シネイド・オコナーが長年暮らしたアイルランドの海沿いの町、ブレイで2019年に結成されたバンド、フローレンス・ロード(Florence Road)。リリー・アロン(Lily Aron Vo)、エマ・ブランドン(Emma Brandon Gt)、アルヴァ・バリー(Ailbhe Barry Ba)、ハンナ・ケリー(Hannah Kelly Dr)の4人は12歳からの幼なじみで、飛躍のきっかけはTikTokに投稿したカヴァー動画だった。オルタナティヴ・ロック〜グランジの残響と、10代から大人へと移り変わる時期特有の痛みを瑞々しく掬い上げる歌詞、そして耳に馴染むポップネスを兼ね備えたサウンドで瞬く間に世界の視線を集め、ついた評価は「Z世代のクランベリーズ」。昨年のメジャー・デビュー以来、ウルフ・アリスやオリヴィア・ロドリゴといった憧れのアーティストと共演を重ね、今年初めにはシングル「Hanging Out To Dry」がバイラルヒットを記録するなど、近年活況に沸くアイルランドのロック・シーンの新世代の中でもひときわ目覚ましい躍進を見せている。
そんな彼女たちはこの夏、「サマーソニック 2026(SUMMER SONIC 2026)」に出演。この初来日を記念して制作されたのが日本独自の企画盤「Between Seasons」だ。デジタル配信でリリースしてきたEP2作品「Spring Forward」「Fall Back」を軸に、ライブ音源3曲を新たに追加収録した本作は、結成から現在までの彼女たちの軌跡をコンパクトに辿れる一枚に仕上がっている。猛スピードで世界的なブレイクへの階段を駆け上がりながらも、等身大の姿を保ち続ける彼女たち。その揺るぎないスタンスに貫かれたバンドのルーツと音楽性の核心について語ってもらった。
TikTokでのバイラルヒットで話題に
——バンドを取り巻く今の状況については、率直にどう感じていますか。
リリー・アロン(以下、リリー):こんなに早くいろんなことが進むなんてまったく思っていませんでした。一緒に曲をつくり始めた頃は今の状況なんて想像もしていなかったけど、音楽が私たちをこんな素晴らしい場所まで連れてきてくれたこと、そして今こうして日本にいられることがすごく嬉しいです。
——大きなステージでのライブも増えていますが、これまでの活動の中で特に印象に残っている出来事は何ですか。
リリー:やっぱりキングス・オブ・レオンのオープニング・アクト(※6、7月に開催された北アイルランドとアイルランド公演)を務めたのは、私たちにとって初めてのスタジアム・ライブだったので本当にものすごい経験でした。ステージから見渡す限りのお客さんがいて……! それに、2枚目のEP(「Spring Forward」)をリリースして、私たちの音楽をさらにたくさんの人に届けられたのも大きかったかな。
エマ・ブランドン(以下、エマ):初のヘッドライン・ツアーをソールドアウトできたこともね。あれは本当に最高だったな。それと、(ダブリンの)「3Olympia Theatre」でライブができたこと。あそこは私たちにとって地元のホームみたいな場所だから、すごくテンションが上がりましたね。
——今年の春にはシングル「Hanging Out to Dry」がTikTokでバイラルヒットして大きな話題になりました。反響はいかがでしたか。
リリー:ヒットするなんてまったく予想してなかったので、面白かったですね。レコーディングしている時は「ああ、これを早く世界中の人に聴いてほしい!」って全員がワクワクしていて。でも実際にSNS上で火がついて、たくさんの新しい人たちに私たちの音楽を見つけてもらえたのは本当に嬉しかった。あのプレ・コーラスのリフはちょっと変わった響きがあって、私たちの他の曲ではあまり聴けないようなサウンドになっていると思います。それに、この曲は「正当に評価されていない」と感じる悔しさや、周りの人が「本当の自分」を見てくれないというもどかしさについて歌っているので、私たちにとってもすごく大切な曲で。だからこそ、たくさんの感情が込められていて、ライブで思いっきり声を枯らして叫ぶように歌うとすごくすっきりするんです(笑)。
