
「カルティエ(CARTIER)」は3月6日、フランス大使公邸で2025年大阪・関西万博(以下、大阪・関西万博)のウーマンズパビリオンについてトークセッションを行った。同ブランドは長年にわたり女性起業家などへの支援を行ってきており、ウーマンズパビリオンを出展するのは2020年ドバイ万博に続き2回目。会期中はパビリオンで女性にフォーカスした展示をはじめ、2階の“WA”スペースで現代の女性の役割や状況について講演会やディスカッションを行う。
“WA”とは、対話の“話”であり、平和の“和”、循環の“輪”、全ての人が共に生きる生命の輪を意味する人が集まる場所“アゴラ”を意味する。テーマに合わせてリーダーや専門家が意見を交わす場として万博期間中150以上のイベントを予定している。6日のトークセッションでは、“WA”スペースで登壇するアドバイザーらが自身の担当分野について語った。
女性の社会的立場や都市のあり方について考える
「役割とアイデンティティー」を担当する慶應義塾大学教授の宮田裕章は、日本における女性の社会的立場について言及。世界的に女性の社会的立場が低く、シングルペアレンツの貧困率は5割を超えると述べた。日本の社会では、離婚した場合の法的枠組みにおいて子育て負担は女性であり、非正規雇用の割合が高いため経済的にも困難なケースが多いという。同氏は、「女性のエンパワーメントは男性もコミットしていくべき。女性に光を当てて、未来を考えることで、あらゆる立場の人の課題解決につながるはずだ」と述べた。
東京都公立大学法人理事(国際担当)のウスビ・サコ(Oussouby Sacko)は、「都市」をテーマにしたセッションを担当する。サコ理事は、京都精華大学元学長でアフリカ人として日本の大学の学長を務めた。長年にわたり、住宅デザインや生活様式の調査研究を行っている。彼は、「近代都市は分断により経済的生産性を保ってきたが、その時代が終わりダイバーシティーこそが重要だ」とコメント。パビリオンを設計した建築家の永山祐子とセッションで、今あるべき都市について語り合うという。
女性が活躍するための教育やアート、メディアの役割
「教育と政策」を担当するのは、グローバル・ベンチャー・キャピタル企業MPower Partnersのキャシー松井ゼネラル・パートナーだ。経済学者である彼女は、25年以上前に日本経済再建の柱として“ウーマン”と“エコノミクス”を組み合わせた「ウーマノミクス」を打ち出した人物。高等教育の機会が少ない約15カ国からの女性の教育機関であるアジア女子大学の支援財団理事も勤めている。松井氏は、「戦争、テロ、病気、貧困といった世界の問題を解決する唯一の鍵が女性の教育だ。それに投資する方が何十倍もリターンがある」と強調。パビリオンでは、アジア女子大学の卒業生であるロヒンギャ難民が歩んできた人生についてセッションを行う。
宮地純カルティエ・ジャパン プレジデント&CEOは「セッションを通して新しい視点に触れ、それをコミュニティーに持ち帰り伝えてもらえれば。共感の積み重ねが未来を変える力になる」とコメントしている。