実店舗とのシームレスな連動とECショップの内製化
今年9回目を迎えた弊紙のEC特集のテーマは、ずばり“儲かる直営ECサイトの作り方”だ。さまざまな取材とEC担当者へのアンケートで見えてきたのは、ファッション企業に今まさに求められているのは、自社らしさを見つめなおし、ECで、あるいはECと実店舗の両方でいかに儲けるか、だと感じた。
EC特集は基本的に、ファッションECを取り巻く環境を取材で掘り起こしながら、視点はアパレルのEC担当者に置くというやり方をとってきた。7月に実施したEC特集ではさらにEC担当者の視点に近づくため、担当者にアンケートを実施した。そこで見えてきたのが、実店舗とのシームレスな連動とECショップの内製化という2つの動きだった。
ECと実店舗のシームレスな連動については、この特集で4年前から取り上げてきた。当初在庫の一元化からスタートしたこの動きは年々進化し、着実にファッション業界に根付いている。例えば自社ECとECモールの在庫一元化はささげ(撮影・採寸・原稿の頭文字を取ったもの)データや商品マスタの共通化など、両者の間で必然的に効率化が進んだ。ECの在庫一元化の次のステップであるECと実店舗の在庫連携も、テクノロジーとアナログを組み合わせた手法が効果をあげつつある。さらに資本力が大きく、EC売上高が100億円を超えるような企業は、両者を統合するオムニチャネル対応の基幹システムの導入に踏み切る企業が続々と登場している。また、商品管理面だけでなく、顧客情報面でもすでに多くの企業がECと実店舗のポイントカードを一元化。購買履歴をベースにしたメールマガジンなど地道な販促を行い、売り上げにつなげている。
こうした一元化のゴールはECと実店舗が一体化し、さまざまな施策を柔軟に打てるようになることだ。その意味では今年、注目すべき新サービスが登場した。これまで多くの企業にとって、シームレス化の最大の悩みは、ECと実店舗でお互いにシナジー効果を生み出す手法が見つからなかったことだ。例えば販売員のコーディネートスナップは閲覧率も高く、かつ購入にもつながるECで最もパワフルなコンテンツの一つだが、ECで売り上げにつながったとしても販売員へのインセンティブにつながらず、逆に実店舗のコストや負担増になっていた。今回バニッシュ・スタンダードが開発したサービスは、販売員経由のEC売り上げをインセンティブとして運用でき、しかも従来に比べ手間と時間を大幅に削減したものだ。この仕組みが発展すれば、これまで見えてこなかった販売員の店頭での接客ノウハウや作業が、売り上げにどれだけ貢献しているのか可視化できる可能性もある。売り上げの貢献率を何でも数値化できるEC発のノウハウが、販売員のモチベーション向上につながり、実店舗を活性化する新しい流れが見えてきた。