ファッション

ポリウレタンとポリエステルの複合素材がリサイクル可能に 開発者に聞く

 中国発のスタートアップ、チンタオ・アミノ・マテリアルズ・テクノロジー(Qingdao Amino Materials Technology)は、ポリウレタンとポリエステルの複合繊維をリサイクルする技術を開発した。この技術で2022年のH&M創業者によるイノベーションアワード、グローバル・チェンジ・アワードを受賞した。従来の繊維リサイクルは単一素材が一般的で、複合繊維の場合、どちらか一方の繊維のみがリサイクル可能であることが多い。しかしこの技術では、ポリウレタンとポリエステル、2つの繊維のリサイクルが可能になるという。開発したデビン・マオ(Debin Mao)最高経営責任者に話を聞く。

デビン・マオ/チンタオ・アミノ・マテリアルズ・テクノロジー最高経営責任者:2009年からベルギーのVITOに勤務し、研究開発、ビジネス、マネジメントの各職務に従事。クリーンテクノロジー、環境リサイクル、新エネルギー、新素材などの分野で、VITOと数十件の中国機関との協働や、科学技術面の変革プロジェクトを主導。技術研究開発、企業管理、科学研究成果の価値化、産業化などの分野で豊富な経験を積む

WWD:なぜポリウレタンとポリエステルの複合繊維に注目したのか?

デビン・マオ=チンタオ・アミノ・マテリアルズ・テクノロジー最高経営責任者(以下、マオCEO):理由は2つある。とてもよく使われる素材であること、そして、ポリウレタンがとても高価だから。昨年は最も高いときに1トン約1万ユーロ(約141万円)、直近は約6000~7000ユーロ(84万6000円~98万7000円)だった。

WWD:どのようなチームで、いつ頃から開発を始めたのか?

マオCEO:私たちは5人のチームで立ち上げた小さなスタートアップで、化学工学のバックグラウンドを持ちポリマーを研究している科学者もいれば、私は過去10年間ビジネス開発を行ってきた。何人かは本業があるのでフルタイムで働いていないが、アイデアのブレストを重ね、実行に移したのが約2年半前の2019年だった。

WWD:具体的にどのように分離して再生するのか。

マオCEO:日本や韓国でもリサイクル技術やリサイクルポリエステルの活用なども進んでいるが、今あるリサイクル技術では一方の素材を損ねてしまう。私たちの技術は、特別な酵素触媒を用いることで、2つの異なる繊維を区別する。そしてポリエステルだけを選定して解重合(ポリマーをモノマーまたはモノマーの混合物に変換するプロセス)を行うことができるため、ポリウレタンやコットンなど、もう片方の繊維がそのまま残り、異なる素材がリサイクル可能にできる。

WWD:ポリウレタンはどう再生するのか?

マオCEO:ポリウレタンはそのまま糸状で残る。回収されたポリウレタンを検査した結果、全ての繊維が良い状態を保っていた。ポリウレタンは有機溶媒で溶解し再び新しい繊維に再生できる。プロセスの詳細について開示できるのは、ここまでだ。

WWD:化学処理では水を使用しないとのことだが、エネルギーや化学薬品などはどの程度使用するのか?

マオCEO:私たちはプロセス全体を循環させたいと考えた。つまり、ポリウレタンとポリエステルを再利用するだけでなく、プロセス内の化学物質もすべて回収して再利用することに挑戦している。まだ研究段階にあり、完全なテック・エコノミック・アセスメント(Tech-economic assessment:正確なエネルギー消費量やリサイクル率などが含まれる有益な指標)を実施していないため、正確な数字を伝えられないが、現在準備中のパイロット規模の生産を開始する際に評価を実施予定だ。しかし、私たちの再生繊維の経済性を、非常に前向きに見ている。既存の技術と比較すると、私たちのプロセスは非常に温和な条件下で行われるため、消費するエネルギーは少なく済む。また、私たちの技術は高価なエラスタン繊維を再生し、再利用することができる。

WWD:量産化への計画は?

マオCEO:これから1年で取扱量を1トンに引き上げ、最適化を重ねて全てがうまくいけば、2年目には100トンまで引き上げたい。ここまでいけば、その後は特定のステークホルダーと戦略的なコラボレーションにつなげることができるのではと考えている。

WWD:このリサイクルは既存の機械で行うことができるのか?あるいは新たに特別な機械を作る必要があるのか?

マオCEO:すでにあるものを市場から購入する。機械が特別なのではなく、プロセス自体が特別だ。

WWD:工場は中国に?

マオCEO:少なくとも100トン規模までは中国を拠点に行う。まだ先のことはわからないが、100トン規模で成功できれば、ナイキ(NIKE)など世界規模の企業が興味を持ってくれるのではと思っている。資本提携やジョイントベンチャーなど、さまざまな形態が考えられるので、形態によってどのように展開するかを考えていく。中国以外にも工場を設けるかもしれないし、それはコラボレーションによって変わってくると思う。

WWD:並行してパートナーを模索していく?

マオCEO:ええ。私たちはスタートアップなので、H&Mファンデーションからの助成金もとてもありがたいし、評価としても私たちを後押ししてくれると思っているが、1トン規模までは助成金などを活用することで可能だが、100トン規模では資金が必要になる。他のスタートアップ同様、資金調達は第1ラウンド、第2ラウンドと必要になる。タイミングを見極めて素早く行動に移さなければいけない。

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

読者人気ナンバーワンに輝いたのは? 「2022-23年秋冬リアルトレンド総選挙」結果発表!

「WWDJAPAN」6月27日号の特集は、「2022-23年秋冬リアルトレンド総選挙」。編集部員が展示会を回って撮影・セレクトした、ファッションビルやSC、百貨店、セレクトショップなどを販路とする総勢32ブランドの新作ルックをウェブで公開し、ユーザーからの投票を募りました。

詳細/購入はこちら