ファッション

“この瞬間のドキュメントを届けたい”「オリミ」折見健太の原宿で育んだクリエイションをたどる

古着や国内外のデザイナーズブランドを独自の視点でセレクトするショップ「ジ・エレファント(THE ELEPHANT)」が、10月23〜25日に「ナマチェコ(NAMACHEKO)」のアーカイブ作品を展示・販売するポップアップを開催する。同店のファウンダーである折見健太氏はデザイナーとして自身のブランド「オリミ(ORIMI)」も手掛け、「東京ファッションアワード 2027」でもデザイナー賞を受賞した。折見氏に自身のファッション遍歴や、2026−27年春夏コレクションでのインスピレーションについて聞いた。

古着店からコレクションブランドへ

WWD:10代後半から原宿のファッションシーンに身を置いてきた。現在のクリエーションには、これまでのキャリアがどのように反映されているのか。

折見健太デザイナー(以下、折見):今のコレクションには、10代後半の頃から続けてきたことの集積が反映されていると思う。一般的には、デザイナーとして服を作るところから始まるのかもしれないが、僕の場合は、ショップスタッフから始まったこれまでのキャリアで経験してきたことが一つになって、コレクションに表れている感覚だ。

WWD:20代前半は古着屋の「ケシキ(KESHIKI)」で働いていたが、そういった部分も関係があるのか。

折見:古着が好きで、特にヨーロッパの古着に引かれるのは変わらない。アメリカの古着には合理的なものが多い一方、ヨーロッパの服には、機能だけを考えれば必要のないデザインが入っていることもある。そうした合理性の中にある少しの無駄に惹かれる。そういうものが「オリミ」のデザインにも影響している。

WWD:ショップの運営とブランドのクリエイションは、どのようにつながっているのか。

折見:ショップから始まったということもそうだし、僕のキャリアそのものが服作りにつながっている。「ジ・エレファント」と「オリミ」は、どちらも自分にとって欠かせないものだが、役割は少し違う。オリミは、できるだけ個人的なことや作家としての部分を表現する場所。一方でジ・エレファントは、いろいろな個性が集まって、一つのコミュニティーを作る場所だ。物理的に人が集まれる場所があることで、みんなで何かを共有できる。両方があることに意味があると思う。

スタンダードな服に宿る、わずかな違和感

WWD:東京コレクションのランウエイでは“プロパリー・ドレスト(Properly Dressed)”をテーマに掲げた。どのような問題意識から生まれたのか。

折見:正しい装いという意味だが、少し皮肉も込めている。今の社会を見ていると、正しさのようなものが表に出ていて強制される時代だと感じる。そうした状況に対して、現時点で自分なりにアンチテーゼをアウトプットしてみたかった。

WWD:具体的には、どのようなアプローチで服に落とし込んだのか。

折見:ミリタリージャケットやテーラードジャケットなど、メンズウエアの基本となるアイテムを自分なりのギミックで「オリミ」流にアレンジしたかった。一つ一つはオーセンティックなアイテムだが、例えばモーターサイクルジャケットを、歪なカタチにデフォルメする。スタンダードな服をどう自分なりにアレンジするか。アイデアベースで奇をてらうのではなく、あくまでも変化で表現した。

WWD:コレクションを重ねる中で、デザインのアプローチにも変化がある。

折見:シーズンごとに挑戦したいことは違う。秋冬コレクションでは、以前よりも自分の手作業でディテールを組み立てることにこだわった。ここ数シーズンはより造形的なアプローチに目が行っている。ブランドを続ける中で、表現できることの幅は広がっていると思う。

WWD:春夏コレクションのスタイリングを手がけたレオン・パクティン氏とはどのような関係か。

折見:「ジ・エレファント」を立ち上げた時期に、ロンドンで出会った。お互いのファッションの感性が合う、というところで仲良くなったので、スタイリングのディレクションで伝わる部分、共通言語が多い。