幼なじみからバンドメンバーへ
——みなさんは幼なじみ同士で、バンドを始めた頃はリリーさんの家の庭にある物置小屋に集まって曲づくりや練習をされていたそうですね。
アルヴァ・バリー(以下、アルヴァ):結成したばかりの頃は、もっと閉じた世界だったと思います。本当に私たちだけの世界というか、最初はライブをしたり、世界中を旅したりなんて全然考えていなくて。ただリリーの家のガレージに集まって一緒に音楽をつくるっていう、初めての経験とその楽しさを味わっていただけで。だから、自分たちがどんな風になっていけるのか外の世界を意識し始めたのは、バンドを始めてから数カ月、もしかしたら1年くらい経ってからだったんじゃないかな。
——最初の頃は曲づくりと並行して、いろんなアーティストのカヴァーをやられていたと聞きました。
リリー:一緒に演奏し始めた頃はホージアをよく聴いてカヴァーしてましたね。あとはサム・フェンダーとか。キングス・オブ・レオン、オリヴィア・ロドリゴの曲も演奏していました。今になって、当時カヴァーしていた彼らのライブで私たちがサポートアクトを務められているんだから、すごく不思議だし最高ですよね。
——「Z世代のクランベリーズ」とも呼ばれるフローレンス・ロードですが、バンドを始めた頃の“指針”になったアーティストを挙げるとしたら誰になりますか。
リリー:バンド全体としてなら、ウルフ・アリスですね。彼らはすごくヘヴィーなロックもできるところが大好きで。ボーカルのエリー(・ロウゼル)がマイクに向かって文字通り絶叫することもあれば、その一方で、本当に美しくてソフトなバラードも歌える。そういうコントラストは、無意識のうちに私たちの音楽にも染み込んでいる影響だと思います。
日本独自の編集盤「Between Seasons」
——今回の来日に合わせてリリースされた「Between Seasons」は、「Fall Back」と「Spring Forward」という2つのEPをまとめた日本独自の編集盤になります。それぞれのEPはどんな作品なんでしょうか。
リリー:「Fall Back」は、ティーンエイジャーから大人になっていく過程で「自分は何者なのか?」を模索することが大きなテーマになっていて。一方の「Spring Forward」は、自分が誰を愛し、何を愛しているのか、そしてその良い部分も悪い部分も含めて見つけ出そうとする作品。だから、同じようなテーマ性を持ちつつも、それぞれが独自の個性を持っていて、すごく面白い作品になったと思います。
——連作であり、姉妹作のような関係?
リリー:そうですね。実際、「Fall Back」をつくっていた時から、姉妹作として「Spring Forward」をつくりたいというアイデアはずっとあって。そして、“季節の移り変わり”に合わせてこの2枚を一つの作品としてパッケージできたのもすごく素敵な体験でした。自分たちの音楽が一つの場所にまとまって、違う曲同士がどんな風に響き合うのかを感じられるし。あと、今回は初めてCDを作れたのが本当に嬉しくて。今までCDを出したことがなかったから、すごく感動しちゃいました(笑)。
——せっかくなので、みなさんそれぞれのお気に入りの曲を教えてください。
エマ:「Storm Warnings」は、私たちというバンドをすごくよく表している曲だと思う。根底に“アイルランドらしさ”があって、メロディーや曲の流れもそう。レコーディングの時も面白くて、実は2〜3年前に書いた曲なんですけど、しばらくその存在を忘れていて。後になって少し書き直して、また忘れて、さらにまた書き直して……って繰り返していくうちに、最終的にすごく美しい形で一つにまとまったんです。
アルヴァ:同じような感じで言うと「Figure it Out」もそうだよね。バンドを結成した本当に初期に書いた曲で、時間をかけて進化してきた曲。キーがめちゃくちゃ高くて歌うのが大変だったから、今は原曲より半音下げて演奏してるんです(笑)。
リリー:そうそう! ツアーで3日連続とか、3日に1回くらいのペースでずっとライブをやっていたから、高い声で歌い続けるのがきつくなっちゃって(笑)。半音下げて……キーを低くしたんだよね。
