ファッション

「パリ国際ランジェリー展」リポート “見せランジェリー”の充実で進むウエアとのボーダレス化

ファッションのランウエイショーでも、下着から着想を得たランジェリールックやランジェリーを見せる着こなしは定着し、ウエアとランジェリーのボーダーレス化が確実に進んでいる。今回の「パリ国際ランジェリー展(SALON INTERNATIONAL DE LA LINGERIE)」では、ランジェリーとファッションの関係について、検索エンジンのタグウォーク(TAGWALK)との共同研究による興味深い調査が報告された。2016年にアレクサンドラ・ヴァン・ハウテ(Alexandra Van Houtte)が設立したタグウォークは、パリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨークのランウエイショーの画像を、テーマ、色、スタイル別に紹介している。「パリ国際ランジェリー展」との合同調査で2億件以上のルックを分析し、ランジェリーがファッションに与える影響が大きいという結果が出た。ランジェリーにインスパイアされた作品が多く見られた2025年秋冬シーズン。キーワード別に、“見せるボディー”に分類されるルックが24年秋冬に比べて3倍、“レース”を使用したルックが45%増、“トランスペアレント”なルック24%増。さらに“見せるランジェリー”が19%増と重要なトレンドであると発表。2026年秋冬には、シアー素材や見せブラといったランジェリー傾向がさらに拡大すると予測している。

自分が楽しむための“ニューセクシー”

この調査が示しているように、同展では“見せランジェリー”が充実。ジャケットからチラ見せしたり、ウエアとして着用できるボディスーツが多く見られた。日本では、肌見せファッションは若年層のトレンドと受け取られがちだが、欧州では大人の女性を魅力的に見せるスタイルとして定着している。「オーバドゥ(AUBADE)」や「シャンテル エックス(CHANTELLE X)」などが新作にボディースーツをラインアップしているのはその証拠だろう。

ヨーロッパのランジェリーにとって官能美は重要な要素で、同展はトレンドキーワードとして“ニューセクシー”を打ち出した。“ニュー”には、“誰かのためではなく自分に自信を持ち、人生を楽しむ”という意味が込められ、時代に合わせて“セクシー”という言葉の解釈にアップデートが加えられている。それを反映するかのように、レースはフェミニンな花モチーフよりシャープな印象の幾何学柄モチーフが多く打ち出された。金銀のラメ糸を使ったものも多く、余計な装飾は省き、カッティングなどで独自性を出している。大胆なデザインかつ、クールな強さを感じるスタイルだ。

カラーはグリーンの人気が継続。次のトレンドとして予測される淡いピンクと並べてそのコントラストで鮮度を出すブランドもある。ホリデーシーズンの定番である赤は、明るめのものが多く、プリントやレースには多くのブランドがレオパードモチーフを採用していた。

ボディーポジティブによるプラスサイズ市場の拡大

2018年頃からありのままのからだの美しさを肯定するボディーポジティブという言葉が急速に浸透し始めた。今は、ランウエイショーでもプラスサイズのモデルは欠かせない存在。各ブランドのブースで新作を披露するモデルも同様だ。また、同展ではカップやアンダーが大きいブラジャーのカテゴリーを“曲線(Curvy)”と表現し、プラスサイズ市場の重要性をアピールした。フランスの女性の76%がCカップ以上で市場の65%を占める。プラスサイズは最も成長しているセグメントだという。実際に、ワコール・ヨーロッパが展開しC〜KKカップのブラジャーを扱う「エロミ(ELOMI)」は、若々しいデザインにより若年層からの支持が高く、同社の売上高の31%を占めるほど好調だ。共通しているのは、理想の形に補整するのではなく、ありのままの美しさを肯定する姿勢だ。このようなサイズ展開の広がりの根底にあるのは、あらゆる体形に寄り添うボディーポジティブの概念だと感じた。

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