長澤章生(左)と森山大道 Photo by SKINNY
大阪・本町のコンセプトホテル「ロックスターホテル」が12月24日にリニューアルした。これまで色濃く打ち出していたロックのコンセプトを一新し、写真家の森山大道監修のもと、コンテンポラリーアートホテルに生まれ変わった。フロアごとにテーマを設け、森山の作品を各客室に飾っている。
客室は「パリ」をテーマにした3階(スタンダードルーム6部屋)、「ニューヨーク」をテーマにした4階(同6部屋)、「くちびる」をテーマにした5階(ジュニアスイート2部屋、スタンダードルーム2部屋)、パーティースペースとしても使用可の6階(スイートルーム1部屋)で構成。2階は、西麻布のレストラン「ハウス」や自由が丘の「トゥデイズ テーブル」を手掛けるシェフ・谷祐二がプロデュースしたレストラン「パントリー」、7階はバー、屋上はルーフトップテラスを設けた。プレス関係者にお披露目した22日のレセプションパーティーでは、森山(右)と「アキオ ナガサワ ギャラリー」などを主宰し今回の改装にも携わった長澤章生によるトークショーが6階スイートルームで催された。
「三沢の犬」が全面に使われている廊下(上)「パリ」がテーマのフロア(下) Photo by SKINNY
長澤章生(以下、長澤):2013年のオープンから2年が経ち、「ロックスターホテル」は今回全面改装にいたりました。全体テーマは“知性と官能”だそうですね。
森山大道(以下、森山):どちらかといえば“官能”寄り。今わたしたちがいるこの部屋は「タイツの部屋」と呼んでいて、1969年に「エロス」のテーマの中で撮影したもの。各部屋と廊下、そしてこんなスペシャルルームに自分の写真を貼ってもらえて、撮った人間にとってはこれほど嬉しいことはない。
長澤:3階の廊下は代表作品でもある「三沢の犬」が全面に使われています。これはご覧になっていかがでしたか?
森山:僕がどう思うかより、みんなはどう思うんだろう(笑)。大丈夫かな、犬が全面って……。これは戦後まだ米軍基地が日常のリアルだった頃の三沢(青森県)にたまたま行った時、フラっと目の前にいた野良犬だった。写真は出会いが決定的。常にカメラを持ってうろついて、出会いを求めている。しかし犬もよく僕と出会ったよね。結果としてこの犬(作品)は世界中に旅立っているんだから。
長澤:各部屋すべて違う個性を持っているのがいいですよね。
森山:このフロアのテーマは「パリ」。これはパリに部屋を借りて、東京と行ったり来たりしていた頃の作品が各部屋に飾られている。僕が当時着ていたコートの写真もあるね。写真とこのホテルのニュアンスがとても合っていて、気に入っている。
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6階のスイートルーム Photo by SKINNY
長澤:4階は、71年に滞在したニューヨーク時代の作品ですね。
森山:横尾忠則さんに誘われて行った時のものだね。路上でスナップした当時の作品が多くて懐かしいなあ。ハンディサイズでスナップしやすいカメラをいつも持ち歩いていた。コマごとにニュアンスが変わる面白さがある。
5階のジュニアスイートルーム Photo by SKINNY
長澤:5階にはジュニアスイートルームが2部屋あります。森山さんがよく撮られる“くちびる”のテーマですね。
森山:女性のくちびるが好きで、よく撮っちゃうんだよね。本当に僕はわかりやすい人間だね(笑)。「好きだ」と思うとすぐに欲望のままに撮っちゃう。写真に限らず、モノを作る人間は、過剰に欲望にかられるはず。僕の場合も、写真を撮る欲望は個人の欲望と一緒に常にある。でも、写真は人に見てもらわないと意味がない。見てもらうことによって初めて、写真というツールが巡回していく。撮った人の欲望や記憶だけでなく、見る人の記憶にも残らないとね。
長澤:森山さんはよく「欲望」という言葉を使われますよね。写真を撮るモチベーションになっている。森山さんにとっては、このホテルもそんな欲望の現れですか?
森山:かなりそうだね。美術館の中で静かに展示されることももちろんだけど、自分の作品がTシャツになったり、車のデザインに載ったり、時計になったりとさまざまなモノになることもとても嬉しい。アートは美術館だけにあるものではなくて、むしろ街中に無数に転がっているものだと思う。街を歩いている時、看板やポスターに心を動かされた経験があるはず。それは広告かもしれないけど、アートでもある。身近で体感することが大事。
長澤:そういった意味では、このホテルも森山さんのアートを身近に“体感”できる場です。あとはお客さんに喜んでもらえるかどうかですね。
森山:そうだね。あの犬も皆から愛されているから、きっと大丈夫でしょう!