ファッション

所属する村瀬心椛選手が銅メダル獲得 ムラサキスポーツに聞くスノーボード市場の変化

 北京冬季五輪も後半戦。スノーボード競技ではハーフパイプで平野歩夢選手が金メダル、冨田せな選手が銅メダル、ビッグエアで17歳の村瀬心椛選手が銅メダルと日本勢のメダルラッシュに沸いている。メダリストの村瀬選手が所属するのが、スノーボードやサーフィン、スケートボードの専門店であるムラサキスポーツ。東京五輪でも、同社所属の堀米雄斗選手、西矢椛選手がスケートボードで金メダルを獲得し、大きな注目を集めた。野球やサッカーに比べるとまだまだマイナーなスノーボードやスケートボードだが、大きな大会で選手が活躍するとどんな変化があるのか。ムラサキスポーツ新宿店の倉持正臣さんに、スノーボード市場の概況と共に聞いた。

WWD:まず初めに、ムラサキスポーツに所属する村瀬選手をはじめ、日本人選手の北京冬季五輪での活躍は店頭にどんな変化をもたらしているか。

倉持正臣(以下、倉持):日本人選手が活躍すると、スノーボードを始めてみようというお客さまが増えて、業界全体に還元がある。例年、スノーボードの売り上げのピークは12〜1月だが、今年は五輪効果なのか2月の3連休(11〜13日)時点でも各店で集客が落ちなかった。東京五輪のスケートボードで堀米選手や西矢選手、中山楓奈選手(銅メダル獲得)が活躍した際も、彼らが当社の所属と知った方からの問い合わせが増え、初めてスケボーに挑戦するという10代のお客さまがかなり増えた。スケボーは“3密”を避けられる遊びとして、20年3月以降売り上げを伸ばしていた。その反動で21年はやや前年比で伸び悩んでいたが、東京五輪後の8〜9月は大幅に伸長し、店によっては売り上げが例年の2〜3倍になるというケースもあった。

WWD:五輪の効果でここからさらに伸びる可能性はあるが、2021-22年シーズンのスノーボード市場の現時点までの概況を教えてほしい。

倉持:当社のスノーボードカテゴリーは、1月までの時点で前年同期比20%増にやや届かずという着地。雪不足だった前々年との比較では、20%増以上の伸びだ。昨年はコロナ禍でお客さまは商品を買おうにも買えず、さらに今年はベトナムや中国でロックダウンや電力不足に伴う生産遅延が発生した。「今年こそ買うぞ」と思っていたお客さまのマインドを、納期遅れがさらに刺激した面はある。コロナ禍前は、ムラサキスポーツとして各地のゲレンデで毎月のようにボードの試乗会やイベントを行い、広告も出稿して売り上げにつなげていた。今シーズンは広告出稿を大幅に減らしているにも関わらず、売り上げが回復している。

WWD:新宿店はコロナ禍前は海外観光客からの支持も厚かった。

倉持:コロナ禍前は新宿店は売り上げの15〜20%を中国や韓国のお客さまが占めていた。海外観光客はかなり減ったが、昨年12月ごろから徐々に戻りが見られる。特に中国は自国での五輪開催もあって、スノーボード市場が今まさに大きく拡大しているところだ。「バートン(BURTON)」など有力ブランドの中国では売っていない品番のボードや、10万円超の「オガサカ(OGASAKA)」「ヨネックス(YONEX)」などの日本製ボードを求める声は強い。また、“プレミア感”を重視して、国際大会で有力選手が使用したボードを指名買いするケースも中国のお客さまでは五輪前からよく見られる。

スノボウエアも韓国ファッションが席巻

WWD:コロナ禍前と比べて売れるアイテムに変化はあるか。

倉持:マスク代わりのバラクラバやフェイスマスクは非常によく売れている。感染を避けるためにゴーグルやグローブをレンタルすることは避けて、初心者でも自分のものを買うという傾向も広がっている。

WWD:ウエアはどんなデザインが売れているか。

倉持:「ゴアテックス(GORE-TEX)」など機能素材を使用したギア系と、街着のトレンドを取り入れたストリートミックス系とにニーズが二分している。ギア系は「バートン」の上級ラインである“akコレクション”や、今回の五輪で米国スノーボードチームのウエアのサプライヤーにもなっている「ボルコム(VOLCOM)」の商品などが支持されている。“akコレクション”には藤原ヒロシさんとの協業商品もあり、それには中国や韓国のお客さまからの問い合わせも毎シーズン多い。一方、ストリートミックス系ではK-POPファッションの波がスノーボードウエアの世界も席巻している。新宿店では、淡い色使いなどが特徴の韓国発のウエア「ディミト(DIMITO)」が人気だ。

WWD:スノーボードが日本に入ってきて約40年。スノーボード人口は減少し続けていると言われるが、そうした市場の変化をどう見ているか。

倉持:業界内でよく言われることだが、今40代である僕たちが若かったころは、スノーボードがファッションや音楽などと共にカルチャーの一つとして受け止められていた。今の若い世代は(うまい人であればあるほど)カルチャーというよりも競技志向が強く、(カルチャーに紐づいたマイナースポーツという領域から)より一般的なスポーツになりつつあると言えるのかもしれない。東京五輪でスケボーが注目を集めた際もそうだったが、大きな大会で選手が活躍すると、10代などの若い世代がそのスポーツに挑戦することが増える。同時に、かつてそのスポーツに親しんでいた世代が刺激を受けて再開するケースもある。今回の五輪でも、「スノーボードってかっこいい」と若い世代に知ってもらいたいし、かつてスノーボードにハマっていた40〜50代が、再開するきっかけの一つになればと思っている。

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