PROFILE: 吉川秀隆/会長兼社長

日本の美容産業が世界で存在感を高めるには、何が必要なのか。現地のニーズに合わせた商品開発から、人の技やサービスを生かした体験づくり、ODMとの連携、複数ブランドを束ねた売り場づくりまで、その方法は一つではない。海外展開の最前線に立つ7社の取り組みから、Jビューティを世界に広げるためのヒントを探る。(この記事は「WWDJAPAN」2026年9月28日号付録「WWDBEAUTY」からの抜粋です)
タカラベルモント
TAKARA BELMONT
[ プロフェッショナル用理美容機器・化粧品 ]
□ GLOBAL VIEW_海外で勝つために必要なこと
現地の美容文化を知り、商品だけでなく技術やサービスまで根づかせる
□ J-BEAUTY VIEW_「Jビューティ」をどう考える?
メーカーだけでなく美容師・理容師も担い手に。商品だけでなく、体験まで届けて価値になる
□ GLOBAL DATA
主な海外展開地域:フランス、イタリア、ドイツなど 主な事業:理美容機器、プロ用化粧品、歯科機器、医療機器メーカー 海外事業売上高:137.7億円(2025年度※単体売上高) 海外売上比率:20.4%
美容師・理容師もJビューティの担い手に
理美容椅子やシャンプー台などのサロン機器からプロ向け化粧品、空間デザインまでを手掛けるタカラベルモントは1984年からイタリア・ボローニャの国際美容見本市「コスモプロフ(Cosmoprof)」に出展する。小さなブースからのスタートだったが、30年以上にわたり出展を重ねて基盤を整え続け、2025年には海外売上高比率が約2割に達っした。
同社がJビューティを考える上で欠かせないと見るのが美容師や理容師の存在だ。「プロフェッショナルの商品は美容師や理容師の手を通じて価値になる。美容室や理容室といった“受け皿”がないとその先には進めない」。
その考え方を象徴するのが、ヘッドスパの海外展開だ。03年にサロン業界で初めてヘッドスパメニューを提唱。理美容室における新たなメニューとして市場を切り開いてきた。欧州ではロレアル(L'OREAL)やウエラ(WELLA)など大手メーカーがすでにサロンとの関係を築いていた。「普通のシャンプーであれば、何十種類もある中から選んでもらわないといけない」。そこで商材単体ではなく、ヘッドスパというメニューからの導入を図った。
地域によっては髪や薬剤を洗い流す工程としてシャンプーが捉えられ、時間をかけて施術する習慣がない。そうした市場でシャンプーとマッサージを組み合わせた20〜30分のメニューを提案し、化粧品に加えて設備や美容師への技術教育も提供してきた。イタリアの拠点には研修設備を設け、日本から人材も派遣。現地の美容師が技術を身につけ、顧客がサロンで体験できるところまで整えて初めて届く価値があると考える。
同社は1998年に現在の全国理美容製造者協会(NBBA)の設立に携わった。国内メーカーに加え、外資系企業も参加する。吉川社長は、Jビューティでも競争と協調は両立できるとして「大きく考えたら、あまり気にならない」と話す。
商品やブランドは各社が競う一方、各国の規制や流通、市場に関する知見は共有できる。「Jビューティの名の下でメーカーが海外にチャレンジするとき、ゼロからやる必要はない」。ただ、最初から関係する企業や団体を全て集める必要はない。海外に挑戦する意思のある企業から小さく始め、実際の課題を見ながら形にしていくことを提案する。
行政には、企業だけでは負担しにくい部分への支援を求める。海外展示会への出展にはブース費用だけでなく、人員の派遣や物流、現地でのプロモーションにも費用がかかる。各社がそれぞれのタイミングで投資するだけでは活動が点になりやすい。海外進出のハードルを下げることで挑戦できる企業を増やしていくべきと指摘する。「われわれも30年、40年海外でやっているが、まだ完成形ではない。地道にやっていくしかない」。