ファッション

創業から15年で着実な成長 「アミ パリス」創業者に聞く、今も続く「仲間(=アミ)」へのモノ作り

フランスのブランド「アミ パリス(AMI PARIS)」は5月23日、東京・お台場で開かれた夏のフェスティバル「スター アイランド」とのパートナーシップに基づき、オープニングアクトとして花火と共演するドローンアートでブランドの哲学などを表現した。ブランド立ち上げから15年、自室のアパートで始めたブランドは着実に成長している。ドローンショーのために来日したアレクサンドル・マテュッシ(Alexandre Mattiussi)=「アミ パリス」創設者兼クリエイティブ・ディレクターに15年の軌跡やドローンショーに込めた想いを聞いた。

PROFILE: アレクサンドル・マテュッシ

アレクサンドル・マテュッシ
PROFILE: 「アミ パリス」創設者兼クリエイティブディレクター:1980年生まれ。パリのファッションスクールを卒業後、「ディオール(DIOR)」や「ジバンシィ(GIVENCHY)」「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」でメンズウエアの経験を積む。2011年、自身のブランドを設立

「アミ パリス」は「仕事以上の存在」
「50歳になることへの不安はない」

WWDJAPAN:ブランドを立ち上げて2、3シーズン目に訪れた展示会はごくごく小規模で、アレクサンドルへのインタビューもその会場の小さなバルコニーで行った。あれから15年が経過し、ブランドはパリ・メンズ・ファッション・ウイークにおける代表的な存在の1つとなり、店舗網も国内外に広がっている。この現状について、どう思う?

アレクサンドル・マテュッシ「アミ パリス」創設者兼クリエイティブ・ディレクター(以下、アレクサンドル):今はとても幸せで、感謝の気持ちでいっぱい。「アミ パリス」のデザイナーという仕事は、私にとって「人生最高の仕事」ではなく、「仕事以上の存在」。最初は自分の名前を冠にして、今も私が愛することの全てを詰め込んだ私の物語を発信している。私にオンとオフの区別はなく、全てが一体。だからブランドの成長は、私自身を「仲間(=フランス語で『アミ』)」として受け入れてくれていることの証のように思っている。ブランドを立ち上げてから15年を迎えたけれど、生まれてから46年の旅がこんなに素晴らしいものになるなんて思ってもいなかった。

50歳になると、ちょっとしたパニックを迎える友達もいるようだ。「え、もう50歳!?準備はしていたつもりだったけれど……」と話したり、転職したりするなど、新しい人生を考える人も多い。でも僕は、そんな友人とは逆のパターン。「あぁ、46歳かぁ」とは思うけれど(笑)、50歳になることの不安はない。ただ「アミ パリス」を自分の子どものように捉える機会は増えていて、その成長を見守るような気持ちになることもある。

CEOは、最初のお客さまの1人
仲間という存在が有機的に広がっている

WWDJAPAN:「アミ パリス」は当初から「アミ」、アレクサンドルの仲間に向けたモノ作りを心がけることで、等身大のリアルなスタイルで支持を広げてきた。一方でブランドは大きくなって、今はまだ会ったことも、見たこともない”仲間”に向けた服づくりもしなければならない。規模の拡大と共に仲間に向けたモノ作りは、難しくなっていない?

アレクサンドル:素晴らしいチームに恵まれたこともあり、今も「アミ」、仲間に向けたモノ作りという根幹が大事にできている。例えば最高経営責任者のニコラス・サンティ・ウェイル(Nicolas Santi-Weil)は、ブランド初のポップアップを訪れてくれた最初のお客さま。彼とは(ブランドを立ち上げた)2011年に出会い、今につながっている。もうまるで老夫婦みたいな関係なんだ(笑)。ブランドには家族や仲間が今なお存在し、全てが有機的につながり、広がっている。

その点において大事なのは、私たちは洋服を作っていること。「アミ パリス」の主力は、洋服。毎シーズン、素敵なニット、良いジーンズを作ることに注力している。洋服を介して育まれるつながりは、バッグやシューズを通して生まれる関係性より強い。結果、市場が広がっても、「アミ」という関係性の構築に役立っている。ブランドを立ち上げた頃から、「人々が着られる洋服」で成功したいと思ってきた。だから私にとっての成功は、お客さまとのつながりだ。

成功しているデザイナーの中には、洋服を売っていない人もいるだろう。バッグやシューズ、イメージ、そしてセレブリティーへの衣装作りに終始している人もいる。でも私は、現実的でありたい。世界中の、多くの仲間のワードローブの一部でありたい。

そう思い続けられるのは、毎日、誰かが僕の洋服を着ているのを目にしているから。本当に空港でも、飛行機の中でも、ブラジルのビーチでも、東京の街でも、誰かが、僕の洋服を着ているんだ。彼らは、僕のことを知らないかもしれない。というか、知らない人も多い。それはアレクサンドル・マテュッシではなく、「アミ パリス」を仲間だと思ってくれている証拠。そしてみんな僕を知らないから、今でも仲間や家族との生活を送ることができている。パリでは声をかけられる時もあるけれど、誰も「アレクサンドル・マテュッシ」とは呼ばず、「アミ」「アミ」と声をかけてくれる。僕個人ではなく、ブランド、そしてチーム全体を仲間だと思ってくれている証だと思う。

発表するのは、「僕のニットやジーンズ」
ではなく、「みんなのニットやジーンズ」

WWD:最近、コレクションを作るときは、どんなことを考えている?

