ファッション

デンマーク発「フリッツ・ハンセン」のクリエイティブ・ディレクターに聞く 世代を超えて引き継がれる価値

PROFILE: エルス・ヴァン・ホーレベーク / 「フリッツ・ハンセン」クリエイティブ・ディレクター

エルス・ヴァン・ホーレベーク / 「フリッツ・ハンセン」クリエイティブ・ディレクター
PROFILE: ベルギー生まれ。ベルギーのLUCAスクール・オフ・アーツのインテリアデザイン科卒業。「ヴィトラ」をはじめ、大手デザイン企業のインテリアデザイナーとして活躍。ロンドンでコワーキングスペースを展開するザ オフィス グループのインテリアデザイン部門の責任者を経てコペンハーゲン拠点の「アンド トラディション」のクリエイティブ&ブランドディレクターを務めた。2024年11月から現職

デンマーク発インテリア「フリッツ・ハンセン(FRITZ HANSEN)」のエルス・ヴァン・ホーレベーク=クリエイティブ・ディレクターが来日した。彼女は、「ヴィトラ(VITRA)」でデザイナーとして活躍後、デンマーク発インテリア「& トラディション(AND TRADITION)」のクリエイティブ・ブランドディレクターを約5年間務めた人物。「フリッツ・ハンセン」といえば、アルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen)の“セブン チェア”や“エッグ チェア”などミッドセンチュリーの北欧名作家具で知られるブランド。一方で、NENDOやセシリエ・マンツ(Cecilie Manz)などと協業し、現代の名作を生み出している。来日したホーレベークに、話を聞いた。

彼女の来日の目的は、「フリッツ・ハンセン」の日本のチームと会い、市場を知ることだ。昨年、クリエイティブ・ディレクターに就任してから世界各市場を回ってきたという。その中でも、日本市場における店舗作りは参考になるようだ。ホーレベークは、「日本のショップの作り方はヨーロッパと違う。感謝の気持ちを感じる落ち着いた空間で、入店する全ての人歓迎する雰囲気がある。誰もが居場所がある快適さがある一方で、保守的なヨーロッパと違い実験的な面もあり、支払いなどテクノロジーの導入が進んでいる」と話す。日本の消費者動向やどんなブランドが人気か、それらがどのようにコミュニケーションを取っているかリサーチするのも目的だが、日本市場はさまざまな面でインスピレーション源になるという。

創業以来変わらない“ラグジュアリーは品質から”という哲学

 「フリッツ・ハンセン」は1872年の創業以来、“ラグジュアリーは品質から”という徹底した姿勢を貫いてきた。ブランド哲学について彼女は、「機能性と美しさが同居するタイムレスなデザイン。それがブランドの歴史を作ってきた。デンマークデザインのルーツがわれわれにはあるといってもいい。クラフツマンシップに裏付けされた妥協ない品質の高さ、快適さといったものが、使う人に安心感と愛着をもたらしている」と話す。
クリエイティブ・ディレクターとしての役割は、単にデザインの統括やブランドイメージの監督だけではない。「デザイナーの選別から製品デザイン、生産開発から発売、製品のストーリーやコミュニケーション方法、空間デザインまでA to Z全てに関わる。それがブランドアイデンティティーになるから」。協業するデザイナーは、ベテランから若手まで幅広い。ホーレベークは、デザイン学校の学生の卒業作品などにも注目しているという。協業する基準について、「機能性やモノ作りに対する知識はもちろん、『フリッツ・ハンセン』を正しい方向に引っ張ってくれる力があるデザイナー。お互いに強いコネクションを感じ率直に話し合える関係であることが大切だ。ある意味デザイナーとの協業は結婚のようなもの」と話す。

メーカーだから提供できる世代を超えて使える家具

今後の強化点については、「新作家具の発表はもちろん、過去の素晴らしいアーカイブがあるから、それらを掘り起こしたい」と話す。「フリッツ・ハンセン」にとって日本はデンマークに次ぐ第二の市場だという。日本市場では、コロナ以降、年商は右肩上がりだ。「日本とは親和性が高い。多くの日本人がブランドに興味を持ってくれている。インスタグラムなどSNSを入り口に、ECやショップなどに来てもらえるようにあらゆるメディアを通して接点を持ちたい」。一方で、ヤコブセンなどデザイナー名と「フリッツ・ハンセン」がリンクしない消費者も多いという。

ブランドにとっての一番の課題は、認知度アップだ。「ファッションブランドのように多くの人に知ってもらいたい。われわれには、それだけの長い歴史と品質の高さがある。1脚の椅子が投資になる。リペアして次の世代に引き継ぐことができる」と話す。現在「フリッツ・ハンセン」では、同ブランドの使用済みの家具を回収し、再利用するサーキュラープログラムに力を入れ、家具のライフサイクルを伸ばす活動をしている。「これは、メーカーでなければできないこと。世代や時代を超えて使うことができるのが『フリッツ・ハンセン』の一番の強み。アイコニックな製品を生かし続けることがわれわれの使命だ」。

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