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マイケル・ジャクソンの衣装、買いませんか? 阪急本店が富裕層に新ビジネス

阪急うめだ本店は、外商顧客を対象に12月にアブダビ(アラブ首長国連邦)で開かれる「マイケル・ジャクソン」と「ダイアナ妃」のオークションのプレビュー展を10月9〜12日に開いた。米オークションハウスのジュリアンズ・オークション(以下、ジュリアンズ)との共同開催。プレビュー展は大阪を皮切りにロンドン、ニューヨーク、バーレーンを経てアブダビへ巡回する。9日夜には、各界の招待客や著名人を招いたオープニングカクテルが行われた。会場には出品予定の約250点のうち約50点が並んだ。

ムーンウォークの初披露で履いたローファー

目玉は、1988年に「BAD」ワールドツアーの日本公演でマイケルが着用した「スリラー」の発光ジャケットだ。マイケルの衣装を長年手がけたデザイナーで、数々の伝説的なステージ衣装の生みの親であるマイケル・ブッシュ氏は「単に目立つために光らせたのではなく、『スリラー』のビートに合わせてライトが上下に動く仕掛けだった」と説明する。ジャケットの重さはバッテリー込みで約18kg。マイケルは「どれだけ重くても構わない」と言い、最後列の観客にも衣装の存在感が届くように、軽さよりも光る演出を選んだという。

ブッシュ氏は、マイケルとの衣装作りについてこう話す。「彼のビジョンは『ビートに合わせて踊り、ビートに乗せて歌う。ファッションもまたビートを見せなければならない』というものだった。誰も持っていないものをつくろうと、光るジャケットや反重力シューズを生み出した。彼にとってファッションは音楽と同じくらい重要だった」と振り返る。

1983年に放送されたテレビ特番「モータウン25」でムーンウォークを初披露したときのグローブとローファーも並んだ。ローファーは、マイケル本人がブッシュ氏に贈ったもので、オークションへの出品は今回が初めて。サイズが小さかったので長年、自宅のベッドの下に置いてあったという。「グローブは本番の2日前にクリスタルの装飾を縫い付けた。その数約500個。2009年に売却され、グローブとして史上最高落札価格になったことでギネス世界記録にも掲載された」(ブッシュ氏)。

ダイアナ妃の展示では、1995年の日本公式訪問で着用したキャサリン・ウォーカーのドレス・アンサンブルが注目を集めた。黒のウールのジャケットは、襟とカフスにベルベット地を配し、斜めの片玉縁ポケットを備える。ダイアナ妃が亡くなる2カ月前の97年6月にニューヨークで開いたチャリティーオークションに自ら出品したイブニングドレスも披露された。

ピカソよりも人気歌手の一点物に資産価値

ジュリアンズは同オークションを約2年前から準備してきた。マイケル・ジャクソンの伝記映画「Michael」の公開によって、リアルタイムを知らない世代にも音楽、ダンス、衣装を届けるチャンスになると考えた。ジュリアンズの共同創業者でエグゼクティブ・ディレクターのマーティン・J・ノーラン氏は、「セレブリティやポップカルチャーのコレクション市場では、マイケル・ジャクソンとダイアナ妃はブルーチップ(レアで安定した優良資産)の位置付けだ。その2つを、同じくブルーチップの百貨店である阪急に持ってきた。生で見られるという感動を伝えたい」と強調する。

セレブリティのオークション市場は「驚異的に成長している」とマーティン氏。今は資産価値の上昇を見込んで買う人が増えたという。「私たちは“新しいファインアート”と呼んでいる。若い世代の富裕層には、モネやピカソよりも、音楽やポップカルチャーの一点ものを求める動きがある」(同)。

海外オークションに詳しい専門家によれば、大手のクリスティーズやサザビーズもここ5、6年でこの分野に力を入れているという。コロナ禍を機にオンライン入札が広がり、約60カ国から入札が入るようになった。ジュリアンズは年に60~80回のオークションを開くが、中東での開催は初めて。日本では東京や名古屋、沖縄で展示会を重ね、初めて大阪で開催した。来年には日本でレディー・ガガのオークションを実現させたい考えだ。

世界の超富裕層と結びつくために

一方、阪急の狙いは物販とは別のところにある。エイチ・ツー・オー リテイリング(H2O)は、長期事業構想2030のアップデートとして5つの重点成長領域を示している。その一つが「新富裕層ビジネス」だ。富裕層の拡大や2030年開業予定の大阪IR・MICEを機に増えると見られる海外顧客を見据え、ワンランク上の富裕層ニーズに応える事業開発を進める。そのためにFGOビジネス開発室を新設した。今回の企画はその一環だ。

同室プレミアムジャパンコンテンツプロデュースチームの責任者、加藤清久氏は、阪急阪神百貨店で海外顧客事業部の責任者も務める。超富裕層を開拓するプロジェクトを始めた理由について「従来の外商の関係ではたどり着けないお客さまがいる。商品を売る、売らないではなく、そこに体験やストーリーを用意する必要がある。本番はアブダビ。お客さまをアブダビにお連れし、超富裕層の方々とのネットワークをつくりたい」と話す。

プレビュー展の来場者には、アブダビのオークション会場に参加する機会を用意する。すでに数人の顧客が落札を目指してアブダビ行きの予定を組み始めたという。ジュリアンズから紹介された東京や横浜の顧客の中には阪急での買い物経験がない人もいて、「初めて接点が生まれた。理想的なつながり方」と話す。逆に、ジュリアンズが抱える海外のコレクターに、日本や阪急を知ってもらい、来日につなげることも狙う。

加藤氏の視線は、さらにその先にある。阪急百貨店は2029年に創業100周年を迎える。「その年に日本のプレミアムコンテンツを世界に向けて競売にかけるオークションを開きたい」と構想を明かす。まだ素案の段階だが、「まずは自分たちがオークションに参加し、日本の素晴らしいコンテンツを世界に向けてオークションにかけることにつなげていきたい」と意気込む。

アブダビのメインオークションは12月7~9日に開催され、オンライン入札は11月中旬に始まる予定。ジュリアンズのウェブサイトで身分証明書を登録すれば誰でも参加可能だ。

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