アルヴァ:そうすることで歌いやすくなっただけじゃなくて、サウンド自体もすごくクールで良い感じになった。ツアーを通して曲が思いがけない進化を遂げるのは、すごく楽しい発見でした。
ハンナ・ケリー(以下、ハンナ):私は「Miss」が面白い曲だなって思います。初期の頃につくった、ちょっと実験的な曲で、静けさと激しさを交差させたり、テンポ・チェンジを入れたりしていて。初めてみんなで合わせた時のことを覚えてるんですけど、まだバンドの練習も5回目くらいの本当に初期の初期で、曲のこともよくわかっていなかったのに、テンポを変えた瞬間にみんながものすごく入り込んで。「あ、私たち面白いことができるじゃん、ちょっとクレイジーにやっちゃおうよ!」って思えた瞬間でしたね。あれはすごくクールだったな。
リリー:私にとって特別なのは「Caterpillar」ですね。18歳か19歳くらいの時、自分のベッドルームでほとんど書き上げました。その頃すごく不安な気持ちを抱えていて、自分にできることは「曲を書くこと」しか思いつかなくて。それで書き始めて最初の部分ができて、次の日にみんなとのセッションがあったのかな。「ねえ、書きかけの曲があるんだけど」って聴かせたら、みんなすごく気に入ってくれて。この曲は本当に誇りに思っています。ライブで演奏するたびに、一番前で若い女の子たちがボロボロ泣いているのを見ると、いつも胸が熱くなりますね。曲を書いた当時の自分と重なるし、同じような気持ちを抱えている若い子たちが、この曲に共感して「悲しいのは自分だけじゃないんだ」って思ってくれるなんて……。本当に特別な曲です。
——今リリーさんが挙げた「Caterpillar」はアコースティック調の特別な曲ですけど、フローレンス・ロードのサウンドは、90年代のオルタナティブ〜グランジのようなロックの系譜をしなやかに受け継ぎながら、同時にとてもキャッチーで強いポップ・ソングライティングも兼ね備えていますよね。この絶妙なバランスはどのように生み出しているのでしょうか。
リリー:大切なのは、100%自分たちが自信を持てる歌詞にすることだと思う。詩的でありながら、ちゃんと伝わりやすいものであること。そしてそれを、クランチの効いたギターや美しいピアノのパートと組み合わせること。歌詞とメロディは、絶対にぴったりと手を結んでいなきゃいけないと思っています。「これだ!」ってハマった瞬間は、すぐにわかるんです。曲がほぼ完成しかけているのに、「いや、この歌詞はやっぱり変えなきゃダメだ」って戻ることもあって、そこを変えると突然、曲全体の辻褄が合う。ある意味パズルみたいで、すごく楽しいです。
フィービー・ブリジャーズからの影響
——現在のフローレンス・ロードのサウンドやソングライティングにおいて、インスピレーションを受けているアーティストはいますか。
リリー:フィービー・ブリジャーズのリリックは本当に美しいし、エイドリアン・レンカー(ビッグ・シーフ)も素晴らしいですね。彼女の言葉の紡ぎ方は魅力的だし、本当に天才的だと思う。歌詞の面ですごくクールだと思うのはその2人かな。あと、アイルランドのアーティストならCMATですね。うん、彼女もすごくクールです。
エマ:ロックのダイナミクスで言うなら、やっぱりウルフ・アリスかな。ヘヴィなパートとメロウなパートを両方持っているから。
アルヴァ:ビーバドゥービーもだよね。ロックとポップスがミックスされていて、繊細さもある。うんうん、間違いない。
——そういえば去年、オーストラリアのラジオ局の企画でフィービー・ブリジャーズの「Georgia」をカヴァーされてましたね。
リリー:とにかく本当に美しい曲で、すごくエモーショナルですよね。彼女がものすごく高い音を出すところで、ライブ・バージョンを聴くたびに毎回鳥肌が立つんです。だから、私たちがピアノを使って自分たちなりのバージョンをつくってみるのはすごく楽しかったですね。
アルヴァ:そうそう、オーストラリアのホテルの部屋にいて、何か形にするまでに2日間しか時間がなかったんです。だから、自分たちがよく知っていて、そんな短い時間でもしっかりとリスペクトを込めて形にできるアーティストの曲を選びたかったんです。
