座右の銘は「泣かぬなら 笑わせてみせよう ホトトギス」。ZOZOTOWN立ち上げメンバーで、「ファッションチアリーダー」に就任した武藤貴宣氏が、ファッションへの愛と明るい未来について、ゆるく語ります。
(前回から続く)
ZOZOTOWNは拡大していくうちに、ストリートブランドと大手セレクトショップのモールというイメージが強くなってしまい、デザイナーズブランドに敬遠されるようになっていました。デザイナーズブランドはこだわりが強い分、自分たちのブランディングを守るために並びや見え方により気を使いますよね。
そこで、2010年1月にZOZOTOWNからちょっと離れたリゾートの島というコンセプトで「ゾゾヴィラ」を立ち上げました。ZOZOTOWNと同じIDは使えるけれど、別の世界観で、商品を検索しても「ゾゾヴィラ」の商品しか出てこないページです。
海外ブランドも導入したかったので、伊勢丹出身の小濱勇人さんとコンサル契約をして、一緒にパリに行き、コレットのサラや「ラブ」編集長のケイティ・グランドなど、そうそうたる人たちに紹介してもらいました。
その延長線上で「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」のショーも見せてもらったんです。パリの最前線で日本人がサムライのように戦ってる印象でした。父が「ギャルソン」好きでよく着ていましたし、僕もずっと好きなブランドです。ずっと扱いたいとは思っていましたが、恐れ多くて、アプローチできずにいました。でも小濱さんは、結構「ギャルソン」と仲良かったんですよね。それで初めて川久保(玲)さんに会わせてもらいました。当然、川久保さんを口説くのが一番なのですが、さすがにその前にワンクッション置かないと駄目なので、営業部長の方に何回か話をさせていただいて、理解していただいて上で、小濱さんに川久保さんのアポを取ってもらったと記憶しています。
オフィスに伺ったのですが、「ついに来た」という感じでしたね。衝撃的な何かがあったわけじゃないんですけれど、すごく神々しく思いましたね。「コム デ ギャルソン」って“少年のように”という意味ですが、本当に少年のような女性がそこにいました。
小濱さんも川久保さんにそんなに近い距離感ではないので、「ちょっといいですか、川久保さん」という感じで、足を止めてもらって。展示会中だったのですが、川久保さんが誰と話してるかというのは、周りの全員が気にしているなと感じました。
川久保さんははきはき大きい声で慌ただしく「何、何、何?」みたいな感じで。立ち止まって資料を見てくれました。ネット通販にはネガティブなのだろうと思いましたが、川久保さんに「ネットでこういうことをやっています」を説明したところ、ある程度、理解してくれて。
印象深かったのは、「自分たちが作った洋服はリアルでのあの空間が一番、映えるんです」という言葉でした。「それをどうやってネットで表現できるんですか」と言われた気がしました。つまり「私たちの洋服はあの空間でしか売れないんですよ。大丈夫ですか?ネットで」と僕は解釈して、そこは「確かに」と思いました。けれど、「大丈夫です」と言い切りました。
多分、小濱さんも川久保さんにいろいろと情報を伝えてくれていたんだと思います。「じゃあ、パリに来て」と言われて、パリで2回目のプレゼンをして、その後、メールで直接何回かやりとりさせてもらいました。レスは早かったです、短いんですけど。
最終的には、夫でビジネスパートナーのエイドリアン(・ジョフィCEO)さんに引き継がれ、「ゾゾヴィラ」でのドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)のオリジナルライン「DSM」と「ガンリュウ」の取り扱いが決まりました。ギャルソン社としては国内初のEC展開でした。
ユナイテッドアローズの重松(理・名誉会長)さんも、NIGO®さんも、川久保さんもやっぱり“人”の部分をすごく見ているなと思いました。「自分たちの洋服をどういう人間が扱うんだろう」という視点です。ファッションが好きで、一生懸命やっているーー僕らのそういうところを見てくれてたんだと思います。(次号に続く)
武藤貴宣(むとう・たかのぶ)/ZOZOファッションチアリーダー:1978年2月6日生まれ、岐阜県出身。東京情報大学卒業後、東光オーエーシステムを経て、2002年にスタートトゥデイ(現ZOZO)に入社。04年、ZOZOTOWN立ち上げに携わる。19年5月から執行役員(EC事業本部管掌)。22年2月から現職。610(=むとう)は昔からのニックネームで、社内でも浸透している。趣味はジャケ買い、お墓参り