WWD:テーマの源泉にはどんなものがあるのか。

折見:最初に一つの明確なテーマがあって、そこから全部を組み立てるというより、いろいろな断片が集まって、最後に一つの形になる感覚だ。ムードボードに、場所やスタイリング、素材、色、言葉など、直感的に気になったものを集めていく。前シーズンではパティ・スミス(Patti・Smith)をイメージしたように、具体的に一人の人物をイメージすることもあるが、今回は一人というより、いくつかのキャラクターがいるようなイメージだった。日本のアニメやキャラクターも意識した。西洋的な美しさとは違う、日本特有の少しキャラクター的なものも意識している。「プレイステーション 3」のコントローラーのカラーリングからインスピレーションを受けたり、多様なカルチャーを貼り合わせ、組み合わせて作っていっている。立ち上げた当初から、映画を作るように直感的な断片を集めて、一つの世界観を作っていくエッセンスは、今も変わっていない。

原宿で得た初期衝動を、東京の記録として残す

WWD:長く原宿のファッションシーンを見てきた。街の変化をどのように感じているのか。

折見:昔の原宿は、もっと混沌としていたと思う。原宿に来る人たちも、いろいろなタイプの人が混ざっていて、それぞれが自分なりの解釈でファッションを楽しんでいた。今は、以前よりもある程度整理されてきたように感じる。

WWD:そうした街の変化は、クリエイションにも影響しているのか。

折見:「ジ・エレファント」という場所があり、そこでショップを続けながらブランドもやっているので、その瞬間の東京のムードを拾うようにしている。自分が街にいて、そこで仕事をしているから、自然と吸収しているものがある。東京の街自体が、常にインスピレーションの源になっている。

WWD:ブランドの成長とともに、より多くの人に見られるようになった。表現に対する意識にも変化はあったのか。

折見:最初は、一部の人に理解してもらえればいいという感覚もあった。原宿という場所に、自分の好きなことを自由にやっていいという空気を感じていたからだ。ただ、ブランドとして年数を重ね、コレクションを発表するようになり、見てくれる人も増えた。そうした中で、社会との距離感は変わってきたと思う。

WWD:それでも、初期衝動のようなものは変わらずにあるのか。

折見:僕にとっての初期衝動は、16歳ごろに初めて原宿に来たときに感じた自由さだ。好きなことをしていいんだ、という感覚。その熱量自体はずっと変わらずに続いている。ブランドとしてできることが増えたり、表現が整ってきたりした部分はあるが、根本は変わっていない。古着が好きで、音楽が好きで、自分がいいと思う服を着たり、買い付けたりしていた。そうしたテンションの上がる楽しさが出発点だ。今は東京でショーをすることによって、自分の服に対する衝動をさらに高められている。活動の規模が大きくなっても、最初の気持ちを持ち続けられていると思う。

WWD:今後は海外への展開も視野に入れているのか。

折見:海外に向けたモノ作りや発信にも、もう少し取り組んでいきたい。仕事としては「オリミ」への比重が大きくなるが「ジ・エレファント」も基本的な方向性は、引き続き自分で決めていきたい。細かい部分は任せられることもあると思うが、核となる部分は自分で考える。「オリミ」としては、ピッティ・ウオモかパリ・コレクションへの参加を目指している。ファッションアワードを受賞したことでパリの展示会に「オリミ」の服も行くので、必然的に海外は意識する。

WWD:最後に、今後の「オリミ」に注目する読者へメッセージを。

折見:東京コレクションでのショーも、2026年の今、東京で発表するという一つの瞬間だ。この時代に「オリミ」というブランドが東京でコレクションをやっていたということが、この瞬間のドキュメントとして、少しでも残っていくようなものになればいいと思う。そのトキメキみたいなものが、若い人たちがファッションを楽しむ理由になってくれればうれしい。

PHOTOS:TOSHIYUKI TANAKA

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