——先ほどリリーさんも話されていましたが、2枚のEPでは「大人になることの痛み」がさまざまなストーリーを通じて描かれています。そうしたパーソナルな感情を普遍的な響きを持ったポップ・ソングへと昇華する際、どんなことを意識していますか。
リリー:「Break the Girl」がまさにその完璧な例ですね。歌詞自体は実はすごく悲しい内容なんですけど、曲調は「ラララ〜」っていうコーラスが入るような、90年代風のアップビートでハッピーな雰囲気で。悲しいことを楽しいメロディと組み合わせることで、音楽の上に一枚の「ベール」がかかるような感覚になる。だからこそ、曲の本当の感情を受け取るためには、深く踏み込んで歌詞にしっかり耳を傾けなきゃいけない。そういう構成になっています。
——今挙げてくれた「Break the Girl」は3人称の視点で描かれ、終盤で語り手自身が“傷つけられた女の子”であると明かされる構造が見事で。搾取的な関係性に対する批評的な眼差しを持つこの曲のストーリーテリングは、どのように生まれたのでしょうか。
リリー:ある時、友達と話していたんですけど、彼女がすごく悩んでいて、大変な時期を過ごしていたんです。それが私自身の心にも重くのしかかってきて、もうそのことしか考えられなくなっちゃって。そのままスタジオのセッションに入って、自分が今どう感じているか、どんな状況なのかを話し始めたら、たった10分で曲ができあがりました。私たちが書いたなかで一番早く完成した曲ですね。何かに対して本当に深く感情が動いた時、私としては、たくさんの言葉が一気に溢れ出してくるのがすごく楽だったりするんです。とても満たされた気持ちになる曲作りでした。
アイルランドのロック・シーン
——ところで、みなさんはアイルランド語で授業を行う学校の出身で、今でも日常的にアイルランド語で会話されると伺いました。今後はアイルランド語詞の楽曲制作も考えているそうですが、母語への誇りや、それを音楽に落とし込む意義について、どのように考えていますか。
リリー:私たちは全員アイルランド語で教育を行う学校に通っていたんですけど、学生時代は「まあいっか、これが自分たちの言語だし」くらいにしか思っていなくて。でも、学校を卒業して地球の裏側くらい遠く離れた場所に来た途端、この言語に対してすごく強いつながりを感じるようになったんです。今ではお互いになるべくアイルランド語で話すようにしています。アイルランド語で曲を書くのも、すごく理にかなっているというか。だって、それができる人はそんなに多くないし、“美しい秘密”を共有しているような気分になるから。それに響きも本当に美しいので、将来的にはアイルランド語でもっと曲を書いてみたいですね。
アルヴァ:私たちは幸運だったと思います。誰もがこの言語に対してそこまで強い思い入れを持てるわけじゃないし、良い先生に出会えない環境の人もいるから。でも、第一言語として話されている地域(ゲールタハト)もあるし、今、この言語を再び最前線に引き戻そうという本物のムーブメントが起きています。それは私たちがとても強く共感していることであり、どんな形であれ、その一部になれることを嬉しく思っています。
——みなさんの地元のブレイという街自体にも、そうした母語への関心を大切に育む空気があったのでしょうか。
リリー:そうですね。それと、学校全体にいつも音楽が流れているような素敵な雰囲気があって、あの環境はすごく良かったと思います。音楽の先生がとても協力的で、お昼休みやクリスマスのコンサートで演奏するようにと私たちの背中を押してくれたんです。私が11歳くらいの頃かな、数ヶ月だけアイルランド語での歌のレッスンを受けたことがあって。「Sean-nós」(※アイルランドの伝統的な無伴奏歌唱)っていうんですけど、独特の軽快なリズムや、今の私の声の「こぶし」みたいなものに似ているんです。当時そのレッスンをすごく楽しんでいたのを覚えていて。だから大人になってから「アイルランド語で曲を書きたい」って自分のルーツに戻ってくるなんて、一周回って不思議な感覚ですね。
——ここ数年、アイルランドのロック・シーンは大きな盛り上がりを見せていますが、どのように感じていますか。