アレクサンドル:これまで以上に「アミ パリス」のルーツに根ざしたいと思っている。本物のファッションを作りたい。自分たちのことを「保守的」とは思わないけれど、「現実的」ではある。「アミ パリス」では、葉っぱでドレスを作ったりはしないだろう(笑)。良質な生地と仕立てで作る、毎日着たくなるような美しい洋服を、適切な価格で提供したい。自分が有名になったり、僕のナルシズムを表現するのではなく、仲間に喜んでもらいたい。そのために最適の生地、色、シルエットを選び、「私たちなら、こうやってスタイリングするけれど、どう?」という気持ちでスタイリングしている。

でも一度ファッションショーで発表したら、その中から何を選び、どう着るか?は、みんな次第。その瞬間からコレクションは「僕のニット」「僕のジーンズ」ではなくなり、「みんなのニット」「みんなのスカート」になるんだ。だからさまざまなモデルを登場させる。毎回財務を担当するチームとはモメるけれど、多くのモデルに出演してもらうことで、さまざまなパーソナリティを感じてもらうことが大事だ。だから1人のモデルは1ルックだけを着る。着替えない。お金はかかるけれどね。

時代に応じてデザイナーを変えるのではなく、
デザイナーが時代に応じて変わることが大事

WWD:今はデザイナーが目まぐるしく入れ替わる混乱の時代だ。そんな中で創業デザイナーとして15年間、トップに立ち続けている。

アレクサンドル:さすがに売り上げが少し下がったとしても、僕が交代させられることはないと思う(笑)。「アミ パリス」にとって大事なのは、時代に応じてデザイナーを変えることではなく、時代に応じてデザイナーが変わること。そしてチームが変わることだ。毎日いくつものメッセージを受け取る。店舗設計の建築家や東京のチーム、アメリカのファンまで本当に数多い。でも「アミ パリス」なら、僕が即座に返信できる。こんな組織であり続けることが大事だ。

ラグジュアリーブランドで働いていた時は、クリエイティブ・ディレクターに生地の承認を取るためだけに何時間も並んで待たされるなんて当たり前だった。朝10時にクリエイティブ・ディレクターの部屋の前で並び始めて、ドアが開くのは午後。オッケーが出なければ、また生地を探し直して、翌日にアポイントを取り直して、同じことを繰り返すーー。すごく嫌なルーティーンだった。でも僕のオフィスは、ドアが常に空いている。

「友達でいてくれて、ありがとう」
を示して、洋服を届けるまでを最適化したい

WWD:日本ではカフェを開いたり、今回はドローンショーを開催したり。パリのファッションショーも年々、スペクタクルだったり、エモーショナルだったりに進化している。イベントを重要視するのはなぜ?

アレクサンドル:「ファッションで大事なのは、ロジスティクス」だと思っている。単なる物流という意味ではなく、洋服を届けるまでの流れを最適化したい。商品が良いのはもちろん、店舗の立地、そこで働くスタッフ、照明や音楽など全ての調和が大事な中で、カフェで飲むコーヒーの香りも楽しんでほしいし、イベントで思い出を作ってほしい。みんなに「友達でいてくれて、ありがとう」と思っている。だからイベントで楽しんでほしい。「アミ パリス」という物語を素晴らしいものにしてくれたみんなに感謝の気持ちを示して、幸せになってもらいたい。

でも「アミ パリス」が提供するイベントは、絢爛豪華とは少し違うと思う。ブルジョワ(裕福な市民)になるのは危険だ。選民意識が芽生えてしまうのは、「アミ パリス」らしくない。父親は昔、「人生で大事なのは、3食をキチンと食べること。でも朝はコーヒーとパン1切れで十分。昼と夜は、肉が1切れ。夜はそこにスープがあれば十分だ。金持ちになっても、人間は毎日キャビアとフォアグラを食べ続け、シャンパンを飲み続けることはできないから」と話していた。あくまで地に足がついていることが大事だ。地に足がついていて、気軽。でも、控えめにはならない。自分の思いは、キチンと伝えるべきだ。そう思ってイベントを企画している。ドローンショーと花火の共演は、きっと特別な思い出の一部になるだろう。たった8分のショーかもしれないけれど、東京へのパリからのポストカードのような感覚で企画した。「アミ」にとって、素敵な思い出になってくれたら嬉しい。

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