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アヴァランチーズが語る新作「No Bad Memories」 なぜ今作では「広告と記憶」をテーマにしたのか? その想いを聞く

ポップ・ミュージック史に残る伝説の名盤は幾つも存在するが、オーストラリア出身のアヴァランチーズ(The Avalanches)が2000年に送り出したデビュー・アルバム「Since I Left You」は、間違いなくそのうちの一枚に数えられる。古今東西のレコードから掘り起こした約3500ものサンプルを繋ぎ合わせて作られた、万華鏡のようなサウンドコラージュ・アート。初夏に吹き抜ける風のように爽やかで、失ってしまった「あなた」に想いを馳せるかのように切ない。と同時に、すべてがひとときの幻であったかのようにドリーミーだ。その特別なフィーリングと、圧倒的な音の構築美によって、同作は瞬く間に伝説となった。

それから2作目「Wildflower」のリリースまで16年も要したことが伝説化にさらなる拍車をかけたが、その後は比較的コンスタントに活動を続けている。そしてこのたび届けられたのが、4作目のアルバム「No Bad Memories(ノー・バッド・メモリーズ)」だ。

今作のテーマは、広告やテクノロジーと人間の記憶との関係。相変わらず膨大なサンプルが曲を彩っているが、今回は懐かしい広告のジングルやスキット、電子機器の起動音などが意図的に数多く使われているのが特徴だ。私たちの大事な思い出や人々の共通の記憶は、実は企業が商品を売り込むために作った、異様に耳に残るサウンドやキャッチフレーズによって形作られているのだとしたら?——そのような問いが、今作の奇妙なサンプル使用の根底にはある。

とはいえ、もちろんこれはシリアスで重苦しい作品ではない。ジェイミーxx(Jamie xx)、ウィーザー(Weezer)のリヴァース・クオモ(Rivers Cuomo)、バリー・キャント・スウィム(Barry Can’t Swim)、マイク・パットン(Mike Patton)、そして日本からは細野晴臣や池田亮司など、多数のゲストを招集して作り上げた今作は、どこまでもカラフルで楽しく、いつも以上にダンサブル。そして、そこはかとなく切ない。確かに社会批評的なアイロニーも感じられるものの、そこにいるのは紛れもなく、私たちが愛するあのアヴァランチーズだ。

アルバムのリリース日に合わせて来日し、DJイベントやファンとのミート&グリートを積極的におこなっていた彼ら。その合間を縫って、オリジナル・メンバーのロビー・チャター(Robbie Chater)とトニー・ディ・ブラシ(Tony Di Blasi)、そして今作から正式メンバーとなったアンドリュー・セケレス(Andrew Szekeres)の3人に話を訊いた。

よりダンサブルなサウンドへ

——アルバムを聴いてまず印象的だったのは、これまででもっともフロア志向のダンサブルなサウンドが多いことです。今回このような方向へと向かったきっかけは、何だったのでしょうか?

ロビー・チャター(以下、ロビー):いい質問だね。きっかけになったのは、やっぱりトニーだったと思う。前作(「We Will Always Love You」、2020年リリース)はもっと内省的で、ドリーミーで、ゆったりしたアルバムだったからね。それに、あのアルバムはコロナ禍やロックダウンとも結びついていた。だから今回は、とにかくポジティブで、アップテンポで、夏らしくて、パーティーにぴったりな作品を作りたいという気持ちがあったんだ。それに、もう一度クラブ・ミュージックと繋がりたいという思いもあった。

トニー・ディ・ブラシ(以下、トニー):パーティーで気軽にかけられて、みんなが踊ったり、楽しんだりできるような音楽を作りたかったんだ。

——ダンサブルなビートが効いたトラックの中でも、5曲で参加しているハディージャ・アル・ハナフィ(Khadija Al Hanafi)とのトラックは、特に個性が際立っています。彼女とのコラボはアルバムのグルーヴにどのような影響を与えたと思いますか?

ロビー:彼女のテンポの使い方はすごく独特なんだ。僕たちとは違うエネルギーを持っているし、普段僕たちがやっているものとは違うテンポで音楽を作っている。

——ええ。彼女の作る曲はドラムンベースとかフットワークとか、テンポが速いものが多いですし、リズム感も独特です。

ロビー:そもそもコラボレーションする前から、彼女の音楽にはすごく刺激を受けていたんだ。彼女もサンプルを使っているけど、その使い方がそれまで僕が聴いてきたものとはまったく違っていたからね。サンプルを細かく切り刻んで、ものすごくエネルギッシュな音楽に仕立て上げる、その斬新なアプローチにすごく興奮したんだ。それで、僕たちが作ったインストゥルメンタルの音源を彼女に送るようになった。すると彼女は、それをまるで一つのサンプル素材のように扱って、スピードを上げたり、細かく切り刻んだりしてくれた。そうやって一緒に音楽を作るプロセスが始まったんだ。

広告と記憶の関係性

——今作は、広告やテクノロジーと人の記憶との関係をテーマにしていますよね。そもそも、なぜこのようなテーマに興味を惹かれたのでしょうか?