ハンナ:すごくクールだし、エキサイティングですよね。アイルランドは昔からアートがとても盛んな場所ですが、世界中でこんなにたくさんの人がライブに足を運んでくれるなんて。TikTokでもあちこちで見かけるし、一昨年にはフォンテインズD.C.がグラミー賞にノミネートされたり。今はアイルランドの音楽シーンにいるだけで、本当にエキサイティングな時期だと思います。
——中でも、特別なつながりを感じているアーティストは誰でしょうか。
リリー:私たちの知り合いで言うと、クリフォーズというバンドがいて。あとは、マドラ・サラック。メンバーの一人がハンナと同じ町の出身で、すごくクールなんです。あちこちのフェスでもよく顔を合わせるし。
アルヴァ:ジ・アカデミックも私たちがよく聴いていたバンドです。憧れの存在だったんですけど、今では友達になっちゃって、なんか笑えちゃいますね。私たちは彼らを放っておかないし、彼らも私たちから逃げられないっていう(笑)。彼らは少し年上で30代なんですけど。
——今の流れをつくったきっかけとしては、やはりフォンテインズの存在が大きかったと感じますか。
リリー:ええ、でもそれ以前からの流れもあると思います。クランベリーズ、シネイド・オコナー、シン・リジィ、ホージア、U2……そしてもちろんフォンテインズも。彼らはすごくクールなバンドだし、自分たちの“アイルランドらしさ”を前面に出して活動していますよね。誰もが彼らをアイルランド人だと認識している。それは私たちも持ち続けたい部分です。
——そうした中で、フローレンス・ロードというバンドを自分たちの言葉で定義するとしたら?
エマ:「全員女性」ってことかな(笑)。
リリー:歴史的に見ても、リード・シンガーだけが女性とか、バンドに女性が一人だけっていうことが多いですよね。だから、私たちが「全員女性」であることはクールだと思うし、若い女の子たちがハンナを見て「私もドラムを叩きたい」って思ってくれるかもしれない。女の子がギターを弾いている姿を見せられること……そういう部分が、私たちを少しユニークな存在にしているんだと思います。
今後の展開は?
——今年2月には、パレスチナでの人道支援活動に全額寄付するベネフィット・コンサート「Faoin Solas」を企画・主催されましたよね。あのイベントを立ち上げた経緯や、込めた思いを聞かせてください。
リリー:私たちが、恵まれない状況や過酷な状況にいる人たちを少しでも助けられる立場にあるのなら、やらない手はないと思うんです。できる時はやるべきだし、それが自然なことでした。少しのお金を集めるという小さなことでも、どうしてもやりたかったんです。
——アイルランドの若手アーティストが多数参加していましたが、やられてみていかがでしたか。
リリー:みんなが集まってくれたのを見れて、本当に最高でした。
ハンナ:うん、すべてのサポートが本当に感動的で。
アルヴァ:特に出演してくれた他のバンドが自分たちの時間とエネルギーを割いて参加してくれたことは、私たちにとってすごく意味のあることでした。
——音楽を社会と結びつけることについて、どんな思いがありますか。
リリー:音楽は常に政治的なものでした。たとえ「そうじゃない」と言う人がいたとしても、常に世界で起きていることへの“批評”であり続けてきたんです。音楽がこれほどパワフルなのは、言語の壁を超えられるからだと思います。たとえ歌っている言葉がわからなくても、フィーリングは伝わる。それって音楽ができる本当にクールなことだし、ライブ・ミュージックならなおさら。ライブで音楽を聴くと人の感情は大きく動かされます。少なくとも私は、生の音楽を聴くといつもすごく感情的になってしまう。本当に素晴らしいことだと思います。
——あの経験は、これからの曲づくりにも反映されそうですか。
リリー:ええ、世界や今起きていることに影響されないようにする方が難しいと思います。私たちはすごくパーソナルなことについても書くけれど、同時に世界で感じたことや気づいたことについても曲にするので。それが反映されない理由はないですよね。
——ありがとうございます。というところで、最後に、気になるデビュー・アルバムについて聞きたいのですが。今、まさにつくっているところなんですよね?
