15個の傘を組み合わせることで空間になる避難用シェルターなど、展示内容からはその一端がうかがえる。また、研究においてはその土地ならではの素材の使い方を学ぶらしく、「世界中を回って、それぞれの土地の専門家に素材の使い方を教えてもらう。そうして新しい建築が出来あがることが楽しみでもある」と話す。これこそが、隈が提唱する環境に溶け込むような“負ける”建築の象徴なのである。

 ちなみに、今回の展示では建築物自体はあまり大きくフィーチャーされていない。そもそもの構造だったり素材の質感の提示がメーンとなっている。だからか、見ていて非常に興味深い幾何学模様や照明が生み出す予期せぬ陰影がいたるところに存在しており、ファッション・デザイン志向の人にとっては、そういった視点でも楽しめるはずだ。

■くまのもの 隈研吾とささやく物質、かたる物質
日程:2018年3月3日〜5月6日
時間:10:00〜18:00
定休日:月曜日(4月30日を除く)
場所:東京ステーションギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1
入場料:一般 1100円 / 高校・大学生 900円 / 中学生以下 無料