ロビー:僕たちはサンプリングを使うアーティストだから、常に記憶について考えているんだ。僕たちが使う古い音源には必ず何らかの物語があって、その音楽が僕たちの手元に届くまでに、どんな歴史を歩んできたのかを想像させてくれる。だから、古い音をサンプリングするという行為には、いつだってさまざまな意味が込められているんだよ。それに、僕たちも少しずつ歳を重ねるなかで、自分自身の記憶について、以前より深く考えるようになったんだ。この世界が僕たちにどんな影響を与えてきたのか、そして、人生を通じて目にしてきた広告、特に若い頃に触れた広告によって、僕たちのアイデンティティーがどのように形成されてきたのか。そういうことをメンバー同士で話すようになって、そこから今回のテーマへと発展していったんだ。

——あなたたちはデビュー・アルバムの頃から、「サンプリングで誰もが知っているラインを使うことによって、みんなが共感できる雰囲気を作り出し、何かの思い出やフィーリングを呼び起こしたい」と語っていました。そういった発想は、ニュー・アルバムに至るまで変わっていないと思いますか?

ロビー:うん、今でも変わっていないと思う。

アンドリュー・セケレス(以下、アンドリュー):今回のアルバムでは、むしろその要素がこれまで以上に強く表れている部分もあると思う。広告のキャッチフレーズには誰もが聞き覚えのあるものが多いし、それが記憶を呼び起こすきっかけになるからね。ただ、今回はそれが以前とは少し違う形で表現されているのかもしれない。

ロビー:それこそが僕たちがサンプリングを大好きな理由でもあるんだ。

トニー:美しいサンプルを発見する喜びだよね。

ロビー:そこには何か魔法のようなものがあると思うんだ。きっと僕たちは、いつまで経ってもその魅力に飽きることはないと思うよ。

サンプリングに惹かれるきっかけは?

——ちなみに、あなたたちがこんなにもサンプリングに惹かれることになった、最初の出会いって何だったんですか?

ロビー:デ・ラ・ソウル(De La Soul)のファースト・アルバム「3 Feet High and Rising」が大好きだったんだ。(同作のプロデュースを手掛けた)プリンス・ポール(Prince Paul)のプロダクションとかね。本当にいろいろなものから影響を受けたんだ。もっと若い頃には、80年代のレコードで、フェアライト(Fairlight)のサンプラーを使っているようなサウンドにも惹かれていた。ピーター・ガブリエル(Peter Gabriel)やアート・オブ・ノイズ(Art of Noise)なんかは、いつもほかとは違う、刺激的な音に聴こえたね。それから、パブリック・エナミー(Public Enemy)やボム・スクワッド(Bomb Squad)、そしてウータン・クラン(Wu-Tang Clan)なんかも。

トニー:そうそう。それからドクター・オクタゴン(Dr. Octagon)。ある時期の彼は、ものすごく大きかった。つまり、ヒップホップから本当にたくさんの影響を受けたんだ。

ロビー:それから、昔からテープレコーダーが大好きで、テープループを作ったり、録音の一時停止機能を使ってテープを編集したりしていたのを覚えているよ。そういう音のコラージュが生み出すサウンドが、とにかく好きだったんだ。映画学校のコースを受講したとき、そこにエンソニック((Ensoniq)のサンプラーがあって、独学で使い方を覚えたんだ。もう夢中になってしまったよ。それに、初期の僕たちはあまりお金がなかったから、サンプリングはスケールが大きくて、それまでとは違うサウンドを手に入れるための手段でもあったんだ。例えば、リサイクルショップに行けば、古いバイオリンのレコードが1ドルで買えたりする。

トニー:そうやって、自分たちが持っていないさまざまな楽器の音を使えるようになったんだよね。まるでフルバンドを編成したようなサウンドを作れるんだ。当時の僕たちにはそんなお金はなかったし、そもそも楽器の演奏だってそれほど上手くなかったから、自分たちで演奏してもあんな音にはならなかった。だから、サンプリングはそれを実現するための方法だったんだ。

OPNやヴェイパーウェイヴ

——なるほど。ただ今回は、サンプルネタとして使われている広告のジングルやデジタル機器の起動音というのが、消費社会の産物であるというのが、ひとつのポイントであるわけですよね。あなたたちはそこにアイロニーを込めているのでしょうか? それとも、ただの宣伝の道具だったものが、人々が共有する美しい思い出へと転化することにロマンティシズムを見出しているのでしょうか?