リリー:ええと、はい(笑)。自分たちでもすごく誇りに思える、素晴らしい音楽をたくさん書いていますよ。適切なタイミングが来たらシェアするのがすごく楽しみです。
エマ:教えられるのはそれだけ(笑)。
——数日前に「7563」という曲をリリースされましたが、あれは新曲ですか。
リリー:あの曲はもう2年前からあったんです。自分がどこにいるのか、自分が何者なのか、世界における自分の居場所は何なのかが分からなくなることについて書いた曲で。でも、すごく謎めいたものにしたかったので、全体的にとてもシュールだし、歌詞もなんだか辻褄が合わないようにしています。まるで自分の人生すら認識できない悪夢の中にいるみたいな感じで。スタジオでブリッジ部分を作っていた時、「電話番号とか目覚まし時計みたいな、この悪夢から目覚めさせようとする象徴として、数字を何度も繰り返すのはどうだろう?」ってなって。それで適当に口に出してみたんです。「7563とかどう?」「いいね、最高。それ入れよう」って。そんな感じでこの数字(7563)に決まりました(笑)。
——先日「NME」のカバーを飾った際に、「Road Trip」と題したプレイリストを公開されましたよね。
アルヴァ:みんなでそれぞれ3曲ずつ選んだのかな。話をもらってから、みんな自分の“思考の宮殿”に深く潜ってじっくり考えました。でも、私たちはいつもバンや車で一緒に移動しているので、そういう大きな「ロード・トリップ」で普段よく流しているような曲を選びたいなと思って。
ハンナ:「女の子たちでドライブするなら、この曲は絶対に外せないよね」みたいな、自動的に再生リストに入る定番の曲があるんです。それに時々新しい曲をミックスに放り込むのが楽しくて、それがすぐに新たな定番になったりする。そういう感覚で一緒にキュレーションしました。
——プレイリストには、自分たちの曲と一緒にウェット・レッグやムナ、キャメロン・ウィンター(ギース)の曲なんかが収録されていて。あのセレクトにアルバムのヒントが隠されているのでは?と思ったんですけど。
リリー:なんだか不思議ですよね。だって私たちが普段聴いている音楽の中には、自分たちがつくるような音楽からはかけ離れているものもたくさんあるから。ハイパーポップなんかもよく聴くし、最近大好きなんですけど、私たちがハイパーポップの曲をつくることは絶対にないと思います(笑)。でも、それってすごく面白いなって思って。私たちの音楽が一つのジャンルにすっきりと収まらないのは、私たちが一つのジャンルの音楽しか聴かないわけじゃないからだと思います。私たちが楽しめない音楽なんて、ほとんどないですから。
エマ:(アルバムがハイパーポップになると)期待してないといいけど。すごくガッカリすることになるから(笑)。
PHOTOS:TAKUYA MAEDA(TRON)
「Between Seasons」概要
デジタル配信でリリースされたEP2作品、「Spring Forward」(2026年3月発売)と「Fall Back」’2025年9月発売)にライブ音源3曲を追加収録した日本オリジナル企画盤!
<収録内容>
01. Hanging Out To Dry / ハンギング・アウト・トゥ・ドライ
02. Miss / ミス
03. Rabbits Can Swim / ラビッツ・キャン・スウィム
04. Storm Warnings / ストーム・ウォーニングス
05. Break The Girl / ブレイク・ザ・ガール
06. Hand Me Downs / ハンド・ミー・ダウンズ
07. Goodnight / グッドナイト
08. Caterpillar / キャタピラー
09. Figure It Out / フィギュア・イット・アウト
10. Heavy / ヘヴィ
11. Hanging Out To Dry (Dublin Version) / ハンギング・アウト・トゥ・ドライ(ダブリン・ヴァージョン)
12. Miss (Live from the Bus) / ミス(ライヴ・フロム・ザ・バス)
13. Storm Warnings (Dublin Version) / ストーム・ウォーニングス(ダブリン・ヴァージョン)
https://wmg.jp/florence-road/discography/33406







