ファッション

家族と共に透明性のあるメード・イン・イタリーを追求する「ロレーナ アントニアッツィ」 季節に縛られない“ノーシーズン”に本腰

有名ラグジュアリーブランドのニット製品も生産するイタリアのシュテルネ インターナショナル(STERNE INTERNATIONAL)のウィメンズウエアブランド「ロレーナ アントニアッツィ(LORENA ANTONIAZZI)」は、ファミリーの絆を大切にしながら、30年以上ニットウエアを中心とした質の高いモノ作りに取り組み続けている。もともとデザイナーのロレーナ・アントニアッツィ(Lorena Antoniazzi)と夫のジャンルカ・ミラバッシ(Luca Mirabassi)最高経営責任者(CEO)が1993年に立ち上げた同ブランドは、ドイツ市場向けに作った30着のニットからスタート。ドイツで成功を収めた後、パリでの展示会でも評判を呼び、販路を世界へと広げた。ビジネスが拡大した現在は、2人の息子も家業に従事。長男のアンドレア(Andrea)はミラノを拠点に最高商務責任者(CCO)として営業やマーケティングを総括し、次男のニコラ(Nicola)はペルージャをベースに最高執行責任者(COO)として生産を監督している。また、ミラバッシCEOは社員のことも家族のメンバーと考え、働きやすい環境づくりや若い職人の育成にも力を入れている。

「ロレーナ アントニアッツィ」では現在、自社工場で職人の手仕事とテクノロジーを組み合わせて生み出すニットを核に据えつつ、布帛製品も含めたトータルコレクションを提案している。その特徴は100%メード・イン・イタリーへのこだわり、そしてトレーサブル(追跡可能)であることだ。2013年に特許を取得したシステムを活用し、専用のQRコードで各製品の生産工程をたどることができるようになっている。

そんなブランドのモノ作りへの姿勢を発展させたのが、時代や季節という枠を超えて長く受け継がれていく製品を生み出すことを目指すプロジェクト“ノーシーズン”だ。25年に「サステナビリティ」と「リサーチ」を柱にローンチした同プロジェクトでは、GOTSなどの認証を受けた素材とサプライチェーンを生かした持続可能な生産方法を採用。コットンやカシミア、シルクなどを用いたニットウエアを中心に、季節を問わず人生のあらゆる瞬間を彩るワードローブを提案している。ウールン商会がインポーターを務める日本では、“ノーシーズン”のコンセプトを広めるため、10月7〜13日の阪急うめだ本店を皮切りに大阪高島屋、藤崎、帝国ホテル東京、札幌三越でイベントを開催予定だ。

今回「WWDJAPAN」では、イタリア・ウンブリア州のペルージャにある本社と工場を訪問。ミラバッシCEOに、イタリアでのモノ作りへのこだわりや“ノーシーズン“誕生の背景から業界の現状への考え、今後の展望までを聞いた。

30年以上貫くモノ作りの哲学

WWD:創業から30年以上が経つが、服作りにおいて大切にしていることは?

ジャンルカ・ミラバッシ=シュテルネ インターナショナルCEO(以下、ミラバッシ):創業当初から私たちは他のブランドを参考にするのではなく、自分たちの感性を大切にしてきた。だからこそ市場にあるものとは少し違うニットを提案できたのではないかと考えている。服作りにおいて、まず大切なのは高い品質だ。そして着心地が良く、仕事などの日常生活でも着やすいものであること。さらに、その服を着ることで女性が自分自身を美しいと感じられるものでなくてはならない。現在の市場には似通った商品があふれていて、ファストファッションの登場によって、その傾向はさらに加速したのではないかと感じている。その中でも私たちの哲学は変わらず、流行を追いかけるのではなく、自分たちが本当に作りたいものを生み出すことに取り組み続けている。

WWD:ブランドの核であるニットにおける強みは?

ミラバッシ:人気があるのは、オリジナルのブランド糸を組み合わせて生み出す特別なニットだ。例えば、「ロレーナ(LORENA)」と名付けたニットはカリアッジ(CARIAGGI、イタリア高級紡績メーカー)が製造したウール、シルク、カシミアを組み合わせた糸を用いたもの。そのため、カシミアだけを使う場合と比べて価格を抑えることができる一方で、肌触りはとても良い。品質の高い商品を適切な価格で提供することも大切だと考えている。

WWD:シーズンごとのコレクションとは別に提案する“ノーシーズン”生まれた背景とその特徴は?