ロビー:その両方だと思う。どちらの側面もあるんだ。というのも、そうしたものは僕たちみんなを繋いでくれるからね。僕たちはみんな、この消費主義的な資本主義社会の中で育ってきたという共通の経験を持っている。それはすごく大きな力を持っているんだ。例えば、今回のアルバムに参加してくれたボーカリストの誰かと作品のテーマについて話し始めると、すぐに「ああ、あのCMを覚えてる!」「あのCMも懐かしいよね!」という話になる。つまり、みんなが共有している経験なんだよ。それに、特にあの時代の広告には、どこかもっと無邪気で、希望に満ちたところがあったように思うんだ。明るく輝かしい未来のビジョンを描き出していたというか。

トニー:そう、僕たちもそういうビジョンに惹き込まれていたんだよね。

ロビー:でも一方で、君が言うように、そこにはもう一つの側面もある。僕たち自身も、この社会に消費者として参加することについて、どう感じているのかを考えているんだ。倫理的な観点から、どこまでなら自分たちが納得して参加できるのか、自分自身の中でどこに一線を引くべきなのか。そういうことも問い直しているんだと思う。

——曲間に自分たちが作った架空の広告ジングルが入っているという構成面で、私が思い出したのはザ・フー(The Who)の「Sell Out」でした。一方、アルバムのテーマという点では、大衆消費社会的な過去の記憶に憑りつかれているワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(Oneohtrix Point Never)、あるいは彼と近いところにあるヴェイパーウェイヴ(Vaporwave)といったジャンルの、よりポップなバージョンと捉えることも出来ると思います。そのような見方に対しては、どう感じますか?

ロビー:面白いね。そういえば、今回のアルバムでは、僕たちのアーティスト写真も広告を模したものにしたんだけど、そのとき誰かがザ・フーの「Sell Out」のことを話していたのを覚えているよ。あの有名なジャケットのことを、僕はすっかり忘れていたんだ。ヴェイパーウェイヴについての指摘も興味深い。ヴェイパーウェイヴが登場したのは2013年頃だったっけ? 当時の僕たちは、16年にも及ぶ長い道のりの末に「Wildflower」を完成させることに没頭していたから、あのムーヴメントを見逃してしまったんだ。

トニー:そうだね。

ロビー:だから面白いんだよね。ヴェイパーウェイヴ自体が過去を振り返る音楽だったのに、僕はさらに何年も経ってから、それを振り返ることになったんだから。たしか2022年頃になって、「ヴェイパーウェイヴって一体何だったんだろう?」と思って、改めて調べたりしていたんだ。なかなか興味深い経験だったよ。僕たちの場合は、サンプルや記憶に対する自然な探究心に導かれるまま、自分たちなりの道を歩んできて、その結果として今回の作品にたどり着いたんだと思う。でも、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーは間違いなく刺激を受けるアーティストだよ。本当にものすごい才能の持ち主だと思う。

——このアルバムは基本的に喜びや楽しさを表現していると思いますが、同時にある種の切なさや喪失感も伝わってきます。それは、本作のテーマになっている広告やデジタル機器の多くは、今や存在しないものだからかもしれません。切なさや喪失感はあなたたちの作品に一貫して流れるモチーフでもありますが、それは今回も重要なものだと思いますか?

ロビー:うん、そうだと思う。両方重要なんだけど、「切なさ(wistfulness:郷愁、物悲しさ、失われたものへの愛惜といった意味合いも含んでいる)」というのは僕たちの音楽の一部を表現するのに、すごく美しい言葉だと思う。本当にいい言葉だよね。僕たちは昔からビーチ・ボーイズが大好きなんだけど、それは彼らの音楽の一部に、喜びと悲しみのちょうど中間にあるような感情が宿っているからなんだ。すごく美しいんだけど、同時に胸が少し痛くなるようなところがある。なぜなら……。

