4月13日に開幕する2025関西・大阪万博の「大阪ヘルスケアパビリオン」には、441社の大阪にルーツを持つヘルスケア関連企業が出展する。中でも、ロート製薬、ミルボン、タカラベルモントのブースから、各社が見据える“2050年の姿”を紹介する。
ロート製薬は2つのブースで
“企業の幅”を見せる
ロート製薬はヘルスケアパビリオン内に2つのブースを出展する。1つ目は、2050年に向けて同社が開発中の“アイ・センシング技術”を模擬体験できる“アイステーション”だ。“アイ・センシング技術”とは目の状態を見るだけで健康状態を把握できるもの。“カラダ測定ポット”で測定したパーソナルヘルスレコード(以下、PHR)による目の健康情報と6つの設問に対する回答をもとに、目年齢、目元の肌年齢、目線による脳パフォーマンス、視覚ランクなどを表示。目の疲労の要因を推測し、対策の提案を行う。
そのほか、下向きや正面などどんな角度でも使えるミスト式点眼器などの“未来の目薬”を展示する。近視進行の抑制や老眼の改善、脳リフレッシュといった機能の拡大に加え、好みの香りが選べるタイプの目薬など、目薬が持つ可能性を掲示する。
化粧品から医薬品までを網羅するロート製薬にとって、トップシェアをほこる目薬カテゴリーは主軸事業の1つ。広報・CSV推進部の岡田真由香・大阪デスクは「この機会にデジタルデバイスとの付き合い方や目の健康に意識を向けてほしいと考えた」と狙いを説明する。また、「万博は若者が未来を想像してワクワクする場だと考えている。これから仲間として働く人やさまざまなバックグラウンドを持つビジネスマンとの出会いなど、今後の事業発展につながることを期待する」と続けた。
2つ目は、パビリオン内の“ミライの都市ゾーン”に出展する再生医療のブースだ。ここでは、大型ビジョンを通して再生医療が日常に浸透した都市生活を擬似体験できる。中央には、小型化した次世代の自動培養装置を設置する。広報・CSV推進部の圓尾奈緒美・大阪デスクは「われわれはバイオマテリアルが各クリニックに置かれる未来を見据えている。そうすると、その場で患者の細胞を入れ、パーソナライズした薬をすぐに患者に投与できる。輸送の手間や凍結する必要がなくなり、時間やコスト削減につながる」と説明。「距離を感じてしまいがちな再生医療が身近に感じる機会になったらうれしい」と続けた。
ミルボンは
“2050年の美容室の姿”を提案
ミルボンは、「『あなたらしく・美しく生きる』ためのミライの美容室」と題し、未来の美容室のありかたを提案する。同社が見据える50年の美容室は、髪を切るだけの場所ではなく、髪、肌、インナーケアをする場として領域が広がり、トータルビューティを提案する空間になるという。
同社はこの考えのもと、23年からリアルとデジタルを融合した新しい形の美容室を提案するスマートサロン戦略を進めており、ブースではさらに進化した空間を体験できる。PHRをもとに自分に合ったスキンケア、ヘアケア、インナーケアを提示するサービスの提供や、これまでの美容や健康の変遷を紹介するムービーの上映などを行う。
コーポレートコミュニケーション部の木村義則マネージャーは、「美容室という場がこれからさらに発展すると多くの人に知ってもらい、より美容師とのコミュニケーションを生むきっかけとなることが1番の目的」と話す。また、「出展を通して得る普段は得ることができない髪以外の健康データがこれまでにないアプローチの製品開発につながること」にも期待を示した。
タカラベルモントは
空間で“美の多様性”を表現
タカラベルモントは、「量子飛躍する美の世界」と題したブースで、美の固定概念に問いを立てて多面的な視点で美の意味を見つめ直すことを提案する。計374個の多面体を組み合わせて制作したクリスタルのインスタレーションで、「内面と向き合って自分らしい美しさに思いを馳せる」場を目指した。アートデザインは、宇宙建築を研究する立命館大学の山出美弥准教授が“宇宙インフレータブル構造”の形に着想して制作。
広報室の大田彩乃さんは「当社は1970年の万博でパビリオンを出したことを機に飛躍した経験を持つ。今回も同様に世界中の人に知ってもらい、飛躍の契機となればうれしい」と話す。
「大阪ヘルスケアパビリオン」の想定来場者数は280万人。人種や年齢を越えて幅広い人とタッチポイントを持つ場として、各社の期待の大きさを感じた。開幕後、各社の出展がどのような影響を及ぼすか、25年後にはどの程度実現されているかなど、しばらくは万博に関する話題は尽きなそうだ。