ミラバッシ:2024年からサステナビリティに関する取り組みをさらに進め、自分たちだけでなく一緒に仕事をしている企業も含めて、生産体制を見直している。その取り組みから生まれたのが、糸から最終製品に至るまで、サステナビリティに関する認証を重視した“ノーシーズン”だ。通常のシーズンコレクションとは異なる考え方で制作し、年間約8カ月間着用できるアイテムを年1回発表している。また毎回全く異なる素材を使うのではなく、同じ素材を継続して使用していくことにより素材自体の無駄をなくし、セールも行わない。まだ始まったばかりのプロジェクトではあるが、今後のコレクションの在り方はここにあると思う。

100%イタリア製を支える透明性と職人技

WWD:「ロレーナ アントニアッツィ」では独自のシステムによって100%イタリア製であることを明確に示しているが、ファッションの世界で「メード・イン・イタリー」という言葉が濫用されているように感じる。その信頼性が揺らぎ、生産背景について議論が起こっている現状をどのように見ているか?

ミラバッシ:イタリアのファッション業界は今、大きな危機に直面している。イタリアだけの話ではないが、価格は非常に高くなっている一方、品質が伴っていない製品も多い。メード・イン・イタリーに関して言うと、現在の制度では2割の工程がイタリアであれば「メード・イン・イタリー」と名乗ることができてしまう。しかし、海外でほとんど生産した製品を輸入し、ラベル付けやアイロンがけなどの最終工程だけをイタリア国内で行うことは、本当の意味でのイタリア製ではない。実際に手に取り、使ってもらえれば、その差は分かるだろう。また、今の若い世代はインターネットを通じてさまざまな情報を得ている。商品の生産背景についても理解するようになっていて、単に「メード・イン・イタリー」と記されているだけでは、その価値を認めなくなっているのではないだろうか。

WWD:モノ作りの現場では高齢化が進み、技術の継承も課題になっている。職人の育成にも取り組んでいるというが、具体的にはどのようなことを行っているのか?

ミラバッシ:多くのイタリア企業が生産拠点を海外に移す中で、熟練の職人が引退してしまうと、その技術を受け継ぐ次の世代がいなくなってしまう問題が起きた。一方、私は以前からこうした状況になることを懸念していたため、13年から若い世代を育成するための取り組みとしてニットウエアのコースを始め、地元の技術高校などに出向いて学生たちに仕事について話すとともに、その親にも職人という仕事の価値を伝えることに努めてきた。親としては子どもに大学を卒業してほしいと考えることも多く、職人という道を理解してもらうのは簡単ではなかった。しかし、ここで働き始めた若者たちが自身の経験を友人に伝えることで、徐々にその輪が広がっている。そんな若者たちは、私の誇りでもある。そして私は社員を家族のメンバーだととらえていて、工場の中を歩きながら困っていることがないかを聞き、常に何か改善できることはないかを考えている。働く場所は、楽しく仕事ができる環境でなくてはならないというのが、私の哲学だ。

目指すのは実店舗を軸にした販路拡大

WWD:ビジネスが拡大する中、ブランドにとって重要な市場は?

ミラバッシ:現在は21カ国に製品を輸出しているが、この5年ほどで市場は大きく変化した。私たちにとって重要な市場は広がっているが、特に韓国や台湾、中国を含むアジアは大きく成長している。また近年、中東にも進出した。一方で、戦争や政治情勢の変化によって市場の動きにブレーキがかかるなど、先行きを予測しにくい状況でもあると思う。以前からビジネスを行ってきた市場である日本についても、変化の時期を迎えているように感じる。ビッグブランドは路面店を増やしている一方で、私たちのような中規模のブランドには、それとは異なる新しいビジネスモデルが必要になるだろう。時間はかかるかもしれないが、日本のパートナーであるウールン商会と今後の展開について話し合いながら広げていきたい。

WWD:今後、グローバル市場でブランドをさらに確立していく上での戦略や展望は?

ミラバッシ:私たちは実店舗の存在を大切にしている。というのも、製品そのものだけではなく、それを理解し本当に愛してくれる人が、お客さまに価値を伝えることが重要だからだ。今後は直営店を増やすことに加え、フランチャイズやショップ・イン・ショップなどを通して拡大していくことを目指している。

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