トニー:あまりにも美しいからだよね。

ロビー:そう。それに、喪失感もあるから。永遠に続くものなんて何もないし、人生は美しいと同時に悲しいものでもあるからね。だから、喜びと悲しみの間を漂うようなメランコリーや切なさは、僕たちの音楽にずっと存在してきたものだと思う。「Since I Left You」という曲も、まさにそんな感覚があるよね。だから、それは僕たちの音楽に最初からずっと流れているものなんだと思う。

トニー:僕自身、そういう音楽が一番好きなんだと思う。美しい希望や喜びに満ちているんだけど、そこにほんの少し悲しみが混じっているような音楽。最高の曲というのは、いつだって喜びと悲しみの境界線にまたがっているような気がするんだ。

ロビー:ジョン・レノン(John Lennon)は、まさにそれができる人だったよね。

トニー:そうだね。例えば「Nowhere Man」とか。

ロビー:まさにそう。

——あなたたちの曲には、子供の声がよくサンプリングされていますし、今回も「Every Single Weekend」で使われていますよね。子供時代の記憶というのは、あなたたちの作るアートにとってどのような意味があるのでしょうか?

ロビー:どうだろうね。確かに僕たちは昔からよく使っているし、気がつくといつも使っているんだ。子供の声って楽しいんだよ。

トニー:子供の声ってすごくいい響きがあるんだよね。希望とか喜びとか、そういうものが全部詰まっているような感じがする。だって、子供たちは落ち込んでいることなんて歌わないだろう? いつだって楽しそうなんだ。

ロビー:そう、本当にその通りだね。

トニー:子供の声って、いつも明るくて、エネルギーに満ちていて、聴いていると元気になるんだよ。

ロビー:まだ離婚を経験して、それを曲にするような歳じゃないからね(笑)。

トニー:そう、まだそんな経験はしていないから(笑)。人生に打ちのめされたこともない。だから、あの素晴らしい希望に満ちた感覚が、まだ残っているんだよ。

池田亮司や細野晴臣とのコラボ

——「Bd-R」には冨田勲の「Arabesque No.1」や出光のサウンドロゴ、「Together」には東芝のサウンドロゴがサンプリングされていますし、往年のテクノロジーの記憶と日本は切っても切り離せません。池田亮司、細野晴臣といった日本のアーティストにアルバムに参加してもらったのは、そういったこととも関係しているのでしょうか?

ロビー:僕たちはもうずいぶん長い間、日本を訪れてきたし、日本はいつ来てもすごく刺激を受ける場所なんだ。大切な友達もたくさんいるしね。だから、僕たちにとっては2つのことが同時に起きていたんだと思う。ひとつは、音楽を通じて生まれた繋がりや友情があったこと。長年にわたって刺激を受けてきたアーティストたちがいたことだね。特に池田亮司と細野晴臣の2人は、まさにそういう存在だったんだ。その一方で、今回のアルバムのテーマが形になっていくなかで、僕たちが子供の頃に触れてきた広告やテクノロジーには、日本から生まれた素晴らしいものが本当にたくさんあることも改めて意識するようになった。特に音楽テクノロジーには、日本から生まれたものがたくさんあるからね。つまり、その2つが自然に結びついたということなんだと思う。

——実際、池田亮司、細野晴臣とのコラボレーションはいかがでしたか?

トニー:本当に素晴らしかったよ。僕たちのコラボレーションはリモートで行うことが多いから、一緒に仕事をしている相手と実際に会えないこともあるんだ。でも、リョウジとは丸一日一緒に過ごすことができた。たしか、最初は少しだけ音楽の制作をして、それから夕食に出かけて、一晩中いろいろな話をしたんだ。まるで何年も前から知っている親友と久しぶりに会ったような感じだったよ。そういう経験ができることも、僕たちが音楽を作り続けている大きな理由のひとつなんだ。そういう時間が本当に大好きなんだよね。

それから、僕たちはホソノサン(細野さん)のご自宅にお邪魔したんだ。お孫さんたちも暮らしている家で、それから彼のラジオ番組にも出演させてもらった。僕たちを招いてくれたこと自体、本当にありがたかったよ。スタジオも見せてもらったし、子供さんやお孫さんたちと暮らしている家を訪ねることもできた。たしか、細野さん自身もその家で育ったんじゃなかったかな。だとしたら、彼にとって本当に特別な場所だよね。

しかも、その日はちょうど細野さんの誕生日だったんだ。だから、ラジオ番組に出演したあと、幸運にも誕生日のディナーにまで招待してもらえた。彼と一緒に本当に素晴らしい夜を過ごすことができたよ。なんだか現実とは思えないような、不思議な感覚さえあった。彼に会えて、そんな時間を一緒に過ごせたことは、本当に光栄だったね。

——このアルバムと併せて作っているという短編映画は、主人公が自分自身の記憶と、過去に見た広告の映像を区別できなくなっていくというストーリーだそうですね。それは、アルバムのテーマをより具体的に表現したものなのでしょうか? それとも、アルバムのテーマから発展して、新しく生まれたストーリーですか?

