イタリア・フィレンツェ発の老舗ビューティブランド「サンタ・マリア・ノヴェッラ(SANTA MARIA NOVELLA)」はこのほど、デザインスタジオの「フォルマファンタズマ(FORMAFANTASMA)をクリエイティブ・ディレクターに任命した。フォルマファンタズマが、インスタグラムで発表した。ミラノとオランダ・ロッテルダムを拠点とするフォルマファンタズマは、アンドレア・トリマルキ(Andrea Trimarchi)とシモーネ・ファレシン(Simone Farresin)が設立したデザインスタジオ。今後は「社内チームやさまざまな分野の専門家と緊密に連携しながら、商品、パッケージ、コミュニケーション、店舗空間、イベントまで幅広く手掛ける」としている。
同スタジオは、「出発点となるのはあくまで商品であり、その品質と、商品を生み出す専門技術や工程を特に重視する」と説明。「新たなイメージによって『サンタ・マリア・ノヴェッラ』を再定義するのではなく、すでに存在するものを土台にしていく。1221年以来、ブランドが時代に即した存在であり続けられた理由を理解し、それを現在と未来にどう生かせるかを考えたい」とコメントした。さらに、「そのためには、歴史をどのように伝えるか、新商品をどのように開発するか、そして企業のさまざまな表現をいかに一貫したものとしてまとめるかを検討していく必要がある」と続けた。
800年以上続く世界最古の薬局
「サンタ・マリア・ノヴェッラ」は、世界最古の薬局とされる。21年にドミニコ会の修道士がフィレンツェに移り住み、サンタ・マリア・ノヴェッラの地で修道院の医務室に用いる薬を作るため、薬草を栽培したことに始まる。1533年にはフランス王妃カトリーヌ・ド・メディシス(Catherine de’ Medici)のためにベルガモットを使ったフレグランスを製造。現在もブランドのベストセラーの1つとなっている。その後、薬局を一般に開放し、1612年に商業活動を正式に開始した。現在も修道院の庭園で栽培する薬草を用い、ボディーケア、フレグランス、セラム、ポマード、キャンドル、リキュールなど600種類以上を展開する。クラシカルなパッケージもブランドを象徴する要素で、近年まで広告ではなく主に口コミによって世界的な支持を広げてきた。
フォルマファンタズマは今回の協業について、「私たちにとって重要なのは、まさにこの連続性だ。『サンタ・マリア・ノヴェッラ』を特徴づけているのは単に歴史の長さではなく、原料、処方、技術、物、空間に刻み込まれ、世代を超えて蓄積、継承されてきた知識にある」と説明する。「こうした蓄積を持つ企業と仕事をすることは、私たち自身の活動にも深く関わる問いを投げかける。それをどのように守りながら変化させていくのか、素材がそれぞれの歴史をどのように伝えるのか、そして過去を固定されたものとして扱うことなく、組織がいかに前進できるのかという問いだ」。
「ジル サンダー」や「プラダ」とも協業
09年設立のフォルマファンタズマは、プロダクトデザインから空間デザイン、戦略立案、デザインコンサルティングまで、幅広い領域を手掛けている。ビューティ分野に携わるのは今回が初めてではない。2025年には「ジル サンダー(JIL SANDER)」と協業し、フレグランスコレクション“オルファクトリー シリーズ 1”の発売に携わった。ラグジュアリー分野では「プラダ(PRADA)」と長年にわたり協業しているほか、「フェンディ(FENDI)」「マックスマーラ(MAX MARA)」「エルメス(HERMES)」「ブルガリ(BVLGARI)」「ロロ・ピアーナ(LORO PIANA)」「マルニ(MARNI)」「フェラーリ(FERRARI)」などともプロジェクトを手掛けてきた。また、「カッシーナ(CASSINA)」「フロス(FLOS)」「ジノリ1735(GINORI)1735」「B&Bイタリア(B&B ITALIA)」「ノル(KNOLL)」、マンテコ(MANTECO)など、デザインやインテリア分野の企業・ブランドとも協業している。
CEO退任後の転換期に
今回の就任は、「サンタ・マリア・ノヴェッラ」が経営体制の転換期を迎える中でのものだ。ルディヴィーヌ・ポン(Ludivine Pont)最高経営責任者(CEO)は、今年初めに退任した。後任は発表されておらず、同社は当時米「WWD」に対し、取締役会が「ポン前CEOが担っていた職責を取締役間で再配分した」と説明していた。一方、現地メディアは、親会社イタルモビリアーレ(ITALMOBILIARE)の戦略開発責任者兼取締役、ロベルト・ペゼンティ(Roberto Pesenti)がブランドの経営を率いると報じている。「サンタ・マリア・ノヴェッラ」は、ペザンティ家が率いる投資会社イタルモビリアーレの出資を受けて以降、海外展開と事業変革を加速してきた。イタルモビリアーレは20年に「サンタ・マリア・ノヴェッラ」へ初めて出資し、21年に完全子会社化した。同社にとって、香水・化粧品業界への初の投資案件だった。
「サンタ・マリア・ノヴェッラ」はイタルモビリアーレの傘下入り後、ブランドの伝統を生かしながら新たな商品開発を進め、サステナビリティへの要請に対応して一部商品も改良した。22年には、800年を超えるブランド史上初のオードパルファム“リリス”を発売するとともに、スキンケアのラインアップを拡充。若い消費者層の獲得にもつなげた。