ファッション

アントワープで学んだ日本人デザイナーの新ブランド「TSTS」 社会性と“着飾る喜び”を込めて

佐々木拓也デザイナーによるメンズブランド「ティーエスティーエス(TSTS)」が、2023-24年秋冬シーズンにデビューした。宮城の「リヴォルーション(REVOLUTION)」や大阪の「ルーム(RROOMM)」など3店舗での扱われ、「リヴォルーション」ではファーストシーズンながらバイヤー評価が高く、店頭での受注会も行われた。

佐々木デザイナーは1990年生まれ、青森出身。高校卒業後、文化服装学院とベルギーのアントワープ王立芸術アカデミー(Royal Academy of Fine Arts Antwerp)でファッションデザインを学んだ。26歳で帰国し、「サカイ(SACAI)」のインターンや「タイガ タカハシ(TAIGA TAKAHASHI)」の企画を経て、学生時代から交友があったパタンナーとともに2022年に「TSTS」を設立した。ブランド名は、デザイナー自身のイニシャルの繰り返しで、商品化前の“テストサンプル”の意味もある。

シリアスなメッセージと
キャッチーなクリエイションの融合

ブランドのキーワードは“2面性”。社会問題などシリアスなメッセージを込めながら、洋服の“着飾る喜び”を感じられるキャッチーなクリエイションを貫く。

ファーストシーズンは11型で、チャーリー・チャップリン(Charlie Chaplin)をメインモチーフに採用した。反戦や反差別の思いと、資本主義へのアンチテーゼを投げかけるため、映画「独裁者」(1940年)から同氏のグラフィックを選び、総柄のシャツ(6万500円)やジャケット(13万7500円)に落とし込んだ。ポジティブなムードを添えるため、ベースカラーは黒と白のほか、水色やピンクなどの快活なものも使った。学生時代から「チェックやストライプなど、視覚的に力強くプリミティブな柄が好きだった」といい、同シーズンは大判なギンガムチェックでキルティングジャケット(8万8000円)やパンツ(7万2600円)も制作した。

“死別”がテーマの24年秋冬
それでも洋服は「楽しんでこそ」

2024年春夏コレクションは “Departure”と名付けて、親しき人との死別を表現した。死者の目のグラフィックを光ファイバーで彩ったトップス(88万円)や、ポリエステルタフタにガラスの粒子を吹き付けて光沢を持たせたコート(8万5800円〜10万7800円)など、死後の世界や人間のオーラを実験的に表した。「ここ数年、(『タイガ タカハシ』の髙橋)大雅くんや自分の家族など、親しい人との別れが相次いだので気持ちを整理したかった。でも、着るのは今世に生きる人。湿っぽい洋服にはしたくなかった」と佐々木デザイナー。“DEPART(旅立ち)”の文字がおぼろげに浮かぶグラフィックのTシャツ(1万5400円)やフーディー(3万3000円)は、死や記憶に着想した作品を多く残したアーティスト、クリスチャン・ボルタンスキー(Christian Boltanski)へのオマージュ。ギンガムチェックのシャツはブランドのアイコンとして継続した。

デビューシーズンは、展示会の設営から関係者への連絡までを佐々木デザイナー自身が行い、プレローンチの意味合いが強かった。24年春夏シーズンからPRスタッフを採用し、ブランドとして本格始動する。取扱も計5店舗まで増える。「洋服は楽しんでこそ。もっと自由に楽しんでいい。いろんな問題や悩みを持ちながらも、前を向く力を与えるようなブランドにしたい」。

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