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脱サラから香水ベンチャーを立ち上げ 映画とのペアリングなどユニークなアイデアを生み出す「セレス」

 香水の総合販売サイト「セレス(CELES)」は香水を「試す」「相談する」「買う」の3つがかなうさまざまなサービスを展開し、注目を集めている。500種類以上の香りの現品サイズはもちろん、気楽に試せるムエット(無料)や0.7mL(15プッシュ分)・2.5mL(50プッシュ分)・5mL(100プッシュ分)を販売するほか、日本フレグランス協会の資格を持ったスタイリストにイメージに合わせた香水を提案してもらえる「セレス セレクト」、ランダムに香水が届く「セレス ガチャ」などさまざまなサービスをそろえる。また10月には好きな映画を選び、その映画をイメージした香りを提案する「セレス シネマ」をスタートし、12月28日まで提供している。

 そんな「セレス」を手掛けるのは、大学院卒業後に大手電力会社を2年で退職し、香水業界のホワイトスペースを見つけ起業した代表のソールズベリー夏生。そもそも香水ビジネスの着想源になったのは、アメリカでも行われている高級腕時計のレンタルサービスだったという。「昔から香水はつけていたが、すごく興味や知識があったわけではないし、絶対に独立して起業したい!と思っていたわけでもない。ただ、腕時計のレンタルビジネスには注目していて、ぼんやりとビジネスチャンスがあるのでは、と思っていた。高価な腕時計は簡単に買えるわけではないし、お店で試着するのも敷居が高い。そんな腕時計を気楽に試せるビジネスは需要があると思った」と話す。

 結局腕時計ビジネスはコスト面など諸々を考慮して断念したが、当時香水をネットで販売していた知り合いがビジネスを続けられなかったときに、在庫を買い取ったことが「セレス」のはじまりになった。「買い取った香水を小さな瓶に詰め替え、手ごろな価格で香水を試せるようにした。最初は友人や知り合いが買ってくれていた。注文数が増えるにつれ、香水を低価格・少量で気楽に試せるサービスが日本にあまりはないことに気づいた」。腕時計同様にビジネスになると思ったソールズベリー代表は、副業でコツコツ続けていたウェブサイトを本格的にビジネスにすると決心し、2018年に27歳という若さで起業。「ちょうど電力会社の仕事でシンガポールへの転勤の話をされたタイミングだった。給料も待遇も上がる機会だったけれど、まだ若いときにいろいろチャレンジしたいという思いがあった。成功する確信や自信はなかったけれど、香水事業にかけることにした」と当時の心境を振り返る。

「香水をつけるハードルを下げたい」

 そこから始めた「セレス」は、ラテン語で「天国」を意味する“セレスト(Celeste)”から名前をつけた。古来エジプトでは香りは天国に捧げるものだったこと、さらにヘビーメタルバンド「セレスティア」のファンだったことから、「セレス」にしたという。最初は少ない人数で四苦八苦しながら始めたビジネスが、現在は香水の注文数がスタートから2万5000件を達成し、来月には3万件を超えると予測する。また、現状単独注文が取引の半数を占め、残りは「セレス セレクト」や「セレス ガチャ」など独自のサービスだという。「日本の香水市場はまだまだ小さい。同じアジアでも韓国の人口は日本の3分の1にもかかわらず、香水市場の規模は同等レベル。でも今は香水に対する意識も変わり、ファッション同様に自己表現として楽しむ手段になりつつある。ただ、まだどんな香水をつけたらいいのか分からないという人も多く、香水をつけるハードルを下げるためにも、気楽に試せるサービスをいろいろ考えている」と話す。

 デジタルで香りを売るのが難しいともされる中で、今までにない切り口で香りに触れられるサービスとして10月にスタートしたのが、映画とのペアリングだ。好きな映画を入力すると、映画と香水に詳しいスタイリストが香りを選び、それが送られてくる仕組みだ。一見映画と香水は遠い業界に感じるが、「映画ははっきりしたテーマやストーリーがあり、感じ方は人それぞれ。そこは香水と似ているものだと思った」と説明。「もちろん(香水を提案するのが)難しい映画もある。例えば『ホームアローン』。子どもが家に一人で残されていろいろなハプニングが起こるストーリーだが、実は子どもながら大人に憧れてシェービングクリームを塗っているシーンがあったり、泥棒を退治したり、親がいないときに“大人”になりきるシーンがたくさん出てくる。だからあえて幼い香りと言うより、少し背伸びするような、スモーキーで渋めな香りを提案してみたり。あとは、ホラー映画も香りと結びつけるのは難しかったりする(笑)」。

香りのプラットフォーム化を目指す

 ユニークなサービス以外に、同社の強みの一つとして挙げるのは、現在1万件を超える消費者のレビューだ。「香水は主観的なものでもあり、いろいろな人の正直なレビューが求められる。ブランド公式ECだといいレビューが目立つが、実はネガティブな意見こそ参考にされる。いずれは一般消費者のレビューに加え、スタイリストのプロのレビューも掲載し、香水の図鑑のような役割を果たせるようになりたい」。なお現在人気なのは、「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)」「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「イソップ(AESOP)」だという。

 これまで香水をより身近な存在にするためにさまざまなサービスを展開してきたが、今後も同じ目標の元、オンラインのチャットサービスの導入やリアル店舗の出店も視野に入れる。「消費者のレビューを見られるだけでなく、スタイリストとリアルタイムでコミュニケーションをとったり、さらに香水を買ったり、香りのプラットフォーム化を目指す。また、いずれはリアルな空間で香りを体験できる場も作りたい」。