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フレグランスのトレンド“紅茶の香り”が人気になるまで【香水ジャーナリスト連載 Vol.2】

 ここ数年、紅茶の香りのフレグランスが注目を集めている。日本では長年、シトラス(柑橘類)とムスク(石けんによく使われる香料)が強く支持されてきた。海外から「日本は香水があまり売れない」とレッテルを貼られてしまったのは、香水の売上高が低いだけでなく、日本人の好む香りが海外ではバス&トイレタリー製品の香りを彷彿させるのも理由の1つと言える。センシュアルで濃厚な香りや、厳かな樹脂系、強さのあるウッディー系の香りは日本では成功しないと考えられてきた。

 そんな中、進化しながら支持を広げているのが、緑茶や紅茶の香りを用いたティーフレグランスだ。古くは、ジャン=クロード・エレナ(Jean-Claud Ellena)が調香を手掛け1992年に発売した「ブルガリ(BVLGARI)」の”オ・パフメ オーテヴェール オーデコロン スプレー”、フランシス・クルジャン(Francis Kurkdjian)が弱冠30歳で調香を手掛け99年に発売した「エリザベス アーデン (ELIZABETH ARDEN)」の “グリーン ティー”など、緑茶をイメージした香りが日本で人気を集めた。現在と比べて日本では当時、爽やかな香りが支持される傾向が強く、清潔感や好感度を大切にする日本ならではの指向と緑茶がマッチしたと推察される。

 その後、2000年代に入り「ラルチザン パフューム(L’ARTISAN PARFUMEUR)」の“ティー フォー ツー”、「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)」の“アールグレー & キューカンバー”や限定発売された“レア ティー コレクション”、「ミラーハリス(MILLER HARRIS)」の“ティー トニック”など、メゾン&ニッチフレグランスブランドから緑茶や紅茶の香りが数々登場し、ティーフレグランスの幅は広がり続ける。最近では、コスメブランド「ジルスチュアート(JILLSTUART)」や「シロ(SHIRO)」からも紅茶の香りが登場し、人気が一般化してトレンドになっている。今回は、人々を引き付けてやまないティーフレグランスの中から、メゾンニッチフレグランス6ブランドの紅茶の香りを紹介する。

「ラルチザン パフューム(L’ARTISAN PARFUMEUR)」

 2000年発表のオードトワレで、香調はスパイシーグルマン。松の葉の煙で燻したスモーキーで少し癖のあるラプサンスーチョンティーが、ジンジャーやシナモンなどのスパイスやタバコの香りと重なりモダンな趣きを感じさせる。ラストノートのハチミツやバニラの甘い余韻は、ウッディーノートへと落ち着く。調香師、オリヴィア・ジャコベッティ(Olivia Giacobetti)の名作の1つと言える、大人のためのグルマン系フレグランスの代表格。

「ル ラボ(LE LABO)」

 気品高きブラックティーリーフの葉と、それにまつわるクラフトへの叙情詩をテーマにした、奥行きのあるオードパルファム。ベルガモットやフィグ、ベイリーフといったすっきりとしたアロマティックな香りと、シダーウッド、ベチバー、ブラックティーの葉がドライで個性的なハーモニーを生む。干し草やタバコを想起させる、クールでノスタルジックなニュアンスが魅力。

「エディット(EDIT(H))」

 東京のストリートカルチャーへのオマージュをテーマに創作された”アールグレイ オードパルファム”は、アールグレイの茶筒を開けたときの吸い込みたくなるようなフレッシュな茶葉がそのままフレグランスになったかのような香り。メインノートのアッサムティーにベルガモットやオレンジの柑橘がアールグレイを感じさせ、オークモスやセダーのベースノートへ。”アールグレイ オードパルファン”をフランス人調香師がリミックスしたユニークな“ス―チョンジャーニー オードパルファン”は、中国茶葉から西欧へ広がったとされる紅茶文化の旅がテーマ。アッサムティーアコードに、ブラックペッパーやフランキンセンス、スモーキーセダーなどが加わり薫香を感じさせる。

「アール フレグランス(R FRAGRANCE)」

 明治時代の日本、文明開化の流れを受けて西洋の影響が感じられた頃の、人々の社交場で嗜まれたとされる紅茶文化をテーマに創られたオードパルファン。優雅な空間に並ぶきらびやかな菓子と紅茶が織りなす魅惑的なアフタヌーンティーをイメージした。アールグレイやダージリンティーといった紅茶の香りにローズとシュガーを加え、ゆったりとしたティータイムの時間を感じさせる。

「ミラー ハリス(MILLER HARRIS)」

 ブランドを代表する香りの1つである”ティートニック”は、イタリアンベルガモットとスモーキーなバーチタール(白樺の樹皮に含まれる物質)を用い、イギリスの田舎町の家庭やロンドンのカフェで飲まれている紅茶のようなフレッシュでエネルギッシュな香り。ミドルノートのスモーキー ティーとベースノートのマテ アブソリュート(マテ茶の香料)のタッグが、お茶の香りの幅を広げていてユニーク。

「ノー ブレイナー(NO BRAINER)」

 “NO BRAINER=考えるまでもない”という意味を持つ、ジャパンメードのブランド。自然由来の香料のみで調香した ”ドーン ティル ダスク”は、夜明けから夜更けまでカジュアルにまとうことができるシトラスティーとウッディーのオードトワレ。ベルガモットとスパイスがフレッシュに香るトップノートから、ブラックティーとベチバーのスモーキーなミドルノートへ。ラストはトンカビーンズやガイアックウッドが甘くウッディーに広がる。高クオリティーでありながら低価格を実現しており、今後の展開にも注目だ。


YUKIRIN
美容・香水ジャーナリスト
香水・香り関連商品と、ナチュラル&オーガニック美容分野に特化した記事を執筆。女性誌などのメディアで発信する。化粧品や香り製品のコンサルティングやイベントプロデュースなど幅広く活躍。「日本フレグランス大賞」エキスパート審査員、「イセタン フレグランス アワード2019」審査員などを務める

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