ファッション

シモーン・ロシャ「私は、メンズもフェミニンではなく、ポエティックでセンシティブ」

今春、ロンドンを拠点とするデザイナーのシモーン・ロシャ(Simone Rocha)が来日した。台北にオープンした旗艦店を祝った直後の弾丸ツアーで、日本に到着するとドーバー ストリート マーケット ギンザでのプレス向けランチに直行するなど忙しそうだ。忙しいと言えば、彼女は2021年には「H&M」とコラボレーション。23年にはメンズを本格的にスタートし、24年には「ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)」のゲストデザイナーとしてオートクチュール・コレクションに挑戦している。束の間の15分で、デザイナーを直撃した。

WWDJAPAN(以下、WWD):2月にロンドンで発表した、24-25年秋冬コレクションは、「ジャンポール・ゴルチエ」のゲストデザイナーとして1月に発表した24年春夏オートクチュール・コレクションを思わせる、グログランリボンを使ったコルセットやテーラードで新境地を開拓した印象だ。
シモーン・ロシャ「シモーン ロシャ」デザイナー(以下、シモーン):ゴルチエとの協業は、本当に面白かった。彼と一緒に、パリでアーカイブを見て、生地に触れて、あらためて厳格なのに扇状的、そして遊び心に溢れるテーラリングの本質を垣間見たの。クチュール・コレクションでは、そんなゴルチエのテーラードに忠実でありたかった。一方、私の「シモーン ロシャ」ではコルセットやテーラリングをベースとしたクリエイションを貫きながら、、ゴルチエの厳格なのに扇状的なムードをひっくり返したかった。私らしいチュールなどの生地を厳格なシルエットに加えることで、女性の体を称えつつも、もっと穏やかなムードにまとめたかった。どちらもコルセットが印象的なコレクションに仕上がったと思う。でも2つのムードはまるで異なっているわ。

WWD:同じくレースやチュール、パールを多用したメンズ・コレクションも、それなりに浸透してきた印象だ。特にバッグやブレスレットなど、パールのアクセサリーは男性にも支持されている。こんなにフェミニンなテイストが、男性に支持されると思っていた?
シモーン:私は、「フェミニン(女性的)」なメンズを作ろうと思っていないの。心がけているのは、ウィメンズ同様「ポエティック(詩的)」で「センシティブ(敏感)」なメンズ・コレクション。「H&M」とのコラボレーションでメンズに初挑戦した時は、正直いろんな反応をもらったわ。メンズ・コレクションにおける「マスキュリン(男性的)」と「フェミニン」の役割とは?なんて聞かれることもあった。正直、私はそんなこと一度も考えたことがなかったの(笑)。当時から私のメンズは、ウィメンズの写鏡みたいなものだから。だから、メンズも「ポエティック」で「センシティブ」。アクセサリーは、そんなスタイルにちょっとしたスパイスを加えるもの。ハーネスを組み合わせることで、機能性も高めたエッジーなアイテムなどを選んでくれる男性が増えて嬉しいわ。

WWD:忌憚なく言えば、「シモーン ロシャ」はメンズの始動からテーラード&コルセットまで、毎シーズン新境地を開拓して進化し続けている印象がある。一方、同じロンドン勢の中堅は、これまで通りヴィクトリアンテイストのドレスに終始している印象で、「シモーン ロシャ」のような進化を感じる機会が少ない。ヴィクトリアンテイストのドレスはロンドンらしいが、現代のTPO的にも、円安の今は価格的にも、日本のマーケットでは本当に難しい。このままだとロンドン・コレクションは、「バーバリー(BURBERRY)」や「ダンヒル(DUNHILL)」「JW アンダーソン(JW ANDERSON)」「シモーン ロシャ」を除き、インディーズブランドの学園祭みたいなイベントになってしまうのではないか?と危惧している。
シモーン:その通りだと思う。中国とアイルランドのハーフである私は、確かにロンドンでコレクションを発表しているけれど、ロンドンのデザイナーたちとは違う感覚を持っているのかもしれない。少なくとも私は、「ロンドンで発表している『ユニバース』なコレクション」を作ろうと思っているの。ここで言う「ユニバース」は、「世界的」であり、「普遍的」という意味ね。私は、ロンドンで発表しても、アイルランドで発表しても、東京で発表しても、共感してもらえるコレクションを作りたい。同じように去年でも、今でも、来年でも着てもらえるものでありたい。他のデザイナーもそんな感覚を意識すれば、状況は少し好転するんじゃないかしら?

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