ロビー:その両方だね。そう、主人公をめぐる具体的なストーリーは、アルバムのテーマから生まれたものなんだ。でも、君が言ったように、両者は互いに重なり合いながら発展していったんだと思う。どちらかが先にあったというわけではなくて、同時に作られていったんだ。

——この映画はいつ、どのような形で公開されるのでしょう?

トニー:来年の初めには公開できればと思っているよ。ただ、どんな形で発表するかはまだ決まっていないんだ。そのあたりは今もいろいろ検討しているところだね。

「No Bad Memories」に込めた思い

——最後にアルバム・タイトルについて訊かせてください。私たちにとっての懐かしい記憶が、実は企業の広告や商品イメージによって形成されていたというのは、やや不気味なことでもありますよね。にもかかわらず、あえて「No Bad Memories」という肯定的なタイトルを付けたのはなぜでしょうか?

ロビー:ある意味、ちょっと意図的なところもあるんだ。まるで広告そのものみたいな感じでね。

トニー:「すべては素晴らしい!」「未来は希望に満ちている!」っていうような。

——ああ、なるほど。広告が約束する幸福の幻想に対する、ちょっとしたアイロニーが込められているんですね。

ロビー:「すべてうまくいく」「これさえ使えば、君の世界は最高になる」「このデオドラントをスプレーすれば、女の子たちがみんな君のところに群がってくる」みたいな。そういう、現実とは違う幻想を抱かせるものなんだよ。

トニー:だって、当然ながら悪い思い出だってあるわけだからね。

ロビー:もちろんそう。でも同時に、人生の中で何を思い出すかは、自分で選ぶものでもあるんだ。どんな記憶を残すかは自分で決められる。だから、悪い思い出ばかりを選ぶこともできるし、いい思い出ばかりを選ぶこともできる。そういう意味では、希望を持って生きるということにも繋がっているんだと思う。「悪い思い出なんてない。過去の嫌な出来事なんて、何ひとつ思い出したくない」っていうようなね。

——そう聞くと、さらに素晴らしいタイトルに思えます。質問は以上です、今日はありがとうございました。

ロビー:こちらこそ、ありがとう。すごく興味深い質問ばかりだったよ。本当によく考えられた質問だったね。

PHOTOS:TAKUYA MAEDA(TRON)

「No Bad Memories」

収録曲
◾️アヴァランチーズ「No Bad Memories」
01.Bd-R / Bd-R
02.Together (feat. Nikki Nair, Jessy Lanza & Prentiss)
03.Xerox Altalink B8055 (feat. Ryoji Ikeda) )
04.I Give Everything I Have 2 U (feat. Loaded Honey)
05.Every Single Weekend (feat. Jamie xx)
06.Friends Forever
07.Blue Shadows (feat. Karen O)
08.Logoland
09.Like Clockwork / Hit By Traffic (feat. Khadija Al Hanafi)
10.All The Time In The World (feat. Rivers Cuomo, Vegyn & Baby Marlboro)
11.3D Glasses Not Included
12.Vida (feat. Erick the Architect)
13.Paradise Island (feat. Khadija Al Hanafi & Mike Patton)
14.Unicorn Quest™ (feat. Ryoji Ikeda)
15.Far Away (feat. John Glacier & Khadija Al Hanafi)
16.Our Love Is Alive (feat. Suzanne Ciani & Barry Can't Swim)
17.Evergreen Altar (feat. Vegyn)
18.Can't Get Over Losing You (feat. Portraits of Tracy)
19.Watch Out! It's Cloudy (feat. Khadija Al Hanafi)
20.Highfield (feat. Panda Bear)
21.Under Yr Power
22.SUV Heaven (feat. Khadija Al Hanafi)
23.One More Fantasy (feat. Carly Simon)
24.Break Out Corporate Tag (feat. Ryoji Ikeda & Portraits Of Tracy)
25.Magic Wand (feat. Barry Can't Swim)
26.Superfun! TV Spot (feat. Mike Patton & Haley Joel Osment)
27.No Bad Memories
28.The Pavements Light (feat. Haruomi Hosono)
https://umj.lnk.to/TA_NBM

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