
立教大学を拠点に活動するファッションサークルの服飾デザイン研究会(以下、FDL)は8月23日、東京タワーメディアセンター3階のスターライズタワーでファッションショーを開催した。
全71人が所属するFDLは今回、計26ルックを発表。ショーには「偶像崇拝」「熱狂的な崇拝」などを意味する「Idolatry」をテーマに掲げ、会場中央には羽根に囲まれたベッドを設置した。その上空には白い造花が天へと伸びるように吊り下げられ、テーマの世界観を演出した。
なぜ「Idolatry」をテーマに選び、服を通して何を表現したのか。FDL代表の井堤寛太に、ショーに込めた思いを聞いた。
井堤寛太「FDL」代表 インタビュー

WWD:今回のショーで「Idolatry」をテーマにした理由とは?
井堤寛太(以下、井堤):きっかけは、私自身がアイドルに熱中した経験です。誰かに憧れる中で、「自分はなぜこの人に引かれるのだろう」と考えるようになり、同時に自分自身についても振り返るようになりました。
今の自分のファッションや外見、好きなもの、価値観を考えてみると、その多くは、これまでに出会った誰かや何かから影響を受けて形成されています。完全に「自分だけから生まれた個性」というものは、実はほとんどないのかもしれない。私たちは誰かの言葉や姿、作品、考え方に影響を受けながら、自分自身をつくっているのではないかと考えました。そこで今回は「アイドル」を芸能人や特定の人物に限らず、自分にとっての憧れや「こうありたい」と思う理想の存在として捉えています。

「Idolatry」は「偶像崇拝」を意味し、盲目的な崇拝や心酔といった、少し批判的なニュアンスを持つ言葉です。あえて肯定的な「Idol」ではなく「Idolatry」を選んだのは、「憧れ」という感情について、一度立ち止まって考えてほしいと思ったからです。
なぜ人は誰かに憧れるのか。なぜ自分ではない誰かに理想を見いだすのか。そして、誰かに憧れることで、自分はどのようにつくられていくのか。「Idolatry」という言葉が持つ少しの違和感を入り口に、そうした問いを観客の中に残したいと考えました。
WWD:「Idolatry」という言葉にはネガティブな意味もありますが、憧れの危うさを表現したショーなのでしょうか?
井堤:憧れを否定したり、誰かを崇拝することの危うさを問いただしたりすることが目的ではありません。今回のショーで描きたいのは、あくまで「Idol=憧れ」です。
むしろ、誰かに憧れることや、その感情が自分自身を形づくるきっかけになることを肯定したい。「Idolatry」という言葉によって生まれる違和感を入り口にしながら、最終的には「憧れ」という感情そのものを肯定することが、このタイトルに込めた意図です。
WWD:「憧れ」と「自分らしさ」には、どのような関係があると考えていますか?
井堤:誰かに憧れて、その人のようになりたいと思うことは、ときに「真似をしている」「自分らしさがない」と捉えられることがあります。でも、私たちはむしろ、自分が何に憧れ、何に影響を受けて今の自分になったのか、その過程そのものを肯定したいと考えています。
誰かから影響を受けることと、自分らしくあることは相反するものではありません。さまざまな憧れや影響が積み重なり、それを自分なりに解釈していくことで、結果的にその人だけの個性が生まれるのだと思います。
WWD:その考えを、ショーではどのように表現していますか?
井堤:デザイナー一人ひとりが、自分にとっての「アイドル」を考え、そこから受けた影響や「こうありたい」と思う姿を、それぞれのルックに落とし込んでいます。
同じ「アイドル」というテーマでも、完成する服は異なります。その違いこそが、それぞれの憧れを通して形成された「自分」だと考えています。異なるバックグラウンドを持つメンバーが、それぞれの解釈で1つのテーマを表現できることも、学生団体としてショーを行う意味の一つだと思っています。
WWD:ショー全体はどのような構成にしましたか?
井堤:「憧れの形成、崩れ、再形成」という流れで構成しています。人は誰かや何かに憧れることで、理想の自分を思い描きます。ただ、その理想がずっと同じ形であり続けるとは限りません。自分自身が変化したり、現実との違いに気づいたりすることで、一度憧れが崩れることもあります。
それでも、その経験を経て、もう一度「自分はどうありたいのか」を考え、新しい理想をつくっていく。誰かを見つめることから始まり、影響を受け、迷い、変化しながら、最終的には自分自身の形になっていく。その過程をショー全体で表現しています。
WWD:このショーを通して、最も伝えたいことは?
井堤:「私たちは、何によって形成されているのか」という問いです。その答えの一つとして、今回私たちは「憧れ」を提示します。それぞれが何に憧れ、何に影響を受け、どんな「こうありたい」を抱えているのか。一人ひとりの憧れの物語をルックとして表現することで、誰かに影響を受けることもまた、その人自身の個性をつくる一部なのだと伝えたいです。

服飾デザイン研究会(FDL)
「Idolatry」ルック一覧
PHOTOS:KAZUSHI TOYOTA